通販各社は景表法と向き合え

2014年11月27日 17:02

2014年11月27日 17:02

 衆院解散に伴う参院の閉会で「すわ廃案か」という通販事業者からの"淡い期待"もむなしく改正景品表示法が11月19日、参議院本会議で可決・成立した。再来年の春にも施行される見通しだ。施行後は不当表示で措置命令を受けた事業者には課徴金が科されることになる。通販事業者はこれまで以上に、広告表現には慎重を期す必要があろう。なぜなら、課徴金として支払う額は不当表示とされた広告で過去3年分の売り上げに3%を掛けて算出されるため、例えば1商品の売上額が大きい単品通販会社などで仮に主力商品の広告表現が「不当表示」と断じられた場合、莫大な課徴金額となる可能性もあり、下手をすれば一度の"表現ミス"で企業の存続が危うくなるケースも出てくるためだ。

 無論、メーカーやベンダーに騙される形で不当な広告表示をしてしまい、結果的に不当表示とされ、措置命令を受けたような場合や販売業者が顧客に自主的に返金した場合は課徴金は免れたり減額されることになる。だが、そのためには事業者が景表法を順守するための管理体制の整備や必要な措置を講じておく必要があるわけで、しかも、そうした体制作りを消費者庁側が認めなければ、結局は課徴金を科されることになる。その体制作りも小規模事業者にとってはそう簡単なものではなさそうで、いずれにせよ軽くはない"負担"がのしかかってくることに変わりはなくやっかいである。

 この課徴金制度を盛り込んだ今回の改正法は外食業界による一連の食品メニューの不当表示の問題から端を発して改正向けて議論が始まったものだが、当初から通販業界を含む小売業界の企業や団体からは「確認犯的に誇大広告を繰り返す悪徳業者への抑止力という意味では確かに一定の効果を発揮することになるかもしれないが、それ以上に通販企業を含む一般のまっとうな事業者の広告宣伝活動を委縮させるだけであり、むしろデメリットの方が大きい」と反対する意見が少なくなかった。課徴金など科されなくとも社名公表を伴う措置命令はまっとうな通販企業にとっては顧客からの信用を失いかねない強烈なダメージをもたらすわけで、それだけで事足りるはずであろう。反対の声が多いにも関わらず、"消費者の保護"という美名のもとに一部の意見が力を持ち、この無用で無駄な規制を盛り込んだ法案が成立してしまったことは非常に遺憾だ。一部の悪質業者の規制のために、全体に網をかける役所然としたやり方には怒りすら覚える。

 しかしながら、すでに決まってしまい、施行される以上は受ける悪影響を最小限で食い止める努力が必要となろう。これを機に景表法について改めて学び、見つめ直すためのよい機会とすべきではないか。課徴金導入に先立って今年12月にはより行政の監視指導体制を強化すべく、都道府県知事に対して景品表示法に基づく措置命令権限が付与されるなどの改正法が施行され、通販事業者にとって景表法はすでにこれまで以上に存在感のある法律になっており、景表法との向き合い方を考える必要があろう。通販各社には腹を括った対応と姿勢が求められそうだ。

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