ユーキャンは昨年7月、通販部門(ライフ&カルチャー事業本部)と通信教育部門(教育事業本部)のトップを入れ替える人事を実施、経営体制の強化を図り、次の成長ステージに向けて再始動した。「通信教育産業から人づくり産業に進化する必要がある」と語る手島篤志執行役員に、通教の現状と中期ビジョンなどを聞いた。
——長らく「ココチモ」などの通販ブランドを育ててきた。通教部門に来られての率直な感想は。
「入社したときは通信教育がメインだったし、私自身も4〜5年は通教に携わっていたので、今回、通教部門を任されたことは、ビックリはしたが初めての環境に置かれたわけではない。一方で、30年前とはデジタル化も含めた通教の勉強の仕方や事業環境もだいぶ変わった。通教と通販の責任者が入れ替わり、立場が変わることでお互いに違う視点で事業を見ることが会社全体としてプラスになると思う」
——通教部門に4つあるそれぞれの事業の特徴は。
「『資格キャリア』と『実用カルチャー』の2つの事業部は、従来からの通教部門をカテゴリー別に分けた。当社が創業してから70年以上になり、その根幹の事業なので、歴史もノウハウもある。カテゴリー別に分けることで、講座開発や営業戦略にそれぞれの特色をより出すことができると考えている」
——実用カルチャーと資格キャリア事業では顧客年齢層が異なるのか。
「両事業で重なる部分もあるが、実用カルチャーの方は趣味ものが多いのでシニアが軸になり、資格キャリアは一般的に現役世代と言われる20代後半〜60代前半が多い」
——3つ目の事業は。
「『法人ソリューション』の事業だ。法人向けのビジネススキル講座だったり、自己啓発の講座だったりを企業に対して営業を行い、導入してもらう。toC向けの講座を企業の従業員の方に受講してもらうケースもあるが、新たに『ビジトレホーダイ』というサブスクリプション型のサービスを昨年4月から展開している。契約する企業の従業員が好きなタイミングで対象講座をeラーニングで学ぶことができる。人事担当者が必要な講座でカリキュラムを作って従業員に受けさせるといった使い方もある」
——大手企業は新人研修なども独自のカリキュラムを持っていると思うが、大手のニーズもあるのか。
「大手企業の教育体制はしっかりしているし、すでに競合の仕組みが入っていることもある。しかし、実態は、形として教育体制は整ってはいるものの、社員があまり使用していないケースもあるし、既存の研修制度がマッチしていない場合もあり、悩みを抱えている企業も多い。当社では企業のニーズに合わせて講座を新しく開発することもできる強みを活かしていきたい」
——4つ目の事業は。
「『学び出版』の事業は、仕事や暮らしに役立つ資格、趣味、実用書、ビジネス書などの市販書籍を出版している。資格に関連するものも多いが、最近では塗り絵など趣味系の出版物が主流になるくらいの人気だ」
——4月の組織変更で変わった部分は。
「教育事業をカテゴリーで分けたこともそうだが、それとともに、統括マネージャー制を敷くことで、各事業の独立採算性を強めた。さらに、統括マネージャーについても、通販・通教間で一部入れ替えを行い、これまで通販部門で共に働いてきた部員が教育事業に携わることになった」
——昔の通教と比べての事業環境は。
「昔、通教に携わっていたときと比べ、通教のチャネルがeラーニングや無料で視聴できるユーチューブもあって多様化しているし、細分化もしている。さまざまなチャネルへの対応は必要だが、eラーニングだけでなく、テキストを持つハイブリッドな展開や、受講生が挫折しないように伴走する体制など、ユーキャンならではの良さを大事にしたい」
「『通信教育のユーキャン』『生涯学習のユーキャン』としての認知が少し下がっていると感じる。年始のテレビCMもあって、ユーキャンの名前は知っていても、いまは学習法の選択肢も多く、残念ながら何かを学び始めようと思ったときに迷わずにユーキャンを選んでもらえる環境ではない」
——この1年間で取り組んできたことは。
「まずは業務の棚卸というか、各事業、各講座が経費も含めて適正かどうかをチェックしてきた。また、通販部門と比べて通教はスタッフが多いので、改めて個人間、部門間の情報連携や戦略共有に力を注いだ。指導と開発、営業の各部門が一体となって目標に向かって進めるようになってきている」
——講座の数はどうしていくのか。
「いま約140講座を展開しているが、事業としての持続可能性を高めるためにも、ある程度のスリム化、適正化は必要になる。新しい講座を開発したら、その分、受講人数の少ない講座をやめる必要もあって、それは各事業部の採算性を強めたことで、それぞれの統括マネージャーがより真剣に考えている」
——AI関連の講座などは。
「『ChatGPT講座』などAI関連の講座はあるが、今後、事務系・デスクワークの仕事がAIに取って代わられると、技能職・技術職など手に職のある人たちが生き残るとも言われているので、『第二種電気工事士』とか『危険物取扱者』といった以前からある講座も含めて、技能職・技術職にフォーカスした講座開発をAIの逆張りとして強化したい」
