百貨店通販は自家需要に挑め
百貨店各社のネット販売事業は中元・歳暮といったギフト商材の構成比が依然として高く、次の成長フェーズに向けては、遅れているファッションアイテムなどの強化が急務と言えそうだ。
日本百貨店協会がまとめた「2014年版百貨店eビジネス白書」によると、13年の百貨店25社のネット販売売上高合計は前年比13・2%増の310億4656万円となり、過去5年間では一番の伸び率となったものの、各社の売り上げ規模に開きがあることもあって、1社平均では13億円弱と物足りない。また、売上高合計に占める「中元・歳暮などの商材」のシェアは69・4%で、依存度が高いことが分かる。
最近でも、三越伊勢丹が昨年10月にNTTドコモが運営する通販サイト「dショッピング」内に食品や雑貨などを扱うギフト専門サイトを出店したほか、11月にもリクルートライフスタイルとの共同で総合ギフトサイトを開設するなど、百貨店各社は中元・歳暮やパーソナルギフトといった百貨店店頭の強みが生かせるカテゴリーを強化する傾向が強く、一般的にネット販売市場での成長が見込まれている衣料品分野での成功事例はほとんどないと言えそう。
ただ、美術品では大丸松坂屋百貨店が昨年10月にオークションサイト「楽天オークション」を通じて絵画の販売を始めたほか、三越伊勢丹も今年1月、三越日本橋本店としてネットオークションの「ヤフオク!」に出店し、限られたユーザーだけが入札できる 「メンバーズオークション」に参加している。本命のファッションカテゴリーでも、三越伊勢丹が昨年4月に紳士服のネット専任バイヤーを初めて配置し、ウェブのシーズン性に合わせてバイイングを行える体制を整えた。また、大丸松坂屋百貨店店はネットで注文したファッションアイテムを自宅か大丸と松坂屋の対象店舗で受け取れるサービス「クリック&コレクト」を13年11月にアパレル大手のワールドと組んでスタートしたが、昨年春にはシステムを内製化。ワールド以外のブランドも参画できるようにし、サービスの対象は婦人服だけでなくファッション雑貨や紳士服に広げるなど利便性を高めている。
さらに、新たな手法を用いたファッションECの強化策としては、昨年12月に近鉄百貨店が衣料品ネット販売専業のマガシークと組んでファッション通販サイト「ハルカススタイル」をオープンしている。同サイトはマガシークの自社通販サイトと商品情報や在庫を共有しているため、ひとつの在庫をどちらのサイトでも販売できるのが特徴だ。新サイトでは、近鉄百貨店の店頭で扱うブランドの3倍以上がそろうことから、売り上げだけでなく、ネット先行型で新規取引先ブランドの開拓につながる可能性もありそうだ。
百貨店各社にとって、中元・歳暮は一大商戦であり、かつECとの親和性も高いことから引き続きネット販売ビジネスの主要商材であることに変わりはないであろうが、ギフトの伸びが頭打ちとなる前に、衣料品などEC利用のメーンである自家需要をとり込むことが、持続的な成長には欠かせない条件となりそう。
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最近でも、三越伊勢丹が昨年10月にNTTドコモが運営する通販サイト「dショッピング」内に食品や雑貨などを扱うギフト専門サイトを出店したほか、11月にもリクルートライフスタイルとの共同で総合ギフトサイトを開設するなど、百貨店各社は中元・歳暮やパーソナルギフトといった百貨店店頭の強みが生かせるカテゴリーを強化する傾向が強く、一般的にネット販売市場での成長が見込まれている衣料品分野での成功事例はほとんどないと言えそう。
ただ、美術品では大丸松坂屋百貨店が昨年10月にオークションサイト「楽天オークション」を通じて絵画の販売を始めたほか、三越伊勢丹も今年1月、三越日本橋本店としてネットオークションの「ヤフオク!」に出店し、限られたユーザーだけが入札できる 「メンバーズオークション」に参加している。本命のファッションカテゴリーでも、三越伊勢丹が昨年4月に紳士服のネット専任バイヤーを初めて配置し、ウェブのシーズン性に合わせてバイイングを行える体制を整えた。また、大丸松坂屋百貨店店はネットで注文したファッションアイテムを自宅か大丸と松坂屋の対象店舗で受け取れるサービス「クリック&コレクト」を13年11月にアパレル大手のワールドと組んでスタートしたが、昨年春にはシステムを内製化。ワールド以外のブランドも参画できるようにし、サービスの対象は婦人服だけでなくファッション雑貨や紳士服に広げるなど利便性を高めている。
さらに、新たな手法を用いたファッションECの強化策としては、昨年12月に近鉄百貨店が衣料品ネット販売専業のマガシークと組んでファッション通販サイト「ハルカススタイル」をオープンしている。同サイトはマガシークの自社通販サイトと商品情報や在庫を共有しているため、ひとつの在庫をどちらのサイトでも販売できるのが特徴だ。新サイトでは、近鉄百貨店の店頭で扱うブランドの3倍以上がそろうことから、売り上げだけでなく、ネット先行型で新規取引先ブランドの開拓につながる可能性もありそうだ。
百貨店各社にとって、中元・歳暮は一大商戦であり、かつECとの親和性も高いことから引き続きネット販売ビジネスの主要商材であることに変わりはないであろうが、ギフトの伸びが頭打ちとなる前に、衣料品などEC利用のメーンである自家需要をとり込むことが、持続的な成長には欠かせない条件となりそう。