ネット政策は啓蒙視点が重要だ

2009年08月21日 00:03

2009年08月21日 00:03

 自由民主党および民主党が両党に対し、楽天などネット販売事業者60社が8月10日に提出したネットビジネスの振興策に関する質問状の回答が各政党から出された。質問状では、内需拡大や中小企業活性化策等としてのネットの位置付けや振興策、規制等をゼロベースで見直すことに対する考え方など6項目に関して質問したものだが、実態を踏まえた施策という点で見ると、民主党の回答がより踏み込んだ考えを示している。

 少子高齢化の進展で国内マーケットが縮小していくことを考えた場合、国内産業は経営の効率化と新たな市場の開拓が必要になる。そのための有力なツールがネットであることは明らかだ。小売業に関して言えば、小さな投資負担で時間や地理的な制約をクリアできネット販売は中小小売業に有効な活性化策であり、生産性の向上にもつながる。既に、有力総合通販企業がカタログからネットへのシフトに取り組んでいるが、根本的な狙いは経営の効率化だ。

 こうした点を考えれば、物販を中心としたネットビジネスの振興は政策上の重要テーマで、本来であれば自民・民主両党のマニフェストにも盛り込まれているべき事項だが、明確に触れられていない。その意味で楽天等が提出した質問状は、ネットに対する両党の基本的なスタンスを引き出した点で意味があろう。

質問状への回答では、自民・民主とも、ネット販売をはじめとするeビジネスが成長政策上重要と位置付け振興策を講じる考えを示しているが、自民党が既存の計画や枠組みをベースに政策や制度設計の考え方を示しているのに対し、民主党では、ネットの特性や実態、規制による弊害も勘案した考えを示すなど、政策の進め方で違いが見られる。

これは、政権を担ってきた与党と政権奪取を狙う野党の立場の違いを反映したものとも言えるが、その中で目を引くのは、民主党がネットに関連した制度設計に関して、過度な規制に依存するのではなく、ネットユーザーのモラル啓発やリテラシー向上をベースにする方向性を打ち出していることだ。

昨今、消費者保護を名目に行政が様々な形で産業に介入しようとする動きが目立つが、規制一本槍の施策は事業者を萎縮させ、産業の発展の足枷になる。その意味では、消費者への啓蒙を図り、自ら身を守る術を身につけさせることも重要だ。ネットを成長政策上の重要な要素として振興を図る以上、消費者のリテラシーを高めるという視点は欠かせないものだろう。

医薬品のネット販売では、安全性確保策等を十分に検討しないまま、"ネットは危険"という漠然としたイメージ先行で規制が強化され、消費者や医薬品ネット販売事業者がいわれのない不利益を被る結果を生んでいる。これはネットの実情から目を背けたものであり、他のネット販売分野でも同様のことが起きれば、ネットを軸にした成長政策など望めるはずもない。

政権政党は8月末の衆院選で決まるが、今回質問状に回答した自民・民主各党がネットの実のあるネット振興策を実行できるか、ネット販売事業者は注視する必要がある。

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