衣料品モールは独自性磨け

2014年05月22日 16:53

2014年05月22日 16:53

本紙は4月中旬に有力アパレル6社のネット販売担当者を招いて座談会を開催した。その中で、大手資本によるファッション通販モールの買収が相次いで以降の市場環境や、ファッション通販モールに期待することなどを聞いたところ、既存モールへの不満は予想以上に強く、「独自色を打ち出せないモールは存在意義がなくなる」との意見や、各モールのビジネスモデルが同じことを指摘した上で、「外資の買い取り型モールの参入に期待する」といった声までも聞こえており、モール運営者は危機感を持ってコンテンツやサービス面はもちろん、品ぞろえなどについてももっと独自色を打ち出していくべきだ。

 1~2年でアライアンスの効果を最大限に出すことは難しいかもしれないが、スタートトゥデイが運営する通販モール「ゾゾタウン」の商品取扱高が2014年3月期に1000億円の大台を突破したのに対し、大手資本のグループに入ったモール各社はその10分の1程度、もしくはそれ以下の規模にとどまっており、現時点でその差は縮まっていない。大手資本へのグループ入りが発表された当初は、積極的な広告展開によるモールの認知向上や、親会社が抱える顧客の流入などを期待したアパレル企業もあったが、「実際には期待外れだった」との声も聞かれた。

 これまで、アパレル各社はさまざまなファッション通販モールに積極的に出店することでネット販売比率を高めてきたが、いまは在庫分散化による売り逃しを避けようと、ネット販売用の在庫を自社の倉庫で一括管理し、データで引き当てる仕組みを構築してきている。つまり、商品が1点でも残っていればデータ連携するすべてのモールで販売が可能になり、売れ行きの悪いモールに在庫が貯まるというリスクが解消できるわけだ。モールの倉庫に商品を預けなくてよくなると、結果的にどこのモールも品ぞろえが似てくることになり、各モールの独自性はさらに出しづらくなる可能性もある。

 また、アパレル各社は実店舗という武器を活用し、オムニチャネル化戦略のもとで自社通販サイトの強化に本腰を入れており、試着したい消費者ニーズに応えるためにネット販売用の在庫を店頭へ供給するケースも増えてきそうだ。これまでアパレル各社は、ネット販売市場では先行するモールへの卸を中心に売り上げを作ってきたが、在庫一元化や店頭連動の取り組みなどで巻き返しを図ってくることは間違いない。

 もちろん、アパレル企業が運営する通販サイトは自社が手がけるブランドだけを扱う場合がほとんどのため、ウインドーショッピングのように数多くのブランドをチェックしたり、ブランドをまたいで買いたいユーザーにはモールの優位性が発揮できる。また、「ゾゾタウン」ではTポイントやヤフーポイントが、「スタイライフ」も楽天スーパーポイントが利用できるといった利便性もあるが、ブランド側から供給先として選ばれ続けるためには、特定ジャンルの品ぞろえ強化や買い取り販売への挑戦、各種データの提供など競合モールにはない特色を出すことも必要になろう。

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