〈快走するメルカリShops〉 新品扱うEC企業急増 食品や調理器具、家電に注目

2025年06月19日 15:08

2025年06月19日 15:08

〈通販新聞 6月19日付 第1994号 (2025年6月12日発行) 1面〉

0619150735_6853a92754dd3.jpg メルカリが運営する、フリマアプリ「メルカリ」上のECプラットフォーム「メルカリShops」が好調だ。「初期費用・月額費用ゼロ」を武器に、出店企業が増えている。「売れるモール」として、EC企業からの注目度は高まる一方。これまでは、C2Cと親和性の高いリユース品を販売する事業者の出店が目立っていたが、最近はプライマリー(新品)を扱う企業の出店も急増。流通額は成長を続けている。





 メルカリShopsは2021年にサービスを開始。当初は「コロナ禍で苦しむ地域の生産者のための販路」という色合いが強かったが、近年は機能的にも「仮想モール」へと近づくとともに、大手EC事業者も続々参入している。

 「メルカリの強みは、ユーザーが手放した不要品の売上額がアカウントにプールされていること。C2Cでは出品が少なかったり、買いづらかったりするジャンルの商品が、B2Cの品揃えが強化されることで、メルカリ内の『循環』が今まで以上に加速している」。メルカリShopsを統括する、江川嗣政執行役員は、競合仮想モールにはない、メルカリならではの強みを解説する。

 さらに、初期費用や月額費用は無料で、販売手数料10%しかかからない点も見逃せない。昨今は原材料や物流費など、さまざまな分野で値上げが続いているだけに、EC企業にとって「安さ」は大きなメリットと言えるだろう。江川執行役員は「カテゴリーや売上規模によって変わってくる部分はある」と前置きしながらも、「トータルで見ると他の仮想モールよりもコストは低く済むこともあり、出店するEC企業からも非常に好評だ」と胸を張る。

 現段階のメルカリShopsにおいて目立っているのは、リユース品を販売する事業者だ。コメ兵やバイセル、買取王国、BRING、ブックオフなどのリユースショップを筆頭に流通額を順調に伸ばしている。

 その一方で、プライマリーを扱うEC企業の売り上げも順調に拡大している。カニなどを販売する「越前かに職人甲羅組」は、メルカリShopsの優秀店舗を表彰する「メルカリShopsアワード2024」において、総合3位を受賞。他の仮想モールでも売り上げ上位に入る大手EC企業だ。メルカリShopsアワード2024では甲羅組以外にも、アイリスプラザなど、楽天市場などでおなじみのEC企業が受賞している。

 他にも、コーヒーを販売する澤井珈琲など、大手小売り企業や著名EC企業が続々出店。具体的な出店者数については公表していないが、法人出店に関しては月間4桁増のペースを維持しているという。

 この1カ月の新品ジャンルでは、「ファッション小物(バッグ・時計・アクセサリー)」「食品(米類/果物)」「カーパーツ(タイヤ・ホイール)」「コスメ・美容(ユニセックスの香水)」「スポーツ(クラブ・ゴルフ関連)」「ゲーム・おもちゃ(ポケモンカード)」「キッチン・食器(調理器具)」が売れる傾向に。食品や調理器具など、C2Cではカバーしづらい領域の商品が目立っている。さらには「今後は、個人では扱いにくい大型家電や、アウトレット家電なども期待できるのではないか」(江川執行役員)。

 モールとしての機能強化も進んでいる。昨年には送料別(購入者負担)設定や、二重価格表記を導入。コンバージョンにつながる「優良ショップ」バッジについても、取引数やキャンセル率、発送遅延率、レビューなどの条件を満たした店舗には自動的に付与されるように。さらには「メルカリ」で全体使えるクーポンに関しても、これまではC2Cだけしか使えなかったものが、B2Cの利用が可能となった。

 同一店舗で複数商品が買えるようになる「買い物カゴ機能」に関しても年内を目処に導入を予定。江川執行役員は商戦期である年末年始に向け、プライマリーを扱うEC企業に喜んでもらえる機能を続々投入していきたい」と力を込める。

 集客面でもさまざまな取り組みを展開している。今年二月には検索連動型広告を正式に開始。現在、ファッションやスポーツなど様々な業種の企業で活用されており、費用対効果の面では良いという(※一部ショップのみ開放)。

0619150831_6853a95f7b628.jpg また、コンテンツマーケティングにも力を入れている。「メルカリ」のノウハウが学べるサイト「メルカリコラム」において、メルカリShops関連のコラムを多数掲載。さらには、ウェブ版「メルカリ」の刷新も進めている。「アプリ経由ではなく、パソコンやスマートフォンのウェブページからアクセスするユーザーは意外と多い。プロモーション効率はアプリよりウェブの方が良いので、コンテンツやプロダクトを強化することで購入につなげたい」(江川執行役員)。

 新品を扱うEC企業の取り込みを進めるメルカリShops。これからますますプライマリー領域の商品が売れやすくなっていくのは間違いない。江川執行役員は「『メルカリ』で不要品を売って得た売上金を持っているユーザーを取り込めるのが大きな強み。他の仮想モールに出店する中堅規模のEC企業にどんどん出店してもらいたい」と呼びかける。


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