ヤマト運輸がロボットでマンション内宅配、アームで昇降機のボタン操作も 指定時間に玄関前まで配達

2025年08月27日 14:53

2025年08月27日 14:53

 ヤマト運輸は8月22日から、大規模マンション内の各戸へロボットで荷物を宅配する取り組みを開始した。マンションに荷物が届くと通知を受けた居住者の要望に応じて、自動配送ロボットが指定日時に玄関先まで荷物を運び、対面または置き配で引き渡す。例えばエレベーターの乗り降りの際にマンション内のエレベーターシステムと連携する必要がある他の自動配送ロボットと比べて、ロボットに搭載されたアームを伸ばすことでエレベーターのボタンを押し乗り込めるなど様々なマンションに対応できる汎用性の高いロボットを採用した。まずは千葉県内と都内の大型マンションで実証実験を開始後、関西でも展開。来年には実用化を目指す。ロボット導入で居住者のニーズに応じたタイミングで配送することによる利便性向上やそれによる再配達率低減などを含むラストワンマイル配送における効率化を図りたい考え。


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 同実証実験は自律走行ロボットを開発するWATT(=ワット)の対面での荷物引き渡しに対応する「James mW(ジェームズミリワット)」および置き配に特化した「James W(ジェームズワット)」という自動配送ロボットを各1台とマンションに届いた荷物を格納(※格納可能個数は最大35個)して送り状を読み取り、配送先を自動判断し、ロボットに配送指示を出すスマート宅配ボックス「W‐Station(ダブルステーション)」1台を活用して行う。

 「今後の展開を考える上で色々なマンションでもフィットできることが重要。一般的に配送ロボットはセキュリティスシステムやエレベーターシステムに連動しなければならないが、(採用したロボットは)最初の設定は必要だが、その後は汎用性が高い」(宅急便部長・久保田亮氏)という。

 なお、同ロボットは昨年11月から順次、ソウル市内のマンション3棟とオフィスビル1棟での館内配送に導入。現状、4棟あわせて8台を運用中で、韓国以外での運用は今回の実証実験は初めてという。

0827145342_68ae9d66e8618.jpg 流れはマンションの居住者に届いたヤマト運輸の荷物を当該マンションに常駐するヤマトのスタッフがスマート宅配ボックス「ダブルステーション」に格納し、荷物のサイズと送り状に記載の配送先情報を読み取らせる。居住者にはメールで荷物が届いたことを知らせ、居住者が希望する受取の方法や日時を指定。居住者の指定をもとに「ダブルステーション」がロボットに配送を指示し、対面受け渡しが希望であれば「ジェームズミリワット」、置き配希望であれば「ジェームズワット」が「ダブルステーション」まで移動して該当荷物を受け取り、必要に応じて、事前学習したオートロックやエレベーターのボタンの位置などを情報をもとに、アームを伸ばしてオートロックを開錠したり、エレベーターの開閉ボタンや各フロアのボタンを押して自動で居住者の玄関前まで移動し、到着したことを通知。対面引き渡し対応のロボットでの受け取りの場合は到着の知らせとともに4ケタの開錠用パスワードもメールで通知して、アームを伸ばしてインターフォンを押す。居住者は玄関先で待機するロボットの液晶画面に開錠用パスワードを入力し、ロボットから荷物を取り出し、受け取る。置き配用ロボットの場合は、到着後、荷物を出し玄関ドア前に置き配する。その後、ロボットは所定の待機場所に自動で戻る。

 なお、両ロボットとも一度に運ぶことのできる荷物は2個で、サイズはいわゆるみかん箱よりも2まわり程度大きいサイズまで。耐荷重は1個あたり30㌔㌘まででミネラルウォーターなども問題なく運ぶことができるという。走行スピードは時速200~800㍍。段差は3㌢程度まで、勾配は5度程度まで乗り越えることができるという。

 実証実験は千葉県内のマンション「プラウド新浦安パームコート」(所在地・浦安市高洲8‐1)内の5棟のうちのC・D・E棟の住居、約300戸のうちで事前許可を得た約60戸を対象に、8月22日から9月24日まで(配送時間は午前9時から午後6時まで)行うほか、都内の約300世帯が居住するタワー型マンション「プラウドタワー目黒MARC」(所在地・品川区西五反田3‐3‐2)でも対象戸数は未定ながら、10月23日から12月10日まで実施予定。その後も首都圏のほか、関西圏の大規模マンションなど実証地域を広げつつ、現状の実証ではヤマト運輸の荷物のみを対象ついているが、他の配送事業者の荷物を含めて対応する形の実証も進める予定。

 実証実験を通じて、大規模マンション特有の環境下での自動配送ロボットによる配送の正確性や生産性などの運用性能や障害物回避などの動作機能のほか、自動配送ロボットならではの深夜・早朝帯の配送を行うことなどによる利便性、居住者の満足度、また、運用コストなど導入効果などの検証を行いつつ、ワットが韓国では展開するゴルフバッグやさらに大きなサイズの荷物に対応するロボットなどの導入もニーズを見ながら検討を進める。

 「お客様が荷物を受け取りたいタイミングで受け取りたい方法でお届けできる選択肢を増やす。大規模マンションには様々な要望があり、それらについて汎用性の高いロボットの力を使って、人間では対応できなかったこと(早朝深夜の配送など)についてもジャストフィットして利便性を高めていける。実用化に向けて、お客様の利便性の観点を中心に実証を進めていきたい」(久保田部長)とし、ビジネスモデルや運営体制なども検討、整備して2026年中には実用化したいとしている。

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