JPは真の顧客視点の思想を持て

2010年07月08日 14:49

2010年07月08日 14:49


郵便事業会社(JP)が手掛ける宅配便「ゆうパック」の遅配問題が波紋を広げている。7月1日、JPエクスプレス(JPEX)から「ペリカン便」を継承し、新たなスタートを切った「ゆうパック」だが、直後に複数の「ゆうパック」処理拠点で半日から2日程度の遅配が発生、通販事業者等の荷主や顧客にも影響を及ぼした。JPでは通販事業者をターゲットに荷主の開拓を積極化する構えを見せていたが、逆に顧客離れを引き起こしかねない状況だ。
 
JPによれば、荷物の遅配が発生した原因は、スタート当初のシステムの不具合や集配拠点の現場担当者が作業に不慣れだったことだとしている。「ペリカン便」の統合に伴い、JPEXの宅配便システムを導入したが、データの入力ミスなどで全体の作業が遅れ、荷物の配送にも支障をきたしたというものだ。

 問題は事前の準備が万全だったかだろう。この点では、JP側でも取り扱う荷物の増加などを勘案し、事前にシミュレーションを組んでテストも行っていたが、実際の現場では荷物の形状が様々で、担当者が作業に手間取るケースもあったという。単純なデータの入力ミスなどにより、複数の拠点で遅配が発生したことを考えれば準備不足だったのは明らかで、JP側の見込みが甘かったと言わざるを得まい。

 遅配の発生状況としても、7月2日に10拠点で荷物の遅配が発生。翌3日には3拠点、4日の段階で2拠点にまで縮小はしているが、この間の遅配荷物の数は約26万個、5日には約32万個に達し、通常99%の送達率も93%にまで落ち込んだ。

 無論、この中には通販事業者の荷物が含まれており、4月から商品の配送を「ゆうパック」に切り替えたニッセンでも、顧客からの問い合わせがきているという。さらに深刻なのは、生鮮品等の産直通販事業者だろう。鮮度が求められる商品の遅配は、致命傷にもなりかねないからだ。

 商品の配送を担う宅配便事業者は顧客との接点であり、通販事業者のイメージにも直結する。その意味で今回の遅配問題は、顧客の期待を裏切り、通販事業者に対する信頼も損ねるものでもある。JPでは商品の損害などに対し、賠償をしていく意向を示しているが、まず、顧客と通販事業者の関係性をも危うくしかねない問題であることを十分に認識すべきである。

 2007年10月に日本通運と日本郵政が包括提携を締結した際、「ペリカン便」と「ゆうパック」の統合は大きな目玉となっていたが、迷走を極めた。実際、JPと日通の宅配便事業統合作業は遅れに遅れ、土壇場で宅配便事業の統合を反故にするという事態になった。この間、翻弄され続けたのは通販事業者等の荷主であり、その顧客だ。

 宅配便事業統合を巡る紆余曲折の原因がJPだけにあるとは言えないが、顧客視点に欠くJP側の対応の緩慢さを指摘する関係者の声は少なくない。この構図は、今回の「ゆうパック」遅配問題にも通じるところがあり、問題は根深い。宅配便が通販の重要な構成要素であることを考えれば、JPも真の顧客視点の思想を持たなければならない。

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