キャスターの若月部長に聞く昨今のECトレンドは 「あらゆるモール活用が必須」、日本企業はTTSに苦戦か

2025年11月20日 15:46

2025年11月20日 15:46

 人材事業などを展開するキャスターは昨年、アマゾン専門のアカウント運用代行とコンサルティングのサービスを提供開始した。同事業のフロントに立つのは、アマゾン販売歴17年、累計支援社数600社を誇る若月菫ECコンサルティング事業部長。若月部長に、昨今のEC市場におけるトレンドやアマゾンにおける販売施策について話を聞いた。


1120154629_691eb945e2130.jpg ――キャスターのECコンサルの強みは何か。

 「ツールを入れても取れないようなデータ収集を行える専門人材がそろっているため、クライアントに対するサポートが手厚い」

 ――支援実績は。

 「サービス開始から1年近くで50~70社ほど支援した。とある食品雑貨企業の支援では、7カ月で約1300万円を売り上げた。また、とある美容家電企業では、商品の販売開始から2~3カ月で、約400万円を売り上げた事例もある」

 ――昨今のEC市場についてどのように考えるか。

 「アマゾンだけで良かった時代はもう終わった。すべてのプラットフォームを活用したトータルマーケティングが必要な時代になっていると感じる」

 ――アマゾンマーケットプレイスにおける今年のトレンドは。

 「日用品配送サービスの『エクスプレスマート』やふるさと納税を始め、出面が増えた印象だ。ふるさと納税では、これまで自治体経由の出品が必要だったが、『アマゾンふるさとツナグ』プログラムが始まったことで、個別セラーが出品申請できるようになり、出品ハードルが下がった」

 ――アマゾンふるさと納税の強みは。

 「通常のアマゾンの手数料体系で運用できるのは大きい。また、事業者はFBA倉庫を活用できるため、配送がひっ迫するリスクを回避することができる」

 ――アマゾンふるさと納税の勝機は。

 「ふるさと納税におけるレビューは、既存の商品レビュー数を引き継ぐので、日ごろ買っているものがふるさと納税できるようになれば、クイックユーザーたちが活用するようになるだろう」

 「また、季節性商材が通年商品として売れるようになったことは大きい。果物類などは売り上げを伸ばすのではないか」

 ――アマゾンにおける売り上げを高めるのに重要な施策は。

 「いわゆる『カートを取る』のはもちろん重要だが、そもそも売れる市場があるかどうかを確認しなければいけない。商品自体に特徴があって、『名刺入れ 牛革』といった端的なキーワードで検索できることも重要だ。アマゾンにおける売り上げの7割は検索流入と言われているので、いかに上位検索を獲得できるかがカギだ。当社のクライアントに対しては、どの程度上位検索を獲得すべきか、年間計画で決定する。早いケースでは販売開始から1カ月ほどで、1ページ目の10位以内に入るような広告戦略を打つ」

 ――アマゾンにおけるレギュレーション変更について。

 「今年一番大きかったのは商品レビュー提供プログラム『アマゾンバイン』の仕様変更だ。これまでは個別のASIN(アマゾン内の識別番号)ごとに付いているバインのレビューについて、どれか1つを「親ASIN」とすれば、そこにバインのレビューをすべて集めることができた。今回の仕様変更で、複数のASINを統合した場合のレビュー数は、最も高いレビュー区分の最大レビュー数だけが保持されるようになった。これにより、カラーやサイズ違いなどのASINを後から親ASINに統合しても、バインのレビュー数は増えないわけだ」

 「また、今年は『Rufus(ルーファス)』や『COSMO(コスモ)』といった、アマゾン内のAIアルゴリズムが大きく発展した。その人が過去に調べた商品の傾向や購買履歴を踏まえて、おすすめ商品を提案するレコメンド精度が向上した。検索ロジックが大きく変わってきているので、当社ではタイトルや箇条書き文面などSEO周りのABテストを月1くらいの頻度で行い、常に変更を加えている」

 ――モール関連では、ティックトックショップも話題になった。

 「当社でもティックトックショップのオンボーディング支援を開始した。開始する際にネックとなりやすいのが、独自の配送システムと、アカウント開設に伴う手続きの煩雑さだ。事業者はアカウント開設時に法務局を訪れ、登記簿謄本を取得する必要がある。その後も、個配対応の必要性や、返品率の高さが課題となりがちだ」

 「当社はそうした課題を一括でカバーするため、香港にあるAfterShipという企業と連携しサポートを行っている。アマゾンやショッピファイの商品データを引き継いで出品登録ができるため、最大2週間程度でアカウント開設から出品まで完了する。配送ロジックも既存のものを活用するため、FBA倉庫からの出荷であれば即時に対応できる」

 ――日本のティックトックショップの現状は。

 「大きく売り上げているのは中国のショップがほとんど。日本は大企業でも足踏みしているところが多い」

 ――なぜ日本の企業は苦戦しているのか。

 「ライブコマースへの知見が不足しているのと、成功事例の情報キャッチが弱い。ライブコマースはクリエイティブとライバーの掛け算だが、売れる確証がないのに、膨大なクリエイティブ費をかけられる企業は少ない。また、インフルエンサーに別途キャスティング費用を支払う企業が多いので、余計〝ライブコマースでは利益が出ない〟という感覚の醸成に繋がっている。1000万円かけた配信で500万円しか売れなかったら失敗だと思ってしまいがちだが、ティックトックショップはアーカイブも残る。1年間の売り上げではどうかという視点を持たずに、短期的な目で見てしまうと難しい」

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