企業コンセプトを再認識せよ
2014年11月13日 17:38
2014年11月13日 17:38
1955年11月に設立した千趣会が来年に創設60周年を迎える。企業が長く存続するための要因としては技術や組織、企業風土など幾つか考えられるが、同社の場合、その原動力となっているのは、"女性を笑顔にする"という創業当時からの思想に基づき、愚直に女性を笑顔にするための商品・サービスを提供し続けてきたことだろう。
千趣会のルーツは、創作こけしにしおりを添えて販売する職域の頒布会になる。当時は、終戦から10年が経過した時期だが、まだ、生活の潤いが乏しい時代だった。その中で、女性の気持ちを和ませる創作こけしは支持を集め、生産が追い付かないほど爆発的に売れたという。この創作こけしのヒットが後に続く事業の礎となり、同時に商品・サービスの提供を通じ女性を笑顔にするという自らの存在意義を決定づけたわけだ。1976年に開始したカタログ通販も、女性に流行の先端をいくファッションの提案することを狙ったもので、現在の千趣会を支える基盤となっている。
時代の流れとともに、経営環境は変化する。千趣会においても、雇用形態の多様化に伴う職域頒布会の縮小、次いで基幹事業となったカタログ通販がネット販売へのシフトが進むなど、主役となる事業は移り変わっている。その中にあっても、同社は常に"女性を笑顔にする"という視点で商品・サービスを提供し続けてきた。軸足がぶれることなく、絶えず女性の生活シーンを見続けてきたことが女性の繊細なニーズを読み取る力、さらにニーズに応えるための商品・サービスの開発力を高め、それが女性顧客の支持を集める源泉となってきたわけだ。累計1500万人に達する顧客データベースのほとんどを女性が占め、昨年の年間購入者数404万人のうち95%が女性だったということもその表れと言えるだろう。
また、千趣会は今期に入り保育園運営事業と飲食店事業に参入している。一見、主力の通販事業からは遠い事業のようにも思えるが、前者は小さな子供を持ち働くことが難しい女性の支援、後者は働く女性が1人で食事をできる場が少ないことに配慮した支援策として乗り出したもので、働く女性の悩みを解消し笑顔にするという企業コンセプトに基づくものだ。
市場が成熟し生活環境の変化が進む中、女性のニーズはモノだけではなくコトにも及ぶ。「ウーマン・スマイル・カンパニー」の企業ビジョンを掲げる同社としても、多様化する女性のニーズに対応することは不可欠になる。11月5日、都内で開催されたプレス向けのPRイベントで田邉社長は、「当社を通販事業者、あるいはEC事業者と思われているかも知れないが、(女性を支援し笑顔にする)世の中で唯一無二の企業だと思っている」と語ったが、これも物販だけにとどまらず、女性を笑顔にしていくという考え方を表したものだろう。
企業コンセプトをしっかりと認識し、それに基づいた施策を実践する。これは、新興、老舗の別に限らず通販・ネット販売事業者に共通した重要なテーマのはずだ。