捨てる覚悟と挑む姿勢を
スマートデバイスの登場などで消費者の生活様式や購買行動が多様化している中、小売業にも「古いものを捨てる覚悟」と「新しい市場を生み出す力」のバランス感覚が必要になってきている。この両面を持ち合せた通販企業のひとつが通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイだろう。
同社は衣料品のネット販売で存在感を発揮するが、元々は輸入CDとレコードのカタログ通販で事業をスタートし、紙媒体をオンライン化した2000年にカタログ販売をキッパリとやめている。同社は「捨て上手なだけ」(前澤友作社長)とするが、それも時代の流れや将来性を感じ取ってのことで、オンライン化によって生まれた利益で服の仕入れを開始し、いまの「ゾゾタウン」の礎とした。最近では、ネット販売実施企業にとって集客施策、リピート施策の常套手段でもあるリスティング広告やポイントキャンペーンをやめるなど、捨て上手、やめ上手な面は変わらない。
いま、そのスタートトゥデイがもっとも力を注ぐ事業のひとつが昨年10月にスタートしたスマホアプリの新サービス「ウェア」だ。同アプリは実店舗で服のバーコードを読み込んで通販サイトに誘導する機能を持つため、店頭の"ショールーミング化"を嫌うデベロッパーの反発を受けてスキャン機能が使える店舗はいまだに少ない。ただ、同社が考えるオムニチャネル戦略の本質は「リアル店舗と通販サイトが敵対するのではなく、互いの強みを生かして力を合わせ、ファッションやオシャレを楽しむ人をひとりでも増やし、ファッション業界全体のマーケット拡大を目指すこと」と前澤社長は言う。消費者からすれば、ショールーミングや(ネットから実店舗に送客する)"ウェブルーミング"といったキーワードは重要なことではないというわけだ。
実際、デベロッパーの意思とは反対に、「ウェア」アプリのダウンロード数は今年2月下旬に100万件に達した。一般の消費者はもちろん、アパレル店頭のスタッフもファッション商材の着こなし方を発信するツールとして活用しているし、服好きの消費者がコーディネートを軸に交流する姿が明らかになっており、1月の月間利用者は240万人、コーディネート投稿件数は25万件に拡大している。商品の情報に触れる機会が増えれば増えるほど消費者の購買意欲が喚起されるという好例でもあり、アプリを経由した「ゾゾタウン」の商品取扱高は月1億円を突破したという。
通販市場全体では、新規参入の手軽さやデバイスの多様化などから今後もネット販売の比重が一段と高まることが予想され、消費者に支持されない媒体、売り場はスタートトゥデイのようにキッパリとやめなければならない時期が来るかもしれない。また、通販会社自体が実店舗を構えたり、有店舗企業と組んでオムニチャネル戦略に乗り出すケースも増えるだろうが、そのときは単なる利便性の追求や消費者の奪い合いではなく、新しい市場を生み出すという気概や覚悟がなければ、消費者はついて来ないであろう。
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実際、デベロッパーの意思とは反対に、「ウェア」アプリのダウンロード数は今年2月下旬に100万件に達した。一般の消費者はもちろん、アパレル店頭のスタッフもファッション商材の着こなし方を発信するツールとして活用しているし、服好きの消費者がコーディネートを軸に交流する姿が明らかになっており、1月の月間利用者は240万人、コーディネート投稿件数は25万件に拡大している。商品の情報に触れる機会が増えれば増えるほど消費者の購買意欲が喚起されるという好例でもあり、アプリを経由した「ゾゾタウン」の商品取扱高は月1億円を突破したという。
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