通販市場の潮目の変化捉えよ
2014年12月26日 10:51
2014年12月26日 10:51
2015年は通販市場に迫るパラダイムシフトがさらに加速する。本紙調査による14年度の通販市場は約9%増の5兆6440億円と拡大傾向が続く。だが、増税による消費の冷え込みや円安に伴う収益性の悪化、大手流通の攻勢がメーカー機能を持つ通販の脅威となり、周辺企業を含め取り巻く環境は厳しさが増している。来春には健康食品の「機能性表示食品」制度が始まるが、一方で昨年は景品表示法の大幅改正もあった。景表法は課徴金の導入も控えている。厳しい競争環境にありながら、難しい舵取りを迫られる。
「機能性表示食品」制度の開始は、健食を扱う通販企業にとって朗報だ。薬事法との関係で機能を表示できない健食は、科学的根拠を持てば「健康な関節の維持に」など身体の部位に関する機能を表示できるようになる。イメージ広告に頼らざるを得なかった通販各社は、消費者に適切な情報を提供でき、消費者選択に資する制度となることが期待される。
ただ、懸念もある。新制度の諮問を受けた消費者委員会は、制度の導入によって科学的根拠のない「いわゆる健康食品」の存在が浮き彫りになり、その淘汰が進むことを期待していることだ。このため消費者庁に監視・執行体制の充実を図ることを求め、継続的に行政を監視していく考えも示した。
悪質な業者の排除は必要だ。ただ、大転換となる今回の制度は、十分、慎重に議論され、設計された。医薬品を例に機能を発揮する成分の特定を条件とするなど、複数の成分が複合的に作用して機能を発揮する健食にあって厳しい制約も企業側は呑んだ。まず、消費者目線を重視して制度の導入が第一であり、その上で信頼を勝ち得て制度改革につなげると思えばこそのことだろう。
成分の特定を思えば、新制度を活用できる健食は多くなく、「いわゆる健食」として残る商品もある。根拠を充実させる過程にあるこれら健食を見境なく取り上げ、「いわゆる健食」と断じるべきではない。新制度が第2次安倍内閣の成長戦略の一環として検討が始まったことも忘れてはならない。
景品表示法の改正も市場に大きな影響を与える。地方への措置権限や不実証広告規制の移譲、近い将来には課徴金制度も導入される。消費者庁では景表法の執行を担う表示対策課、中でも食品表示を担当する「食品表示対策室」が大幅な定員増を要求している。消費者庁は新制度導入に際しどう動くのか。
景表法違反は、大手マスコミが報じるため、消費者に注意を促す効果が高い。一方で、業界全体に是正を促す効果も発揮する。ここ数年、健食では中小への適用が続く景表法だが、新制度を前の引き締めを狙い、「一罰百戒」の観点から業界に影響力のある大手を狙う可能性もある。成長戦略を掲げる政府と、法運用の実務を握り、批判を受けない形での安定した制度導入を狙う官僚の思惑は必ずしも一致しない。行政の"思惑"が先行するような運用はあってはならないが、企業も注意が必要だ。通販業界の勢力図を書き換えるに十分な制度改革だが、潮目の変化を捉えた企業にとっては好機ともなる。