健全成長視点で運賃を考えろ
2014年04月03日 14:31
2014年04月03日 14:31
ヤマト運輸が通販などの法人荷主に対し、「宅急便」契約運賃の見直しを要望している。これまで実質1個いくらの設定となっていた契約運賃を厳密に荷物のサイズ別に収受しようというもので、荷主側からすると運賃負担が増えることになる。宅配便大手では、日本郵便と佐川急便が法人荷主に対し、採算性の改善を理由に大規模な契約運賃の引き上げ交渉を行い、通販事業者の間でも宅配便事業者を乗り換える動きが見られた。さらに最大手のヤマト運輸が契約運賃体系の見直しに乗り出したことに対し、通販事業者側も困惑しているようだ。
宅配便事業者間の行き過ぎたシェア争いのツケが荷主に回される。昨今の大手宅配便事業者による運賃引き上げの動きをこう捉える通販事業者は少なくないだろう。確かに、これまでの大手宅配便事業者の動きをみると、安い運賃単価で通販の法人荷主を獲得しようとする傾向が顕著だった。通販事業者側からすれば、もともと無理のある契約運賃を設定し、利益が出ないから引き上げますと言われても困るというのが本音であり、混乱を招くような宅配便事業者の動きに対し厳しい見方もある。
だが、通販・ネット販売を中心に宅配便の取扱数量が増え続ける中、サービス品質を維持していくことを考えると、宅配便事業者側も体制の整備が必要で、運賃も含めた商品配送のあり方を再考しなければならない時期に差し掛かっているのも確かだ。ヤマト運輸のサイズ別契約運賃収受の要請を個社の採算改善のためと捉える向きもあるが、通販関連の荷物の増加に伴い深刻化するであろう課題への対処を念頭に置いていることも勘案せねばなるまい。
特に、宅配便も含めた輸送業界では、人員の確保が共通した課題となっており、車両はあっても動かす人員が手配できないという事態も起きている。これはすぐに解決できる問題ではなく、荷物の増加に対し限られたリソースの中で確実に作業をこなすためには、事前に荷主から出される荷物の情報を把握し、機器や人員を手配することが必要になる。その中で、今後、特に重要となるのがサイズの把握だ。例えば、同じ幹線輸送のトラックなど荷物のサイズによって積載できる荷物の数量は異なるため、サイズを把握できなければ実際の対応能力を見誤り、繁忙期の業務に混乱をきたす恐れもある。これは、通販事業者にとっても好ましい状況ではないだろう。
ヤマト運輸では、今回のサイズ別運賃収受打診を起点に、法人荷主にサイズ別契約運賃の見積を提示しながら、荷物の大きさに関係なく一律に最も小さいサイズの運賃を適用しているケースなどで荷物のサイズが把握できていない状況を解消し、さらにサイズに応じた本来の運賃収受をもとに荷物の増加に対応した投資を行うとする。通販事業者側からするとコストアップ要因となることは確かだが、通販を中心に荷物が増え続ける中、宅配便事業者側の負担だけで配送品質を維持するのにも限界がある。今後も通販市場の成長が見込まれるが、その健全性を保つという視点を持ちながら運賃負担のあり方を考える必要もあろう。