〈両社の紛争、解決せず〉 スクロール「捜査進展してない」 大都「警察からの連絡一切ない」

2025年11月20日 15:43

2025年11月20日 15:43

 DIYツールのネット販売を手掛ける大都は年内にも、ホームセンター大手・カインズの完全子会社となる見通しだ(2013号で既報)。


1120154153_691eb83125046.jpg 大都はDIYツールを販売する通販サイト「DIY FACTORY」を2002年から運営。創業は1937年でもともとは工具卸業だったが、2011年に3代目社長となった山田岳人氏によりECへと進出して以降、順調に売り上げを拡大。カインズとは16年に業務提携し17年にはカインズが大都の株式の10%強を保有して資本業務提携を締結していた。

 ただ、大都には昨年来抱えている問題がある。スクロールは昨年11月1日、子会社のスクロールロジスティクスとスクロール360が、大都と同社役員3名、スクロールロジスティクス元社員2名を刑事告訴すると発表。両子会社の営業秘密の持ち出しや従業員の引き抜きを行ったことなどを理由としている。

 刑事告訴から約1年が経過しているが、スクロールでは「警察の捜査がまだ進展していない」(鶴見知久社長)としており、問題は解決していないという認識だ。買収する側のカインズでは、本紙取材に対し「個別の紛争、またはその恐れに対する見解は、回答を差し控える」(広報部)とコメントしている。

 大都では昨年11月、スクロールの発表を受けてすぐにプレスリリースを公表。「犯罪行為を行った事実はなく、また、ビジネス倫理上問題のある点についてはすでに繰り返し謝罪を行っている」と釈明した。

 あらためての本紙取材に対し、同社では「(昨年11月時点と)紛争に関する見解は変わっていない」(広報担当)とした上で、「本件について、現時点までに当社に対して捜査機関からの連絡等は一切ない」と説明している。

 スクロール側は警察の捜査は続いているとの認識だ。現在の状況が株式譲渡の障害になる恐れはないか。大都では「株式譲渡に関しても、法令にのっとり、関係各所と適切に連携のうえ、慎重に進めている」(同)とする。

 同社では一昨年7月、楽天グループのコーポレートベンチャーキャピタルである楽天キャピタルの出資を受けており、近い将来の上場を視野に入れていたとみられるが、カインズのグループに入ることを決断したようだ。上場ではなくカインズグループに入ったことについて、スクロールの刑事告発が影響した面はあるのか。これについては「個別の交渉過程や意思決定の詳細に関する情報は開示しておらず、回答を差し控えたい」(同)としている。

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