大胆かつ慎重に中国に挑め
中国の大手仮想モールが相次いで日本企業の出店誘致を強化している。6月1日には中国でシェア2位の大手ネット販売サイトを運営する京東集団が中国の越境仮想モール「京東全球購」内に日本製品専門の販売サイトを開設し、通常は支払いが必要となる出店料とプラットフォーム使用料を早期出店者には1年間無料とする優遇措置も用意して国内のEC事業者に対して、大々的な誘致を始めた。すでに爽快ドラッグなどの大手EC事業者の参加も取り付けたようで、年内には1000社を超える出店を目指すと鼻息も荒い。
中国最大手の仮想モール「天猫」などを運営するアリババグループもヤフーと組んで、今夏をメドに日本企業の出店促進を強化する。これまでも独自に日本企業に出店を促してきたようだが、ソフトバンクという同じ筆頭株主を持ち、関係の深いヤフーを介し、効率的に中国でも人気の高い優れた商品を製造、販売する日本企業の出店を促したい考え。対象企業にはアリババが運営する中国国内の仮想モール「天猫」「天猫国際」に通常の10分の1程度と安価に出店できたり、出店後に無料広告などで集客支援などが受けられる優遇プランを展開していく模様だ。
こうした動きの背景には中国国内での競争激化があるようだ。中国ECで首位のアリババグループの昨年度の流通総額は約50兆円と凄まじい規模まで成長しているが、2番手の京東集団も直販と仮想モール事業を組み合わせた「アマゾンモデル」で着実に流通総額を伸ばしている模様。さらに中国で人気のチャットアプリの運営者に資本参加するなど首位への対抗策を築きつつある。激化する競争の中、中国でも品質への信頼性の高さなどから人気の日本製品を、しかも中国でも問題となっている模造品を心配することなく、確実に正規品を販売する日本企業を多く出店させることで競合との差別化が図れる。そしてこれにより流通総額拡大にもつながり得ることから各社ともここに来て日本へのアプローチを積極化させているようだ。
日本企業にとっても中国という巨大なマーケットは魅力的だ。人口減などで確実に国内マーケットはシュリンクしていく中、否応なしに通販事業を含む小売り事業者は海外へと目を向けて行かざるを得ない。無論、成長著しい東南アジアのマーケットも魅力的だが、やはり、世界第2位の経済規模を有する中国市場には参入しやすい状況が整ってきているのであれば挑戦する価値はある。
とは言え、数年前の中国進出ブームでは意気揚々と日本の有力通販事業者が中国に参戦をしたものの、中国企業とのし烈な競争や商習慣の違いなどから、食い込むことができず、多くがすぐに撤退。結局、儲かったのは「中国、中国」と煽った一部の支援会社だけという讃嘆たる状況になったことも忘れてはならない。飛び込む勇気は必要だが、飛び込んだ後には慎重さと緻密さも必要だ。かつてのように日本での成功体験に惑わされず、当該市場に根差した戦略がなくてはならない。それなくしては数年前と同じ轍を踏むことになりかねない。各社には大胆かつ慎重に巨大マーケットに挑んで欲しい。
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とは言え、数年前の中国進出ブームでは意気揚々と日本の有力通販事業者が中国に参戦をしたものの、中国企業とのし烈な競争や商習慣の違いなどから、食い込むことができず、多くがすぐに撤退。結局、儲かったのは「中国、中国」と煽った一部の支援会社だけという讃嘆たる状況になったことも忘れてはならない。飛び込む勇気は必要だが、飛び込んだ後には慎重さと緻密さも必要だ。かつてのように日本での成功体験に惑わされず、当該市場に根差した戦略がなくてはならない。それなくしては数年前と同じ轍を踏むことになりかねない。各社には大胆かつ慎重に巨大マーケットに挑んで欲しい。