日中協議の行方を注視せよ
尖閣諸島周辺での中国漁船衝突問題で亀裂が生じた日中関係の修復の方向性が見えない。未だに中国国内では、反日デモが散発的に行われている状況で、東南アジア諸国連合関連首脳会議で予定されていた中首脳会談を中国側が突然キャンセルするといった事態も起きている。領土問題という国益が絡むだけに、関係修復までには時間が掛かりそうだが、こうした日中関係の冷え込みが続けば、中国に進出している日本の通販事業者のビジネス展開に悪影響を及ぼすことにもなりかねない。両国で問題解決の糸口を探る必要があろう。
一連の問題は、中国でビジネス展開を行う場合のリスクを改めて印象付けるものだが、実務レベルで考えた場合、日本の通販事業者にとって大きな壁となっているのは、中国の制度・ルールの問題だろう。
特に中国現地の通関手続きについては問題点を指摘する声が多く、通販事業者等からも、手続の完了までに時間が掛かる、日本から同じ商品を輸入しても税関によって対応が異なるといった声が上がっており、経産省が2008年度に実施したアジア向け海外ネット販売の物流テストでは、中国(上海)の関税還付を伴う返品処理が他の国よりも手間取ったという事例も報告されている。
原因は、担当者レベルのオペレーションによるものが多いようだが、このようなことが頻繁に起きているとすれば、通販事業者としても中国顧客への対応などの見通しがつきづらく、商品到着の遅れや注文のキャンセルなどを招くことにもなりかねない。日本を含む通販等の海外事業者のビジネス環境だけではなく、現地消費者のメリットといった観点からも、中国当局は対応を見直す必要があるはずだ。
もうひとつ中国でのビジネス展開で悩ましいのは、現地のルールに曖昧な点があり、しばしば事業者の混乱を招いていることだ。
通関についても、今夏頃から個人輸入に関する通関手続が厳格になっているとされているが、現地ネット販売の支援を行う仮想モール運営事業者が当局に制度の変更内容について問い合わせたところ、部署によって回答が異なり、詳細を正確に把握することができなかったという。
経産省などによると、中国では制度の新設や変更を場合、まず法的な枠組みを作って施行し、実際に運用しながら文言の定義など詳細を詰めていく傾向があり、これが当局担当者の回答や対応の矛盾を生み出す一因になっているらしい。国によって制度が異なるのは当然だが、それ沿ってビジネスを行おうとする事業者の混乱を招くような仕組みは再考せねばなるまい。
すでに経産省と中国当局でも、物流や店舗流通業、電子商取引などの分野で制度整備等に関する協議の準備作業を進めており、経産省では、中国側に通関手続き等の対応改善を求める考えを示している。現在の日中関係を考えると難しい局面も予想されるが、中国市場の環境整備は日本の産業振興を考える上でも重要だ。実際の協議入りは年明け以降になるようだが、通販事業者も今後の事業展開を左右する日中協議の行方を注視する必要がある。
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特に中国現地の通関手続きについては問題点を指摘する声が多く、通販事業者等からも、手続の完了までに時間が掛かる、日本から同じ商品を輸入しても税関によって対応が異なるといった声が上がっており、経産省が2008年度に実施したアジア向け海外ネット販売の物流テストでは、中国(上海)の関税還付を伴う返品処理が他の国よりも手間取ったという事例も報告されている。
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もうひとつ中国でのビジネス展開で悩ましいのは、現地のルールに曖昧な点があり、しばしば事業者の混乱を招いていることだ。
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