業界団体は役割の重さ自覚を

2015年04月02日 14:39

2015年04月02日 14:39

「機能性表示食品制度」(新制度)が始まった。企業の約7割が活用の意向を示しており、制度の浸透で健食業界の底上げ、市場の再浮上が期待される。一方、新制度で企業に求められる機能性評価のレベルは高い。安全性や品質の担保など、規制強化の側面もある。企業努力も当然ながら、中小企業を含めた制度活用を促すため、健康食品に関連する業界団体が果たす役割は大きい。

 新制度を巡り、通販支援を行う事業者や健食関連メディア、業界団体のイベントが活況だ。その評価はここで行わないが、複数のイベントにおける主催者と参加者の質疑の応酬から、新制度に対する理解には企業間で相当なギャップがあると感じる。企業の対応力に差がある中、制度を悪用したり、過失により法に抵触する表示を行う企業が現れることは容易に想像できる。業界団体がいかに自浄作用を持ち、一方でまじめに取り組む企業を支えることができるか、健全な制度運用の重要なファクターになるだろう。

 日本通信販売協会(JADMA)は、新制度のガイドライン解説書を発刊する。また、届出情報に基づく商品のモニタリングも行う。

 米国では、機能性表示制度の導入後、市場が拡大した一方、健食に否定的なメディアのネガティブな報道が相次いだ。こうした前例を参考に、いち早く自主規制の取り組みを打ち出したJADMAに期待したい。

 一方、日本健康・栄養食品協会(日健栄協)は、研究レビューによる機能性評価のコンサルティングに力を入れる。専門の試験受託機関には、数千万円の売り上げが見込める臨床試験に意欲を示しても、金にならない研究レビューに消極的ところも多いという。その意味で、中小の制度活用を促す事業は業界の底上げにつながるだろう。

 ただ、その利用価格は疑問が残る。日健栄協にレビューを依頼した場合のコストは300万円。妥当なコストは諸説あるが、レビュー経験を持つ大学教授など複数の有識者は100万円以下と想定している。300万円はあまりに法外といえる。制度活用に対する投資回収を踏まえて商品化することを考えると、中小企業は二の足を踏むかもしれず、これでは中小の支援も建前に終わる。研究レビューの適正価格を知らない企業相手の商売は控えるべきだし、そもそも適正なコストがどの程度か示すのも業界団体の役割だ。

 日健栄協は、休刊していた学術情報誌も復刊。ジャーナルビジネスにも参入する。新制度に浮き足立つが、ビジネスへの意欲ばかり目につくのは、健食業界最大規模の団体としてバランスを欠いてはいないか。

 これまで例のない制度であるため、国は安全な運用でスムーズな導入をめざす。ただ対象成分の範囲など改善を求める声もあり、業界はまず信頼を勝ち得、制度改革につなげていく必要がある。将来的なサプリメント法の制定を見据え団体間の連携を密にし、日健栄協も乱立する業界団体をまとめていくことが必要になる。新制度が価値ある制度となるか、これからが正念場なのだ。業界団体は、新制度において自らが果たす役割を自覚すべきだ。

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