通販企業はコスト認識改めよ

2014年07月24日 11:17

2014年07月24日 11:17

 通販市場の拡大に伴い、宅配便の取扱個数が増加を続けている。国土交通省がこのほどまとめた「平成25年度(2013年度)宅配便取扱実績」によると、同年度における宅配便の取扱個数は前年比3・1%増の36億3700万個となった。商品の配送を担う宅配便は、通販には欠かせない存在であり、これまで互いの市場を支え合いながら成長を続けてきた。国交省の調査もこれを改めて認識させるものと言え、今後も両者の関係性が継続されることが望まれる。だが、そのためには、通販事業者と宅配便事業者双方が顧客のニーズや状況の変化に対応した適切な配送サービスのあり方というものを考えていかなければなるまい。

 通販事業者と宅配便事業者の関係を考えた場合、避けて通れないのは、やはり契約運賃の問題だ。

 通販事業者にとって、宅配便の運賃は配送コストであり、安いことに越したことはない。一方の宅配便事業者にとっても増加を続ける通販関連の荷物は魅力的で、通販荷主を獲得するため、多少の無理をしても契約運賃の引き下げに応じてきた。同様の構図は他の業種・業態にも見られるものだが、どちらか一方に過度な負荷が掛かり続ければ、いずれ亀裂が生じる。昨今、相次いでいる宅配便事業者の法人顧客に対する契約運賃の引き上げ要請は、これに当てはまるものだろう。

 通販を中心とした荷主を獲得するため、一時、宅配便事業者の間で契約運賃設定の引き下げ競争の様相を呈したが、結局は採算性で行き詰まり、運賃の引き上げを要請せざるを得なくなったわけだ。通販事業者からすれば、宅配便事業者間の行き過ぎたシェア争いのツケを回されたと見る向きもあるだろうが、通販事業者側が仕掛けた"送料無料"や"当日配送"といった商品配送の急速なトレンドの変化と採算性の関係性なども考えねばなるまい。

 特に、"送料無料"の表示については、以前から宅配便事業者の間で「消費者に誤った認識を与える」という声が上がっていた。これには実際に発生しているコスト負担の問題があるが、宅配便事業者側がさらに懸念しているのは、"送料無料"という言葉が一人歩きをすることで消費者の間に送料はタダという認識が広がり、そのしわ寄せが及んでくることだ。

 6月に閣議決定した「総合物流大綱」で"送料無料"に関する内容が盛り込まれたのも、宅配便を含む物流業界側の危機感を反映したものと言える。適切な裏付けのもとに顧客の送料を負担する施策自体は、否定するものではないが、通販事業者側もコスト負担や表示のあり方などを再考する余地はあろう。

 通販商品の配送を取り巻く環境は変化しており、物流業界全体で深刻化している慢性的な人手不足の問題や宅配便事業者側の競争状況、多様化する顧客のニーズに対応するための投資の必要性などを勘案すると、契約運賃がダウントレンドに大きく振れるとは考えにくい。通販事業者はその前提で配送コストを捉え、宅配便事業者側と連携しながら物流業務の効率化や付加価値の高い配送サービスの提供を目指すべきだろう。

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