〝独自の価値〟

2010年07月29日 14:25

2010年07月29日 14:25

 本紙が調査した今号掲載の通販・通教売上高ランキングによると上位300社の合計売上高は4・1兆円だった。長引く不況が影響してか、市場成長率は鈍化傾向で、ランキング上位勢の多くは業績を落すなど苦戦を強いられている。しかし、一方で不況やデフレに左右されることなく、順調に業績を伸ばし続ける企業も少なくない。両者の違いとは何なのか。1つには"消耗戦"となる価格競争を回避できる「顧客に響く独自の価値」を作り上げ、それを実践できたか否かにあるようだ。

 不況かつデフレ状態の今、価格訴求は効果的な戦略なのかも知れない。だが、安易に使用すれば、恒常的な客単価下落や利益圧迫、さらには将来的な企業、ブランドのイメージ低下を招きかねない危険性を孕む「劇薬」であることは間違いない。ジャパネットたかた、オークローンマーケティング、ドクターシーラボ、スタートトゥデイなど不況下でも好調さを維持できている通販実施企業に共通するのは、安易な値引きなど劇薬の使用を極力、避けている点だ。裏を返せば、消費者を引き付ける"独自の価値"を持って価格訴求以外で勝負できているということだ。

 では"独自の価値"とは何なのだろうか。各社によって様々だが、その1つとして挙げられるのは「売りっぱなしにしない」ということだ。不況下でも業績を安定的に伸ばすある通販企業では、ダイエット食品を販売した後、効果的な使用方法やダイエット全般の相談を受け付ける無料の専用窓口の設置など、アフターフォローに手間やコストを惜しまずに投入している。その結果、この企業への安心感のほか、ダイエットの成功率を高め、当該商品において高いリピート購入率を生み出しているという。

 アフターフォローなどの顧客サービスが大切だ、ということは多くの企業が当たり前のこととして認識していることだろう。ただ、これまで多くの企業にとって顧客サービスとはある意味で、表面的なものだったのではないか。「商品を売る」ことが優先であり、販促費は潤沢に投入するが、直接、お金にならない顧客サービスはそれなりに、という事業者は少なくないはずだ。

 しかし、「売りっぱなしにしない」こと、つまり、直接はお金にならないはずの顧客へのアフターフォローに注力している企業こそが結局のところ、不況下においても、業績を伸ばし続けているという現実がある。価格以外の訴求ポイントを持つ企業は無理な値引きなどの体力勝負を避けることができ、健全な形で事業を展開することが可能だからだ。

 そしてこのことは今だけの問題ではない。むしろ、これからの通販市場で生き残るための必須条件となってくるのではないか。通販市場自体は今後も成長が見込まれている。ただし、その中身は大きく様変わりし、高い知名度や豊富な資金力を持った有力企業の新規参入や台頭が予想される。そうした強力な競合には価格訴求など通じまい。それらを相手に既存通販事業者が生き残るには"独自の価値"をどう創造できるかにある。簡単ではないだろうが今こそ、真剣に考えるべきだ。

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