——優先的に取り組んでいることは。
「通販時代に懇意にさせて頂いたメーカーさんなどに法人ソリューションサービスの営業をさせてもらったりしている。法人ソリューションでは、toC向けでは展開していない講座のニーズを掘り起こしたり、サブスクの『ビジトレホーダイ』ではeラーニングのため素早く低予算で講座を制作できる強みを活かして、企業や自治体などをターゲットにカスタマーハラスメント対策や、管理職向け面談マニュアル、年上部下との付き合い方講座など実用性のある講座を新たに提供したりしている」
——自治体などにはユーキャンのブラン力が武器になりそうだ。
「多少の利点はあると思う。自治体案件などは一つの導入事例が次につながると思うので、今後、戦略的に取り組んでいきたい。また、人事・HR向けの展示会にも出展しており、そこから商談につながることもある」
——テレビなどのプロモーションについては。
「プロモーションの費用は適正化を図っている最中で、今年は著名人を起用した『チャレンジユーキャン』のCMも実施しなかった。従来よりも効率の良いプロモーションのあり方を模索している。通信教育は業界自体が厳しいので、身の丈に合ったお金の使い方をしなければいけない。ウェブ広告はコスト高が顕著だが、オンライン経由のオーダーが圧倒的に多いので、そこにも対応していく必要がある」
——「ざんねんないきもの検定」など、ユニークな検定も展開している。
「子どもに人気の『ざんねんないきもの事典』を検定にしたもので、受験者には名前入りの認定書やオリジナルの限定グッズも用意している。デビューしたばかりの検定で、これから広めていきたい。ほかにも、『仮面ライダー検定』など著名IPとコラボしたオリジナルの検定を実施しており、収益性も重視しながら育てていきたい」
——中期的なビジョンについては。
「toC向けやtoBの法人向けにしても、従来の通信教育産業から進化させて『人づくり産業』に向かっていかないといけない。単に講座を受講してもらうだけでなく、そこから次のステージに上がるための手助けをして、就職やキャリアアップなど『人をつくる産業』という認識を当社のスタッフ全員が持った上で、やるべきことを考えることが大事になる。あとは、長い歴史のある会社故に、いい意味でも悪い意味でも『こうあるべき』という固定観念が少なからず染みついているので、そうした固定観念を一旦取り払ってみる、自由な発想が必要だ」
ユーキャンは昨年7月、通販部門(ライフ&カルチャー事業本部)と通信教育部門(教育事業本部)のトップを入れ替える人事を実施、経営体制の強化を図り、次の成長ステージに向けて再始動した。「通信教育産業から人づくり産業に進化する必要がある」と語る手島篤志執行役員に、通教の現状と中期ビジョンなどを聞いた。
「入社したときは通信教育がメインだったし、私自身も4〜5年は通教に携わっていたので、今回、通教部門を任されたことは、ビックリはしたが初めての環境に置かれたわけではない。一方で、30年前とはデジタル化も含めた通教の勉強の仕方や事業環境もだいぶ変わった。通教と通販の責任者が入れ替わり、立場が変わることでお互いに違う視点で事業を見ることが会社全体としてプラスになると思う」
——通教部門に4つあるそれぞれの事業の特徴は。
「『資格キャリア』と『実用カルチャー』の2つの事業部は、従来からの通教部門をカテゴリー別に分けた。当社が創業してから70年以上になり、その根幹の事業なので、歴史もノウハウもある。カテゴリー別に分けることで、講座開発や営業戦略にそれぞれの特色をより出すことができると考えている」
——実用カルチャーと資格キャリア事業では顧客年齢層が異なるのか。
「両事業で重なる部分もあるが、実用カルチャーの方は趣味ものが多いのでシニアが軸になり、資格キャリアは一般的に現役世代と言われる20代後半〜60代前半が多い」
——3つ目の事業は。
「『法人ソリューション』の事業だ。法人向けのビジネススキル講座だったり、自己啓発の講座だったりを企業に対して営業を行い、導入してもらう。toC向けの講座を企業の従業員の方に受講してもらうケースもあるが、新たに『ビジトレホーダイ』というサブスクリプション型のサービスを昨年4月から展開している。契約する企業の従業員が好きなタイミングで対象講座をeラーニングで学ぶことができる。人事担当者が必要な講座でカリキュラムを作って従業員に受けさせるといった使い方もある」
——大手企業は新人研修なども独自のカリキュラムを持っていると思うが、大手のニーズもあるのか。
「大手企業の教育体制はしっかりしているし、すでに競合の仕組みが入っていることもある。しかし、実態は、形として教育体制は整ってはいるものの、社員があまり使用していないケースもあるし、既存の研修制度がマッチしていない場合もあり、悩みを抱えている企業も多い。当社では企業のニーズに合わせて講座を新しく開発することもできる強みを活かしていきたい」
