国センは〝存在意義〟考えよ

2010年05月06日 16:50

2010年05月06日 16:50

 国民生活センターは4月21日、通販で販売される家庭の浴槽に入れることで「湯が温泉となる」と標榜する石やセラミックボールなど関連商品の商品テストの結果を公表した。それによると、当該商品を使用した風呂の湯は各成分の濃度が温泉法で定めた基準を大きく下回っていたという。また、「温泉になる」という表示に関しても、温泉法の基準に及ばない以上、景表法や薬事法上、不適切であるなどとした。

 テスト対象となった商品のメーカーによれば、「テスト時の使用量が推奨しているものよりも少ない」などと調査の方法について、また、「事前に調査したデータと国センから公表されたデータが食い違っている」など疑問の声が挙がっている。これが事実だとすれば問題である。テスト結果が広く報道され、当該商品の信用や売れ行きに大きな影を落とす影響力をよく考え、国センには適正なテストを実施してもらいたい。

 これが大前提だが、それよりも大きな問題なのは、「なぜ、当該商品をテストするのか」というテストを実施する基準のあいまいさであろう。繰り返しになるが、国センの商品テストは広く一般紙等で報道され、当該商品の信頼に深い影を落とす。また、テスト対象になった商品はネガティブな結果が公表されることが大半だ。つまり、テスト対象となっただけで、当該商品を販売する事業者やメーカーにとっては大きなダメージとなるわけだ。

 それにも関わらず、国センはこれまであまりにも安易に商品テストの対象品を決めてきたと言わざるを得ない。ある商品をテストするか否かは消費者センターに寄せられた苦情件数などから判断する場合が多い。ただ、それもさほど件数が多い訳ではない商品でもなぜかテストに踏みきる場合が多々ある。今回の商品テストでも当該商品に関する相談が04年から約6年間で387件、品質や安全性に関するものが71件。「この相談件数は多いのか」と国センに尋ねると、「多いか少ないかは何とも言えないが一定の相談数が毎年あったため、テストした」となんとも煮え切らない回答だった。

 加えて疑問なのは当該商品に関する相談者のうち、80%は訪問販売で購入している。通販は5%、件数では18件だ。にも関わらず、国センは商品テストの際、「ヤフー!ショッピング」や「楽天市場」で購入した10銘柄を対象としている。本来、「相談が多い=問題のある可能性がある」商品に関してテストを行うことが筋であろう。これではテスト自体に何の意味があるのか首を傾げてしまう。「手っ取り早く、調査しやすいものを単純に調査した実績作り」と勘ぐられても仕方あるまい。

 折りしも経産省所轄の独立行政法人、製品評価技術基盤機構と商品テスト業務が類似していると指摘を受けて、今回の「事業仕分け第2弾」の対象となっている国セン。「通販いじめ」による点数稼ぎではなく、皆にとって意味のある機関とならねば、ただ、貴重な税金を食い荒らす「無用の長物」だとされてしまう可能性ある。国センは自らの存在意義と真に消費者の役に立つ情報の提供を考え直す必要があるのではないか。

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