最高を目指し最悪に備えよ
飲食店経営の外食文化研究所がクーポンの共同購入サイト「グルーポン」を通じクーポンとして販売した「バードカフェ謹製おせち」の配送遅れ等の問題が波紋を広げている。新興のマーケティング手法を活用した販売手法で発生した不祥事、実際に届いた商品画像のインパクトなどもあり、この問題は各メディアで大きく報じられているようだ。中には、クーポン共同購入サイト自体を問題視する声もあるが、根本的には同サービスを利用する事業者側の危機管理に帰結する問題だろう。
問題となったおせちは横浜の人気レストランの食材を使用したもので、通常価格2万1000円の商品を1万500円の500セット限定のクーポンとして販売していた。だが、クーポン購入者から配送予定日の12月31日になっても商品が届かない、サイトに掲載されていた見本と実際の商品の内容が異なるとの苦情がグルーポン・ジャパンに殺到。グルーポン側が事実関係を確認し、1月1日付で謝罪文を公表する一方、外食文化研究所の社長が辞任する事態となった。
外食文化研究所が公表した謝罪文によると、商品500セット分の調理と詰め込み作業に予想以上の時間が掛かったため、納品の遅れや見本画像とは異なる商品の発送が起きたとしている。もともとおせち料理は、盛り付ける品数が多く、納期の厳守が求められる商材であるため、通販でも取り扱いが難しいとされており、事前の周到な準備が必要になる。その意味では、外食文化研究所の見込みが甘かったと言わざるを得まい。
さらに問題なのは、初動の判断ミスだろう。これについては外食文化研究所でも、キャンセルを依頼すべきところを、無理に対応したことが今回の事態を招いた要因としているが、そもそも顧客の期待を裏切るような商品を提供すること自体、商売の基本から外れるものだ。
また、この行為は法的な問題にも波及し、消費者庁が「景品表示法」違反の疑いがあるとして、同社に事情聴取を行う方針を固めたとされている。これについては表示主体を外食文化研究所と見るか、グルーポンと見るかといった解釈の問題もはらむが、少なくとも外食文化研究所側がネットを介し商品を販売する上で法的な意識を強く持っていれば、見本と異なる内容の商品を提供することのリスクは判断できただろう。
無論、グルーポンも、外食文化研究所の商品管理体制等を見極められずクーポン購入者を失望させる結果を招いたことは反省すべきで、顧客が安心してクーポン共同購入を利用できる環境を整えなければならない。
最高の商品を目指し、最悪の事態に備える。これが消費者を相手にするビジネスの鉄則だろう。企業として、より良い商品の提供に注力するのは当然のことだが、常に最悪の事態を想定していれば、万が一トラブルが起きても、初動段階で判断を誤る可能性は低くなる。今回の外食文化研究所の対応を見る限り、この両方の視点が欠落した結果、必要以上に問題を大きくした。同じ轍を踏まぬよう、通販各社も自らが最高の商品を目指し、最悪の事態に備えているか、自問してみる必要があろう。
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