JP経営陣は意識を変えろ

2010年08月05日 09:57

2010年08月05日 09:57


「ペリカン便」との統合直後に発生した「ゆうパック」の大規模な遅配問題を受け、郵便事業会社(JP)は7月30日、総務省に「郵便事業会社法」に基づく報告書を提出した。この問題を巡っては、一連の報道でJP側の準備不足などが再三指摘されてきたが、報告書の中でJPは、事前の準備や遅配発生時の対応など各段階で上層部の認識に甘さがあったとしている。総務省では報告書を精査した上で、行政処分などの対応を検討することになるが、JP側のずさんな体制が改めて浮き彫りとなったことで、通販等の荷主企業離れがさらに進む可能性がある。

 JPが総務省に提出した報告書では、事前の準備から、遅配発生時の対応や情報提供のタイミングなど各段階での問題点を分析しているが、そのいたるところに出てくるのが上層部の見込みや認識の"甘さ"だ。

 事前の準備段階について見ても、今年5月以降、荷物の区分け等を行うターミナル支店や統括支店で順次研修を行っていたが、JP本社で各拠点での研修の進捗状況が把握できていなかったという。だが、異なる仕組みの宅配便を統合することを考えれば、スタート段階で何らかの問題が起きることは想像される。その意味では、各拠点の現場担当者が新たなオペレーションにどの程度習熟しているのかを把握し、必要に応じて改善策を講じることが不可欠だったはずだ。

 実際に、遅配の直接的な原因が区分機の操作ミスなどによる作業の遅れだったことを考えても、現場のオペレーションを軽視したことが最大の過ちだったと言わざるを得まい。

 さらに問題なのはリスクに対する体制の不備と上層部の認識の甘さだ。報告書によると、統合初日の段階で経営陣が遅配発生の事実を把握していたにも関わらず、重大なトラブルにはならないと判断したとしている。この判断が応援要員の派遣などの対応策を遅らせ、結果的に遅配問題を長引かせる要因になったことを考えれば、判断ミスを犯した経営陣の責任は重い。

 こうした緩慢な対応は民間の宅配便事業者では考えられないもので、JPの一連の対応はずさんとしか言いようがない。「ゆうパック」を利用していた一部の通販事業者が他社の宅配便に切り替える動きも出ているようだが、顧客サービスを考えれば当然の判断だろう。

 これまで再三にわたり「ペリカン便」と「ゆうパック」の統合が延期された挙句、統合実現直後に発生した遅配問題。一連の経緯の中で共通した問題点を挙げるとすれば、JP側に未だに根強く残る官僚的な発想に行き着く。これについては、統合作業の過程で関係者がことあるごとに指摘していた点で、今回の遅配問題でも、顧客の視点を欠いた緩慢な対応にそれは表れている。

 顧客との接点になる宅配便は、通販事業者の間でも重視され、顧客の視点に立ったサービスが求められている。JPでは歳暮シーズンに向け、体制の建て直しを図る意向だが、まず経営陣が顧客視点の意識を強く持ち、それを現場に徹底させなければ、通販事業者等の「ゆうパック」離れを食い止めることは難しいだろう。

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