〈フェリシモが編み物ブームで初心者キット好調 ②〉 暮らし軸から手作り提案、「クチュリエ」をリブランディング

2025年10月17日 15:45

2025年10月17日 15:45

 編み物ブームを受け新規顧客が増えている、フェリシモが手掛ける手作りキットブランド「クチュリエ」の編み物キット。同社では「猛暑の影響で夏のおうち時間も増える中、編み物が『季節の趣味』から『通年の暮らしの定番』に変わりつつあることを裏付ける結果となった」と分析している。


1017154709_68f1e66d668b2.jpg クチュリエGブランドマネージャーの小久保愛里氏は「若年層が多く流入した影響があると仮定すると、『タイパ』や『コスパ』を重視する世代なので、(編み上げるに時間がかかる)編み物は夏にこそ始めたほうがいい、と考えてハマっているのではないか。猛暑も来年以降も続きそうなので、傾向は加速するかもしれない」とみる。

 同社が5月に実施した顧客アンケートによれば、10代~20代の顧客が編み物や手作りを始めたきっかけは「デジタルデトックスとマインドフルネスが期待できる」が最多に。次いで「既製品にはない温かみのある質感や手作業ならではの繊細さ、自分だけのオリジナリティーを表現することができるから」と「コスパ」が並んだ。ただコスパに関して、小久保ブランドマネージャーは「単純に価格だけを考えると、編み物はそれほどコスパが良くないと思う。恐らく別の価値基準があるのではないか」と推測する。編み物や手作りは「既製品にはない、オリジナリティーが表現できる」からこそ、「自分で作ったという特別な体験」が得られる。さらには、編み物をすることで精神的豊かさが得られ、デジタルデトックスにもつながる。「編み物には失敗がつきものだが、それすら楽しんでしまう。単なる『安さ』ではなく、目に見えない価値を『コスパ』と捉えているのではないか」(小久保マネージャー)。

 こうした新たな流れが生まれる中、クチュリエはブランドコンセプトを「つくるよろこびは、ここにある。」に刷新した。年齢や性別の垣根を越え、これまでの「手芸ブランド」から、「あらゆる創造性をかきたてるブランド」に変える。これまで培った手づくりキット提案のノウハウを活かし、初心者から熟練者まですべての人が「作ること」の楽しさを自由に味わえるブランドへと進化させる狙いだ。

 今回のリブランディングプロジェクトには、クチュリエ事業部のメンバーだけではなく、普段はファッション事業に関わっている社員も多数関わった。「リアルな市場では何が流行しているのか、ファッションECならではの視点を取り入れることにチャレンジしていく」(小久保マネージャー)のが狙いだ。

 成果の一貫としては、編み物愛好家として知られる俳優・中田クルミさんとの、かぎ針編みコラボレーションキットの発売が挙げられる。こうした著名人とのコラボに関しては、社員の意見が取り入れられているという。「当社はファッション感度の高い社員が多いので、『どんな人とのコラボキットがあったらやってみたいですか』と意見を募った。今後も同様の取り組みを続けていきたい」(同)。

 6月からブランドを統括している小久保マネージャー自身も、もともとはクチュリエのメンバーではなかった。小久保マネージャーは「ブランドとして守らなければいけないものもあれば、少し考え方を変えなければいけない部分もある。他事業部のメンバーの意見も取り入れることで、手づくりに興味がある人に広く楽しんでもらえるブランドにシフトできたら」と話す。

 クチュリエは2002年に発足したブランドだが、これまでロゴやキャラクターは変えてこなかった。手芸ブランドからの「進化」は大きな転換点となる。小久保マネージャーは「会員向けにアプローチしてきたブランドなので、新たな顧客向けのアプローチがあまり得意ではなかった。ただ、ブランドを長く続けていくためにも、新たな出会い作らなければいけない」とリブランディングの理由を説明する。

 今後は若年層はもちろんのこと、男性にもアプローチしていく。そのため、男性の編み物作家とのコラボ商品も発売する予定だ。小久保マネージャーは「『完成形が分かりやすい代わりに、デザインについては妥協して選ぶのがキット』というイメージを持つ人もいるが、当社のキットはデザインも満足してもらえるはず。『キット屋』として、さまざまな層に向けてキットを企画していく」と目を輝かせる。

 その上で小久保マネージャーは「暮らし軸からの手作り提案をしていきたい。編み物ブームをチャンスとして、手芸を趣味の領域に留めることなく、ライフスタイルの一部として、ファッションや暮らしを豊かにするものだと理解してもらえれば」と今後の展望を語る。60歳以上の人たちのチャレンジを後押しするようなキットや、上質な素材を使った単価が高めの商品なども開発する予定だ。

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