アマゾンよ、立場を自覚せよ
アマゾンジャパンの関連会社の派遣社員が愛知県警に書類送検されたと一部報道が伝えた。同社が運営する通販サイト内で仮想モール機能「マーケットプレイ
ス」を活用した出品者により出品された児童ポルノ写真集の販売を手助けしていた児童買春・ポルノ禁止法違反(販売ほう助)の疑いである。無論、責められる
べき対象は当該写真集の出品者であろう。業界関係者からも「少し気の毒。見せしめ的な要素も強いのでは」との声も聞こえてくる。しかし、一方では「アマゾ
ンは自らの立場を自覚すべき」との声も少なくない。
アマゾンジャパンはネット販売市場の拡大とともに売上高を拡大させ、直近決算の売上高は8000億円超まで成長した。無論、日本のBtoCネット販売の事
業者の中では断トツの首位である。近年ではこれまで作り上げた集客力や高い機能などを有したメガサイトを他社に提供する「マーケットプレイス」の利用者拡
大に本格的に乗り出している。企業である以上、営利を追い求めていくことは当然だ。しかし、その前に先ほどの声のように、自らの立場を自覚すべきではない
か。
アマゾンは先の児童ポルノ写真集に関連した家宅捜索後、ネット上の有害情報や違法情報の排除に取り組んでいるセーファーインターネット協会(SIA)の賛
助会員となり、同協会から提供を受ける違法商品情報を元にサイト内のチェック強化や顧客が不適切な商品を電子メールで通報できる専用窓口の設置など違法商
品排除強化策を実施したという。その取り組み自体を否定するものではないが、同社ほどの規模を持つ事業者がその程度の準備すらしていなかったという事実に
は驚愕せざるを得ない。しかも自社による直販というある程度制御できるビジネスの領域外の、ある意味でリスクもある外部事業者による出品ビジネスの拡大に
力を注いでいる最中にも関わらずである。これでは事業拡大への投資は惜しまないのに、企業コンプライアンスはおざなりなのかと揶揄されても仕方あるまい。
同社が自覚しているか否かは別としても世間は業界トップの売上高を有するアマゾンをネット販売事業者の代表として認識している。そして"代表者"という立
場は、常に責任が付きまとう。誤った行いをすれば、世間および行政から厳しい目を向けられ、消費動向や規制強化など業界全体に大きな悪影響を及ぼす。アマ
ゾンは常に業界トップであることの立場と責任を自覚し、より自制的な管理体制を整えるべきだ。
加えて、今後は自らが主導的な立場でネット販売市場にとって有益となる施策を行っていくべきだ。先人たちを作り上げた通販市場に乗っかりこれまで業績を伸
ばして最大手にまでなった同社は今度は自ら率先して市場の健全化を図っていく責務がある。これまでは業界の健全化などに対する取り組みに名を連ねることは
ほぼ皆無であったが、そうしたスタンスは今後は改めるべきだ。市場の健全化は同市場のすべてのプレイヤーの成長を後押しすることは間違いない。もちろん、
自らの今後の成長にもつながるはずだ。アマゾンの今後に期待したい。
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アマゾンジャパンはネット販売市場の拡大とともに売上高を拡大させ、直近決算の売上高は8000億円超まで成長した。無論、日本のBtoCネット販売の事 業者の中では断トツの首位である。近年ではこれまで作り上げた集客力や高い機能などを有したメガサイトを他社に提供する「マーケットプレイス」の利用者拡 大に本格的に乗り出している。企業である以上、営利を追い求めていくことは当然だ。しかし、その前に先ほどの声のように、自らの立場を自覚すべきではない か。
アマゾンは先の児童ポルノ写真集に関連した家宅捜索後、ネット上の有害情報や違法情報の排除に取り組んでいるセーファーインターネット協会(SIA)の賛 助会員となり、同協会から提供を受ける違法商品情報を元にサイト内のチェック強化や顧客が不適切な商品を電子メールで通報できる専用窓口の設置など違法商 品排除強化策を実施したという。その取り組み自体を否定するものではないが、同社ほどの規模を持つ事業者がその程度の準備すらしていなかったという事実に は驚愕せざるを得ない。しかも自社による直販というある程度制御できるビジネスの領域外の、ある意味でリスクもある外部事業者による出品ビジネスの拡大に 力を注いでいる最中にも関わらずである。これでは事業拡大への投資は惜しまないのに、企業コンプライアンスはおざなりなのかと揶揄されても仕方あるまい。
同社が自覚しているか否かは別としても世間は業界トップの売上高を有するアマゾンをネット販売事業者の代表として認識している。そして"代表者"という立 場は、常に責任が付きまとう。誤った行いをすれば、世間および行政から厳しい目を向けられ、消費動向や規制強化など業界全体に大きな悪影響を及ぼす。アマ ゾンは常に業界トップであることの立場と責任を自覚し、より自制的な管理体制を整えるべきだ。
加えて、今後は自らが主導的な立場でネット販売市場にとって有益となる施策を行っていくべきだ。先人たちを作り上げた通販市場に乗っかりこれまで業績を伸 ばして最大手にまでなった同社は今度は自ら率先して市場の健全化を図っていく責務がある。これまでは業界の健全化などに対する取り組みに名を連ねることは ほぼ皆無であったが、そうしたスタンスは今後は改めるべきだ。市場の健全化は同市場のすべてのプレイヤーの成長を後押しすることは間違いない。もちろん、 自らの今後の成長にもつながるはずだ。アマゾンの今後に期待したい。