TV通販企業は変化に備えよ

2010年06月03日 11:07

2010年06月03日 11:07

放送法改正案が5月27日、衆院本会議を通過、参院に送られた。政局が混乱を見せている中、今国会で同改正案が成立するか否かは不透明だが、成立すれば実に60年ぶりの通信・放送法体系の見直しとなる。改正を巡っては様々な議論があったものの、ネット上での映像配信の一般化など通信と放送の融合が進んでいる現状を踏まえ、時節に即した法改正は必要であろう。法改正によって「通信・放送の融合」が滞りなく進み、関連する新たなビジネスの成長や創造を期待したい。その一方で、今回の放送法改正案は放送事業者にいわゆる通販番組の総量規制を促す可能性もあり、特にテレビ通販実施企業は今後の動きを注視する必要がありそうだ。

 今回の放送法改正を前に昨年から総務省の諮問機関である情報通信審議会の「通信・放送の総合的な法体系に関する検討委員会」が中心となり、改正案の叩き台が議論されてきた。その中で一つの争点となったのが「通販番組」の法的な定義付けだ。総務省側は通販番組を「広告放送」と分類した上で、放送事業者に対し「番組ごとの種別と放送時間、分類に関する考え方」の公表を求め、ここ数年で増え始めた「通販番組」をけん制したい狙いがあった。

 こうした行政サイドの思惑に対して、放送事業者側は「通販番組は生活情報番組であり、広告放送ではない」と改めて主張。仮に通販番組を広告として分類された場合、日本民間放送連盟が定めた自主基準、週単位で18%以下という広告の放送時間に基づき、放送事業者は大幅に番組編成の見直しを迫られる。キー局各社はまだしも地方局やBS局ではテレビ通販事業者への放送枠の販売が大きな収入源となっており、それが断たれる事態となれば事業存続の危機に陥る可能性もあった。

 今回の放送法改正案では放送事業者からの反発もあり、結局、「通販番組は広告放送である」という通販番組の法的な位置づけは、改正案には盛り込まれなかった。ただ、「放送番組の種別の公表」の義務付け自体は法案にしっかり明記されている。総務省では「(法律の公布後、)番組種別の基本的な考え方を省令などで定めることも検討する」としており、この公表制度を論拠に将来的に通販番組を「広告」に位置づけることを決して諦めてはいないようだ。

 こうした総務省の動きを察し、省令で縛られる前にテレビ局各社は自主的に通販番組の区分を検討しつつ、通販番組の総量規制もまた自主的な基準作りを進めているようだ。キー局関係者によると、テレビ局が自ら手がける通販番組とテレビ通販事業者へ放送枠を販売する通販番組を合わせて、放送量は「週ベースで全体の3割以下」とするなどが話し合われているようだ。

 通販番組にせよ、放送内容云々は本来的に行政が介入すべきことでは決してない。ただ、現実問題として今後、通販番組の総量が制限されていく方向性にあるのは確かだ。テレビ通販事業者は現実を見据えてクロスメディアを駆使した通販展開など今後の戦略を考える必要があろう。千変万化の世の中で生き残っていくには、変化適応能力が必要だ。
《通販 2号 02面 15》

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