通販各社はサービス力を磨け
2015年07月23日 15:20
2015年07月23日 15:20
増税後の消費の冷え込みに加え、円安に起因する商品原価の上昇などが通販企業の業績を直撃し、その影響が長引いている。とくに総合通販は増税直後で大きく落ち込んだ昨年4~6月期の業績と比べても、今年の4~6月期の本業で大きく好転した企業はほとんどないのが実情だ。こうした時期だからこそ、通販各社は新規顧客の獲得に向けていま一度、通販利用のハードルを下げる努力が必要と言えそう。
人口減少が見込まれる中、消費の多様性は広がっており、通販チャネルを選んでもらうにはサービス力、利便性を徹底的に高めることが大事になる。通販の主力カテゴリーであるアパレル商材は、その場で試着できるリアル店舗とは異なり、サイズに対する不安が通販の弱点ではあるものの、商品の見せ方(情報量)や返品対応、テクノロジーの活用などで消費者が抱える不安の払拭に努める企業が増えている。
見せ方については、従来のサイズガイド表や購入者のレビューだけでなく、アイテム別の丈感を身長別に数パターン表示することで、見た目を気にする消費者の助けとしている。ただ、有店舗企業も通販チャネルの弱点を補うべくサイズ感の問題に向き合っており、カジュアルウエアを展開するコーエンは身長の異なるモデルがそれぞれSサイズとMサイズなどを着用した画像を掲載して着用感をイメージしやすくする取り組みを、サイズ展開の多いメンズ商材から着手し始めている。
返品対応では、靴とファッションの通販サイトを運営するロコンドが30日間の返品無料期間を設けることで、とくに靴を通販で購入したことのない消費者の獲得に成功しているほか、テクノロジー面では仮想試着ツールを活用する事例が出てきている。例えば、ディノス・セシールは、通販サイトで購入したい商品と手持ちの服のイラストを重ね合せてサイズの差が分かるスウェーデン発のサービス「バーチャサイズ」を「ディノスオンラインショップ」に導入している。また、楽天は7月13日に英国でバーチャル試着サービスを提供するフィッツミー社を買収。同社は自分の体形やサイズを入力することで商品を試着した際のイメージ画像が確認できたり、画面上でさまざまなサイズの服を着せ替えられるサービスを展開しており、同サービスが「楽天市場」の店舗に実装されれば、仮想試着の認知度や利用率が一気に高まることも期待される。
一方、婦人服通販のドゥクラッセは4月から、正午までに電話で注文を受け、裾上げや着丈詰めした服を最短で翌日に届けるサービスを開始した。同社では配送拠点に専任者が常駐し、ライン化された仕組みでお直し作業を行うことで一律390円という業界の4分の1程度の料金で提供する。
サイズ感の問題以外では、急に必要になることが多い礼服の即日配送や、後払い決済、コンビニ受け取りなど、消費者の細かいニーズに応えていくことが大切で、通販業界の物差しではなく、小売業全体の基準で高いサービス力を持つことが、今後の生き残りに欠かせない要素となりそう。