NEが東証グロースに上場、スピンオフで価値最大化へ

2025年11月06日 11:01

2025年11月06日 11:01

 ECプラットフォーム「ネクストエンジン」を手掛けるNEは11月4日、東証グロース市場に上場した。初値は750円で、公開価格と同値だった。同社はHamee(ハミィ)子会社だったが、NEの全株式を、現物配当(金銭以外の財産による配当)でハミィ株主に分配するスピンオフ上場のため、ハミィとの資本関係はなくなっている。


 NEは2022年8月、ハミィの「プラットフォーム事業」を分社化する形で設立された。ハミィは携帯電話ストラップのネット販売を祖業としており、プラットフォーム事業に関しては、通販サイト運営に関わるさまざまな課題が表面化したことを機に、これを解決するためのサービスとして「ネクストエンジン」を開発することから始まったもの。以降、ECを中心としたコマース事業と、プラットフォーム事業という構造の大きく異なる2つの事業を運営してきたが、事業をまたぐ全体最適への適合による非効率化などの問題点が表面化したことから分社化を行っていた。

 今回の上場は、経営、資本のそれぞれの独立を図ることにより、迅速な事業戦略の実行と、さらなる各事業分野での成長を促進し、それにより長期的な株主価値の最大化が目的。NEの比護則良社長は、スピンオフ上場という形式を選んだ理由について「ハミィという小売りをメインにしている会社と、システムをメインにしている当社との最適化が図れなくなってきていた。成長していくための意思決定を早くすることを考えたときに、スピンオフが最適であり、株主に与える価値の総和を大きくしていけるという判断をした」と説明した。

 同社の2025年4月期業績は、売上高が39億2500万円、営業利益は15億1700万円、経常利益は15億2400万円、当期純利益は9億4000万円。ネクストエンジンの6570社、店舗数は5万3602店、年間流通総額は1兆1879億円だった(いずれも前期末)。

 売上高のうち75・7%を「ネクストエンジン事業」が占める。EC企業向けコンサルを手掛ける「コンサルティング事業」は9・5%、自治体向けふるさと納税支援や伝統工芸品EC事業の「ロカルコ事業」は14・8%となっている。

 今後の成長戦略としては、「ネクストエンジン・オーダーメイド」を強化。API連携で基幹システムにつなげられる受託型の開発サービスで、数百~数千万円の案件だが、獲得社数も増えているという。その他、AI連携機能なども強化する方針だ。


比護社長との一問一答

商品企画のほか、映像共有も


1106110328_690c01f035024.jpg 11月4日に東京証券取引所で記者会見した比護則良社長(=写真)との主な一問一答は以下の通り。


 ――初値への感想は。

 「もう少し評価されてもいいのかな、と思っていた。ただ、スピンオフという独特な流れの中で、売りが少し先行した状況だと思っているので、ここから価値を伝えて株価を上げていきたい」

 ――株価の下落リスクがある中で、スピンオフ上場を選んだ理由は。


 「実際にスピンオフ上場の検討を始めてから6年ほどたっているので、他社の事例にはあまり左右されていない。その上でなぜ選んだかというと、ハミィという小売りをメインにしている会社と、システムをメインにしている当社との最適化が図れなくなってきていた。例えば、エンジニアが中心の当社と営業が中心のハミィに分かれていて、会社の制度や仕組みを変えることも難しかった。成長していくための意思決定を早くすることを考えたときに、スピンオフという方法が最適であり、株主に与える価値の総和を大きくしていけるという判断をした」

 ――競合の認識は。

 「上場企業でいえば、アイルの『クロスモール』、非上場企業ではアクアリーフの『助ネコ』、GoQSystemの『ごくーシステム』といったところだが、契約社数をオープンにしている会社は少なく、私たちが聞いているところでは多くて2000社程度のようだ。4~5年前に比べると、競合としてコンペになるケースも少なく、市場シェアを取りつつあり、ブランドの認知も獲得していると思っている」

 ――競合と比較した際の優位性は。

 「API公開などが先行してできており、ネクストエンジンを中心に、ECに関するさまざまなサービスが連携されている状況だ。ECの成長を検討していく段階で、必要なサービスとの接続が容易であるため、パートナー制度が盤石に構築できているところが、ネクストエンジンの一番支持されるポイントではないか」

 ――海外展開も視野に入れているとのことだったが。

 「日本企業の海外進出を支援していくのはもちろん、海外企業の日本市場進出も支援していきたい。当社はリテール事業の展開を始めたが、こうしたプロダクトやサービスを拡大してくための一つの切り口だと考えている。システムを裏側で支えられる仕組みを作りながら、クロスボーダー展開を支援していく。まずは中国、韓国や東南アジアから展開したい」

 ――ハミィのECシステムからスタートしたネクストエンジンが、同社から切り離されることにリスクはないのか。

 「契約社数が2~3000社の頃は、EC事業として先行しているハミィの運用がシステム開発に影響を与えており、なおかつハミィの主業であるコマースに影響を与えないシステム構成を作ることで伸びてきた。ただ、5000社を超えた頃からは、どこか1社ではなく、汎用的なシステムを作らなければいけなくなった。むしろ、関係が近すぎるとシステムに影響を与えてしまうので、1ユーザーとして利用してもらう方が、システムの汎用性や利便性は上がると思う」

カテゴリ一覧