——4つ目の事業は。
「『学び出版』の事業は、仕事や暮らしに役立つ資格、趣味、実用書、ビジネス書などの市販書籍を出版している。資格に関連するものも多いが、最近では塗り絵など趣味系の出版物が主流になるくらいの人気だ」
——4月の組織変更で変わった部分は。
「教育事業をカテゴリーで分けたこともそうだが、それとともに、統括マネージャー制を敷くことで、各事業の独立採算性を強めた。さらに、統括マネージャーについても、通販・通教間で一部入れ替えを行い、これまで通販部門で共に働いてきた部員が教育事業に携わることになった」
——昔の通教と比べての事業環境は。
「昔、通教に携わっていたときと比べ、通教のチャネルがeラーニングや無料で視聴できるユーチューブもあって多様化しているし、細分化もしている。さまざまなチャネルへの対応は必要だが、eラーニングだけでなく、テキストを持つハイブリッドな展開や、受講生が挫折しないように伴走する体制など、ユーキャンならではの良さを大事にしたい」
「『通信教育のユーキャン』『生涯学習のユーキャン』としての認知が少し下がっていると感じる。年始のテレビCMもあって、ユーキャンの名前は知っていても、いまは学習法の選択肢も多く、残念ながら何かを学び始めようと思ったときに迷わずにユーキャンを選んでもらえる環境ではない」
——この1年間で取り組んできたことは。
「まずは業務の棚卸というか、各事業、各講座が経費も含めて適正かどうかをチェックしてきた。また、通販部門と比べて通教はスタッフが多いので、改めて個人間、部門間の情報連携や戦略共有に力を注いだ。指導と開発、営業の各部門が一体となって目標に向かって進めるようになってきている」
——講座の数はどうしていくのか。
「いま約140講座を展開しているが、事業としての持続可能性を高めるためにも、ある程度のスリム化、適正化は必要になる。新しい講座を開発したら、その分、受講人数の少ない講座をやめる必要もあって、それは各事業部の採算性を強めたことで、それぞれの統括マネージャーがより真剣に考えている」
——AI関連の講座などは。
「『ChatGPT講座』などAI関連の講座はあるが、今後、事務系・デスクワークの仕事がAIに取って代わられると、技能職・技術職など手に職のある人たちが生き残るとも言われているので、『第二種電気工事士』とか『危険物取扱者』といった以前からある講座も含めて、技能職・技術職にフォーカスした講座開発をAIの逆張りとして強化したい」
——優先的に取り組んでいることは。
「通販時代に懇意にさせて頂いたメーカーさんなどに法人ソリューションサービスの営業をさせてもらったりしている。法人ソリューションでは、toC向けでは展開していない講座のニーズを掘り起こしたり、サブスクの『ビジトレホーダイ』ではeラーニングのため素早く低予算で講座を制作できる強みを活かして、企業や自治体などをターゲットにカスタマーハラスメント対策や、管理職向け面談マニュアル、年上部下との付き合い方講座など実用性のある講座を新たに提供したりしている」
——自治体などにはユーキャンのブラン力が武器になりそうだ。
「多少の利点はあると思う。自治体案件などは一つの導入事例が次につながると思うので、今後、戦略的に取り組んでいきたい。また、人事・HR向けの展示会にも出展しており、そこから商談につながることもある」
——テレビなどのプロモーションについては。
「プロモーションの費用は適正化を図っている最中で、今年は著名人を起用した『チャレンジユーキャン』のCMも実施しなかった。従来よりも効率の良いプロモーションのあり方を模索している。通信教育は業界自体が厳しいので、身の丈に合ったお金の使い方をしなければいけない。ウェブ広告はコスト高が顕著だが、オンライン経由のオーダーが圧倒的に多いので、そこにも対応していく必要がある」
——「ざんねんないきもの検定」など、ユニークな検定も展開している。
「子どもに人気の『ざんねんないきもの事典』を検定にしたもので、受験者には名前入りの認定書やオリジナルの限定グッズも用意している。デビューしたばかりの検定で、これから広めていきたい。ほかにも、『仮面ライダー検定』など著名IPとコラボしたオリジナルの検定を実施しており、収益性も重視しながら育てていきたい」
——中期的なビジョンについては。
「toC向けやtoBの法人向けにしても、従来の通信教育産業から進化させて『人づくり産業』に向かっていかないといけない。単に講座を受講してもらうだけでなく、そこから次のステージに上がるための手助けをして、就職やキャリアアップなど『人をつくる産業』という認識を当社のスタッフ全員が持った上で、やるべきことを考えることが大事になる。あとは、長い歴史のある会社故に、いい意味でも悪い意味でも『こうあるべき』という固定観念が少なからず染みついているので、そうした固定観念を一旦取り払ってみる、自由な発想が必要だ」