消費者委は機能不全を正せ
消費者庁の諮問機関として発足した消費者委員会(委員会)は9月10日、発足から1年を振り返り活動報告を行った。今後、委員会では消費者庁の「健康食品の表示に関する検討会」の結論を受け、審議を引き継ぐことになるが、議題には健康増進法の制度拡充も含まれるため事業者の関心は高い。だが、懸念がある。今なお存在感を示せず、機能に問題のある委員会が、残すところ1年の任期中に一定の結論を示さねばならないためだ。健食表示の議論の進め方も定まらない中、十分な議論が行えるか、はなはだ疑問だ。
委員会は本来果たすべき役割を見失っている。月例の委員会では、消費者庁から報告される内容にまとまった見解をぶつけることは少なく、好き勝手な主張が飛び交っている。
健食表示の検討会について報告された際には、ある委員が「ホメオパシーと同じで健食の好転反応の危険性は切実。具体的に検討してほしい」「宣伝も宗教団体のよう。健食の広告ガイドラインで体験談を規制してほしい」と捲くし立てた。消費者目線というより個人的見解を色濃く反映した意見と思えるが、この主張の是非が議論されることもなく委員会は閉会。こうした尻切れとんぼのようなやり取りが1年間続けられてきたわけだ。「単なる意見交換に終わっている気がする」と活動報告で自戒した別の委員の意見は委員会の機能不全を示したものといえるだろう。
その根底には、人員・予算の不足より、幅広いテーマへの対応を求められる委員会の対応力の限界があるだろう。日常的にさまざまなテーマへの意見を求められる委員会は、結果的に各分野の専門家で構成する下部組織に具体的な審議を委ねざるを得ない。こうして得た結論に委員の個人的見解を反映させるのが役割というなら、果たして委員会というフィルターを通す意味はあるのか。
事業者出身の委員は活動報告の席で「企業経営の立場で言えば物事を決める際、継続審議という形で委員会が引き継ぐのはおかしい。消費者庁と委員会で重複するテーマを整理すべき」と厳しい指摘をした。つまらぬ主張による議論の揺り戻しを防ぐ意味で、この意見に全く同感だ。
このように多くの改善点を抱える委員会が仕切ることになる健食表示の継続審議。委員会はいまだに審議の進め方を打ち合わせておらず、わずか1年で消費者、事業者双方が納得のいく結論を見出せるのか。委員会の抱えるテーマがそれだけでないことは分かるが、重要テーマについてはその工程の見通しを早急に示す必要があるだろう。
一方で、今後、健食表示の審議に留まらず、委員会を運営していく上で重要な観点が活動報告の中である委員から示されている。「ルール(規制)は万能ではなく、事業者の自主規制や消費者教育など、それに変わるものを育てていかなければ意味がない」というものだ。
この言葉は、委員会が過度な消費者保護の視点で市場環境の整備に臨むことをけん制したものだろう。委員会の本来の役割は、消費者にとって最も身近な存在である事業者との健全な関係構築の仲立ちをすることにあるはずだ。
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その根底には、人員・予算の不足より、幅広いテーマへの対応を求められる委員会の対応力の限界があるだろう。日常的にさまざまなテーマへの意見を求められる委員会は、結果的に各分野の専門家で構成する下部組織に具体的な審議を委ねざるを得ない。こうして得た結論に委員の個人的見解を反映させるのが役割というなら、果たして委員会というフィルターを通す意味はあるのか。
事業者出身の委員は活動報告の席で「企業経営の立場で言えば物事を決める際、継続審議という形で委員会が引き継ぐのはおかしい。消費者庁と委員会で重複するテーマを整理すべき」と厳しい指摘をした。つまらぬ主張による議論の揺り戻しを防ぐ意味で、この意見に全く同感だ。
このように多くの改善点を抱える委員会が仕切ることになる健食表示の継続審議。委員会はいまだに審議の進め方を打ち合わせておらず、わずか1年で消費者、事業者双方が納得のいく結論を見出せるのか。委員会の抱えるテーマがそれだけでないことは分かるが、重要テーマについてはその工程の見通しを早急に示す必要があるだろう。
一方で、今後、健食表示の審議に留まらず、委員会を運営していく上で重要な観点が活動報告の中である委員から示されている。「ルール(規制)は万能ではなく、事業者の自主規制や消費者教育など、それに変わるものを育てていかなければ意味がない」というものだ。
この言葉は、委員会が過度な消費者保護の視点で市場環境の整備に臨むことをけん制したものだろう。委員会の本来の役割は、消費者にとって最も身近な存在である事業者との健全な関係構築の仲立ちをすることにあるはずだ。