総合通販は企業価値の向上目指せ

2015年05月15日 16:58

2015年05月15日 16:58

 大手総合通販企業を取り巻く環境が厳しさを増している。ニッセンホールディングス(HD)の前期決算は最終赤字が85億円まで拡大したほか、売上高も実質的には減収となる厳しい内容だった。また、先ごろ発表されたフェリシモとスクロールの通期決算は、ともに最終赤字を計上する結果となった。各企業にとって、今年は将来の存続に向けた正念場となりそうだ。

 ネット販売市場が拡大する一方で、近年は従来型のカタログを中心とした総合通販企業は苦戦。既存顧客のネットへの移行こそ進んでいるものの、新規顧客を開拓できない状況が続いており、市場における存在感が低下している。こうした中で、ニッセンHDはセブン&アイグループの傘下に入った。さらに、千趣会がJフロントリテイリングと資本業務提携を締結。業界をけん引してきた大手2社のこうした動きは、総合通販企業を取り巻く環境が厳しい状況であることを如実に示している。

 近年は、流通形態の多様化が進むとともに、消費者の商品購入パターンも多様化。さまざまなメディアやチャネルで欲しい商品を選び、購入することが当たり前となる中で、これまで以上のスピード感をもって商品戦略や価格訴求を打ち出す必要があるが、オムニチャネル化が進む中で、体力に劣る総合通販企業が遅れを取っている感は否めない。千趣会やニッセンHDが有店舗の大手小売企業と連携したのは必然といえる。

 とはいえ、ニッセンHDにおいてオムニチャネルの成功事例がなかなか聞こえてこないように、違う業態の企業同士が連携したからといって、すぐにシナジーを生み出すのは難しいのが実情といえる。総合通販企業にとって、有店舗小売企業との連携も可能性の1つではあることは間違いなかろうし、新たな業態開発へ期待もされるが、それだけが解とはいえないのではないか。

 総合通販企業にとって本業である通販を取り巻く環境は厳しい。回復しない消費や円安による原価上昇、さらには用紙代高騰や運賃の値上げも追い打ちをかけている。加えて、消費者が通販に求めるサービス水準が向上しており、その対応も求められている。

 それでは、総合通販企業は生き残るためにどうすべきか。小売が厳しいとすれば、一つ考えられるのは、蓄積してきたノウハウやインフラの活用だろう。スクロールは、子会社で通販支援事業のスクロール360を中核として一気通貫のソリューションを提供するビジネスモデルを推進すると表明。フェリシモでも「リソースを外部企業に開放するビジネスコラボレーション事業」を新規事業として展開するとしている。こうした分野も競争は厳しいが、これまでの経験や成功事例が活かせるだけに一日の長がある。

 もちろん、商品力強化やニッチなジャンルへの特化で存在感を増す
手法もある。経営の安定を図るためには他企業との提携は選択肢となろうが、そのためにも必要なのは企業価値の向上であろう。市場における存在感を高め、唯一無二の存在にならなければ、今後の存続は難しくなる。

カテゴリ一覧