通販事業者は新境地に挑め
2010年も残すところ1カ月となった。08年秋に発生したリーマンショックに端を発した消費低迷が尾を引く中、通販事業者にとっては、顧客の価格志向への対応、あるいは経営基盤の再強化に追われた1年だったのではないだろうか。カタログ通販企業の業績を見る限り、売り上げ的には厳しさが残るものの、コスト削減などの取り組みにより、全般的には収益力の改善が進んでいるようだ。まだ、商環境には不安要素も残るが、次の成長路線をいかに描いていくかがカタログ通販各社の課題だろう。
ただ、通販市場は競争の激しさが増している。これは通販専業同士の競合もあるが、それと同等以上に影響しているのは、店販を主戦場としてきた有力アパレルブランドやGMSなどがネット販売を軸に通販の領域に流れ込んできていることだろう。
国内市場の縮小が進んでいることを考えれば、店販小売事業者としても従来のように店舗数を増やし売り上げを作る時代ではなく、いかに効率化を進め利益の維持拡大を図るかがテーマとなっている。その意味では、時間や立地などの縛りがなく、参入障壁も小さいネット販売を中心に通販の領域に近づいてくるのも自然の流れで、取り組みを加速させてくるのは想像に難くない。
言い換えれば、通販と店販の垣根はなくなりつつあり、カタログ通販事業者は全方位的な競争環境下に身を置いているわけだ。その中で次の成長うかがうには、やはり従来からの延長線上にあるだけの施策では限界もある。これまで蓄積してきた通販のノウハウや知見を活かした新境地の開拓が必要になるはずだ。
この部分では、カタログ通販事業者の間でもすでに動きは見られる。ニッセンが今年から本腰を入れているブランド再構築の取り組みも、そのひとつと言える。20代女性層の開拓を狙いに、人気タレントの香里奈さんを起用したテレビCM、あるいはイベントなどを展開してきたが、40年間育ててきたブランドイメージを一新するという試みは、企業としてかなり思い切った施策だろう。
また、セシールでは、「アニタ・アレンバーグ」での成果を踏まえ、ファストファッションの取り組みを積極化、同ブランドでの店舗展開をうかがうほか、ファストファッションの担当部門を設け、短サイクルの商品展開手法の確立を目指すなど、ネット販売への参入が相次ぐ店販系ブランドを意識した取り組みを進めている状況だ。
さらに変わったところでは、千趣会が任天堂等と組み家庭用テレビゲーム機「Wii」を活用したショッピングサービスを開始した。ネット接続率の兼ね合いなどから、今後の展開を疑問視する声もあるが、通販でテレビを活用する必然性を追及し、「Wii」独自のコンセプト、世界観の中でファミリー層をターゲットにした物販の可能性を探るチャレンジングな試みと言っていい。
現状、各社の取り組みに対して賛否が分かれ、結果が出るまでにも時間は掛かるが、厳しい市場環境下で次の成長路線を描くためには、各通販事業者も新境地の開拓に挑戦する姿勢が必要になってくるだろう。
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ただ、通販市場は競争の激しさが増している。これは通販専業同士の競合もあるが、それと同等以上に影響しているのは、店販を主戦場としてきた有力アパレルブランドやGMSなどがネット販売を軸に通販の領域に流れ込んできていることだろう。
国内市場の縮小が進んでいることを考えれば、店販小売事業者としても従来のように店舗数を増やし売り上げを作る時代ではなく、いかに効率化を進め利益の維持拡大を図るかがテーマとなっている。その意味では、時間や立地などの縛りがなく、参入障壁も小さいネット販売を中心に通販の領域に近づいてくるのも自然の流れで、取り組みを加速させてくるのは想像に難くない。
言い換えれば、通販と店販の垣根はなくなりつつあり、カタログ通販事業者は全方位的な競争環境下に身を置いているわけだ。その中で次の成長うかがうには、やはり従来からの延長線上にあるだけの施策では限界もある。これまで蓄積してきた通販のノウハウや知見を活かした新境地の開拓が必要になるはずだ。
この部分では、カタログ通販事業者の間でもすでに動きは見られる。ニッセンが今年から本腰を入れているブランド再構築の取り組みも、そのひとつと言える。20代女性層の開拓を狙いに、人気タレントの香里奈さんを起用したテレビCM、あるいはイベントなどを展開してきたが、40年間育ててきたブランドイメージを一新するという試みは、企業としてかなり思い切った施策だろう。
また、セシールでは、「アニタ・アレンバーグ」での成果を踏まえ、ファストファッションの取り組みを積極化、同ブランドでの店舗展開をうかがうほか、ファストファッションの担当部門を設け、短サイクルの商品展開手法の確立を目指すなど、ネット販売への参入が相次ぐ店販系ブランドを意識した取り組みを進めている状況だ。
さらに変わったところでは、千趣会が任天堂等と組み家庭用テレビゲーム機「Wii」を活用したショッピングサービスを開始した。ネット接続率の兼ね合いなどから、今後の展開を疑問視する声もあるが、通販でテレビを活用する必然性を追及し、「Wii」独自のコンセプト、世界観の中でファミリー層をターゲットにした物販の可能性を探るチャレンジングな試みと言っていい。
現状、各社の取り組みに対して賛否が分かれ、結果が出るまでにも時間は掛かるが、厳しい市場環境下で次の成長路線を描くためには、各通販事業者も新境地の開拓に挑戦する姿勢が必要になってくるだろう。