"課徴金"の導入は危険だ
2014年04月24日 14:50
2014年04月24日 14:50
消費者委員会の専門調査会で景品表示法が禁じる不当表示に課徴金制度を導入しようと議論が進んでいる。4月に入り、「不当表示の抑止を目的に課徴金の必要性が高い」とし、対象範囲を優良誤認と有利誤認とするなどとした中間整理を行い、4月22日開催の9回目の会合では不実証広告への課徴金適用時の方法論について話し合いが始まるなど、あたかも景表法への課徴金導入がすでに決定したかのような方向性で話は進んでいるようだ。しかし、やはり景表法への課徴金導入は極めて危険であり、改めて反対したい。悪質な事業者だけでなく、まっとうな小売り事業者にも甚大なダメージを与える可能性があるからだ。
これまで本紙で繰り返し述べてきたが、不当表示とされた過去の通販実施企業の景表法違反事例を見ていくと、通販事業者だけの責任とは必ずしも言えない"理不尽な処分"が散見される。こうした理不尽さを抱えたままで行政処分を受けた企業が課徴金まで徴収されるというのは納得がいかない。
例えば革製品の原産国の不当表示を巡って複数の通販企業に景表法違反とされた数年前の事例では、商品供給元が取引先の通販企業に対して、当該製品を製造しているとされる国内の工場を案内し、国産と信用させていたようだが、実際には海外で製造された輸入品であった。この際、虚偽の説明を行った商品供給元の説明を信じて当該商品を「日本製」と謳い、販売した通販企業などだけに排除命令が下された。
大手通販事業者の景表法違反事例ではメーカーに「塩ビ」を使用しない仕様発注を行い、財布などを製造していたが、実際には塩ビが使用されていることが判明した。初めは指示通りの素材で製造されていたが、のちに海外の製造者が勝手に使用する素材を変更したようだ。当該企業は自主的に返品や交換を行ったが、のちに景表法違反とされ、排除命令が下された。
これらの事例は通販企業だけに責任があるとは言えまい。前者のケースでは工場視察まで行なわせ、販社に国産と信じ込ませる偽装工作を行った商品供給元には何らお咎めはなく、鵜呑みにした販社の責任とされた。後者でも仕様を勝手に変更したのは製造元だ。一度、仕様通りに製造し、検査をクリアした商品に対して、何度も素材などのチェックは通常は行わない。それで管理体制が甘いと言われるともはや「小売り」は製造小売でなければ商売ができないということになってしまう。
こうした理不尽な景表法違反に伴う行政処分の事例はこれまで多々、散見されてきた。課徴金は専門調査会での議論の通り、悪質業者の確信犯的な不当表示の抑止に効果を発揮することになるだろうが、まっとうな通販企業にも理不尽な不当表示は起こり得ることも考慮すべきではないか。そうした場合、課徴金を課すのは重すぎる罰ではなかろうか。課徴金の適用を悪質なものに限定するなどの裁量も盛り込むようだが、"悪質さの定義"を決めるのもこれまで理不尽な処分を下してきた行政である。非常に危険な景表法への課徴金導入に改めて反対したい。