薬事法への認識を改めよ
神奈川県警が今年6月、健康食品通販を展開する「東京総合販売」の経営者らを薬事法違反容疑に続き、組織犯罪処罰法(組犯法)違反容疑で再逮捕した。本来、組犯法は暴力団など反社会的団体の犯罪に対する刑罰の加重を目的とするもの。今回のケースを極めて悪質性が高いと判断してのことだろう。だが、通販事業者は健食通販に伴う薬事法違反のリスクを改めて認識する必要がある。より刑罰の重い組犯法さえ適用されかねないリスクを負うためだ。
社名変更を繰り返し、健食の違法な販売を続ける事業者が後を絶たない。こうした悪質事業者を取り締まるため、県警は組犯法の適用に踏み切った。今後は事業者の"組織実態"を重視し、組犯法の適用に対しても積極的な姿勢を見せている。
こうした取り締まりは悪質事業者が健食通販に参入する抑止力となり、市場の健全化につながるという意味で歓迎すべきものではあるだろう。ただ、忘れてはならないのが、同様のリスクを全ての健食通販事業者が負うということだ。
過去、薬事法違反で県警の摘発を受けた企業の中には、日本通信販売協会の正会員だった企業もある。協会への帰属だけで企業の信頼性を判断はできないが、協会内には加盟企業の広告表現をチェックする「表示審査特別委員会」があるだけでなく、入会時にも「倫理委員会」で広告表現が厳格に審査される。協会に属して適正な販売に努めようという姿勢が見える以上、全ての事件の悪質性が高かったと判断するのは早計だ。
また、健食通販では消費者にいかに分かりやすく機能性を伝えるかが売り上げを左右する。効果的な媒体を見つけても、いずれ媒体が疲弊するのは必然。持続的な成長をめざし新しい媒体や広告表現を模索する中、一種の"慣れ"が最悪の事態を招かないとも限らない。とすれば、薬事法、さらには組犯法の適用も全ての事業者にとって"今そこにある危機"といえる。事業者は広告表現に細心の注意を払う必要があるだろう。
一方で、摘発が後を絶たない背景には、事業者の"悪質性"を容易に見分けることができないことがある。その一因となっているのが、健食に明確な表示制度がないことだ。
薬事法は医薬品の販売業許可を得た事業者の規制を前提としており、当然、健食通販事業者はそこに含まれない。そうである以上、業務停止といった措置を経ず、警察の介入によって、即、刑事事件に発展するリスクを負い続ける。
だが、健食市場が一兆円超の規模に達する中、高齢化社会の到来や医療費の高騰といった社会環境の変化、市場の実態を鑑み、新たに健食を軸とした枠組みを整備することが必要なはずだ。でなければ、健全な事業者は、適正な販売であることを消費者に示す術さえ持たないも同然だ。
同様のジレンマを負うのは事業者だけではない。消費者は商品の明確な選択基準を持ちえず、警察は悪質性を判断する基準を持たない。神奈川県警が健食通販事業者の摘発で他県圧倒していることが、そこに担当官の裁量が働いている証左といえるだろう。制度化を進めない限り、根本的な解決は図れない。
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一方で、摘発が後を絶たない背景には、事業者の"悪質性"を容易に見分けることができないことがある。その一因となっているのが、健食に明確な表示制度がないことだ。
薬事法は医薬品の販売業許可を得た事業者の規制を前提としており、当然、健食通販事業者はそこに含まれない。そうである以上、業務停止といった措置を経ず、警察の介入によって、即、刑事事件に発展するリスクを負い続ける。
だが、健食市場が一兆円超の規模に達する中、高齢化社会の到来や医療費の高騰といった社会環境の変化、市場の実態を鑑み、新たに健食を軸とした枠組みを整備することが必要なはずだ。でなければ、健全な事業者は、適正な販売であることを消費者に示す術さえ持たないも同然だ。
同様のジレンマを負うのは事業者だけではない。消費者は商品の明確な選択基準を持ちえず、警察は悪質性を判断する基準を持たない。神奈川県警が健食通販事業者の摘発で他県圧倒していることが、そこに担当官の裁量が働いている証左といえるだろう。制度化を進めない限り、根本的な解決は図れない。