健食大手は後進に範を示せ

2014年09月11日 15:07

2014年09月11日 15:07

来春から健康食品を含む食品の新たな機能性表示制度が始まる。一定のハードルはあるものの、健食に新たなカテゴリが整備されたことは大きな前進だ。健食を扱う事業者は、新制度の下、健食を産業として確立していく意識を持たなければならない。業界をけん引する大手には、今以上にリーディングカンパニーとしての自覚が求められる。

 健食は、専業企業、食品や医薬品など本業を別に持つ大手からの参入企業、健食に商機を見出した新興企業の混在が際立つ業界だ。そうした背景からくるものか、中には、健食産業の発展に対する当事者意識の欠けた企業もいる。法令遵守に対する意識が低さや、社内体制の未整備からか、特に、新興企業による景品表示法や薬事法違反も後を絶たない。

 その一義的な責任は、処分や摘発を受けた企業にある。だが、これら企業が起こした事件を、その企業だけの問題と捉えるのは間違いだ。

 最近では、プロポリスを販売していたシャブロンや、機能水を販売していたエーイーエムが薬事法違反で摘発を受けた。いずれも「ガン」など重い疾病への効果をうたったことに加え、その広告手法が問題視された。「商品」とセットで効果をうたうと薬事法違反になるため、シャブロンでは健康情報誌の「広告ページ」では法令を遵守し、数枚隔てた「健康情報ページ」で効果をうたった。エーイーエムも「販売サイト」では法令を守り、検索誘導した「体験談サイト」で効果に言及した。ただ、似たような手法で「商品」と「健康情報」をリンクし、消費者にリーチする手法は、大手にもみられる。

 リンクする以外にも「※(注釈)」を使った広告手法は一般化している。例えば、関節に訴求するある広告では「軟骨成分」というコピーと共に、「※サメ軟骨から抽出した成分」といった注釈が小さく書かれている。機能ではなく、成分の説明で逃げているおり、法律上の判断も微妙だ。

 今回、新制度で業界は身体の部位の表示を行う権利を得た。だが、こうした広告を見ていると、何のために部位表示を勝ち取ったのかと思う。遠回しな表現ながら、すでに部位表示は行われているのだ。

 健食の位置づけが明確でない中でいかに表現するか、イメージをかきたてる表現の豊かさには磨かれたマーケティング力の素晴らしさもある。表示制度の不備が遅れていたことも背景にある。だが一方で、こうした表現が暗黙のルールを作り、後に続く中小や新興企業の判断基準となってきた側面がないとはいえない。景表法や薬事法の表示規制において、行政がきちんとした研究開発や法務部署を持ち、対応力をある大手に迫るのは難しい。割を食うのは体制が不十分な中小や新興企業だ。

 新制度では、機能性の科学的根拠や、これに付随する表示を巡り、運用面でさまざまな問題が起きるだろう。健食大手は中小や新興企業に範を示し、生じた問題が一部のアウトサイダーによるものと断言できるよう業界をけん引しなければならない。でなければ新制度の下でも、これを悪用する事業者に引きずられ、健食産業の確立が遅れることになる。

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