フェリシモが編み物ブームで初心者キット好調 「分かりやすさ」武器に、新規急増も継続率キープ

2025年10月01日 17:21

2025年10月01日 17:21

 フェリシモの手作りキットブランド「クチュリエ」で販売する編み物キットが好調だ。7月度受注が、前年同月比で約3.4倍に。編み物の需要が高い2月の1・8倍の注文数となっている。2024年初頭から巻き起こった「編み物ブーム」を受け、同社でも若年層を中心に新規顧客が急増。「おばあちゃんに手取り足取り教えてもらっている感覚」を意識した「分かりやすさ」を武器に取り込みを図っている。


1001172117_68dce47d1986a.jpg 「以前から顧客層の拡大が課題だったので、大きな好機と捉えている」。到来した編み物ブームを受け、クチュリエGブランドマネージャーの小久保愛里氏は頬を緩める。これまで編み物を含めた手芸といえば、どちらかといえば中年層以降の趣味という側面が強かった。やはり高齢になると、老眼で近くのものが見えづらくなったり、手が動きにくくなったりと、なかなか手作りを楽しむ環境が整わなくなってくるのが実情だ。「若年層にこそハンドメイドを楽しんでもらいたいと考えていたので、新規で獲得した若年層にどう定着してもらうかが大事になってくる」(小久保ブランドマネージャー)。

 編み物ブームの火付け役となったのは、K―POPアイドル・宮脇咲良さん。2024年1月、SNSに自作の編み物を投稿したのがきっかけとされる。同社サイトのPVも大きく伸び、以降は高止まりで推移。これを受けて、同社では昨年3月に発行した「クチュリエ」春夏カタログの表紙に編み物を採用した。表紙に載せた、クレープをモチーフとしたキットの売り上げが右肩上がりになるなど、成果が出た。

 じわじわと人気が高まっていた編み物だが、需要が爆発したのは今年に入ってから。毛糸が品薄になったり、かぎ針の需要が追いつかなくなったり、市場全体が大きく活性化している。夏になってからもその勢いは止まらない。冬の趣味と思われがちな編み物だが、例えば「メタリックヤーン」は冬以外にも十分向いている素材という。また、編み物の定番であるマフラーやセーターなどは編むのに時間がかかるため、夏から作りはじめないといけない。そのため、夏に編み物をする人もそれなりにいたのだが、傾向に拍車をかけたのが今夏の猛暑。「おうち時間」が増えたことも後押ししたとみられる。

 同社で特に人気となっているのが、「はじめてさんのきほんのき くさり編みからきちんとレッスン♪ かぎ針モチーフ編みの会」。月1回の配送で、かぎ針編みの基本的なテクニックを学びながら、花をイメージしたモチーフを2種4枚ずつ仕上げていくため、無理なく続けられる点が評価されているという。7月度受注数は前年同月比344%増で、4~7月合計の前年比も348%増だった。編み物市場全体の伸びを大きく上回る好調ぶりだ。

 同キットが人気の理由は何か。小久保ブランドマネージャーは「編み物 初めて」と検索すると上位に出てくる点が最も大きいのではないかと分析する。とはいえ、競合となる初心者向けキットは他にもある。同社は編み物以外にも「きほんのき」シリーズを展開しており、初心者でも少しずつステップアップし、技法を身につけることができるというのがコンセプトだ。

 同社が手掛けるキットの最大の特徴は「レシピの分かりやすさ」。小久保ブランドマネージャーは「世界で一番分かりやすいレシピを目指して作っている」と胸を張る。同社のレシピは、編み物の設計図である「編み図」と文章の2軸で構成。また、動画でレシピを説明しているキットもある。「『ここまでやるか』と良く言われるほどの情報量を提供している。昔の家庭なら、編み物ができるおばあちゃんに手取り足取り教えてもらえたが、現代はなかなか難しい。そういった感覚を再現するためにレシピを作っている」(同)。

 また「きほんのき」は1650円と、発売した10年前から値上げをせず、安価に提供している点も、ユーザーから人気のポイントとなっているようだ。「100円ショップなどを使えば安く揃えられる可能性もあるが、毛糸にもさまざまな種類があり、当社の場合、作品を作るために各メーカーと日本製など最適な素材を選び、無駄なく適量セットしている。別途販売中のかぎ針も使いやすいので、結果として挫折しにくいのではないか」(同)。同社のキットは定期商品のため、月にまたがっての複数回購入が基本となるが、継続率は80%を超えている。今年に入ってからは新規顧客が増えているが、継続率は下がっていないという。(つづく)

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