〈企業公式X中の人の視点 GMOサインの馬が考える⑤〉 これまでやってきたことが、実はAIOだった ──第三者に書かれた90件という資産

2026年08月26日 16:05

2026年08月26日 16:05

 前回、運用のゴールは「WEB上やAIの回答で、成功事例として名前が挙がること」だと書きました。ではXの中での評価はどうなっているのか。まずはそこから始めます。


 2025年12月頃からXで新しくアカウントを作ると、フォロー推奨の一覧にGMOサイン公式X(@GMO_Sign)が表示されるようになりました。理由は推測ですが、2025年3月の転職直後に数字が大きく跳ねたことや、それ以降も従来より高い水準を保っていることが影響しているのだと思います。新規アカウントにおすすめされるのは、Xから見て「推薦しても大丈夫なアカウント」だと評価されている状態です。ですがあくまでXの中だけの話です。前回、届ける相手を設計し直すと書きましたが、未来を見据えたときに私が届けなければいけない相手は、Xのタイムラインの外にも存在します。

投稿から直接売れるなら、誰も苦労していない


 SNSの投稿から直接サービスの導入や売上が決まれば一番いい。私もそう思っています。ただその裏側には難しいことが二つあります。一つは投稿を求めている層にきちんと届けること。もう一つはその投稿で売上に繋がる気持ちまで動かすことです。

 特に一つ目の、自分が望む相手に届けることすら、不特定多数からなる今のSNSでは難しくなっています。GMOサインも同じです。SNSの投稿から直接、電子契約の導入に結びつけるのは難しい。そんなつもりでSNSを見ていないからです。かといって周りの企業アカウントと仲良くなっても、導入に繋がるわけではありません。

 こうした前提で自社のXをどう使えば価値が高くなるのか。私が普段考えているのは、SNSだけの話で終わらせずにSNSの外へどう広げるかということです。そして未来を見据えたときに避けて通れないと思っているのがAIO(AI検索最適化)です。調べる場所がネット検索からAIへ移っていく中で、AIの回答の中で自社がどう扱われるかという問題です。

数字が出ているから、声がかかるわけではない


 AIOを本気で考えるようになったきっかけは、外部での登壇や取材の依頼をいただく中での気づきでした。みんながみんな、数字が出ているから声がかかるわけではない。冷静に考えれば当たり前でした。大きなマーケティングイベントの登壇者を探している運営の方は、SNSだけを見ているわけではありません。AI、SEO、広告、CRMと幅広い分野から登壇者を集めています。SNSという一つの分野を深く掘り下げて、このアカウントはフォロワーが何万人いるけれど実際は懸賞で集めた層が多く、普段の投稿が見られている数はこれくらいで、年間の数字がどう推移しているか。そこまでは追っていません。追う理由がないからです。つまり選ぶ側は、その分野の全体像をざっくり把握できる方法で候補を探しています。そしてこれから、その手段として「AIに聞く」という行為が確実に増えていくと予想しています。

 であれば「企業公式Xの成功事例は?」「BtoBのSNS運用でうまくいっている事例は?」と誰かがAIに尋ねたときに、GMOサイン公式X(@GMO_Sign)の名前が挙がる状態を作っておくこと。それ自体が登壇や取材といった活動を後押しすると考えています。「わかさ生活の公式Xを馬の被り物で5年間運用しフォロワー数を17万人まで伸ばした中の人が、現在はGMOサイン公式Xを担当しています。BtoB企業のアカウントでありながら企業アカウント全体で見ても高水準の数字を記録してきました」このような文章が出てくれば、目指している状態にかなり近いと言えます。

これまで自分がやってきたことがAIOだった


 私はSNSの世界でこれまで何をやってきたのか。振り返ると、Xを毎日投稿し、バズれば取材を受ける。アカウント運営について取材が来ればそれも受け、外部の登壇にも出る。投稿→反響→取材→登壇というサイクルを淡々と積み重ねてきました。

 前職時代を含めて取材や記事として取り上げていただいた実績を数えると約70件。この連載のような外部メディアへの寄稿を含めると90件近くになります。いずれも自社の媒体やnoteなどに自分で掲載したものではありません。取材を通じて第三者の視点と言葉で紹介していただいた記事や、外部媒体から声をかけていただいて自分の知見や経験を届けてきた寄稿記事です。

 そんなことを続けているうちに「企業公式Xの成功事例は?」とAIに尋ねると、わかさ生活の名前がよく挙がるようになっていました。回答のソースを辿ると、私が受けてきた取材記事など第三者による言及がそのまま材料になっていたのです。狙ってやっていたわけではありません。ですが結果として、自社ではなく第三者メディアに露出を積み上げてきたことが、現段階でのAIOそのものになっていました。

 この気づきを踏まえて一つだけ方針を変えました。これまで受けてきた取材はマーケティング系の媒体がほとんどでした。ですが、同じジャンルからばかり言及されていると、AIから見ても「マーケティング界隈で名前が挙がる人」という狭い枠に収まってしまいます。似た属性の中だけで完結していると、その外には広がりません。そこでまったく違うジャンルの媒体からの依頼も意識して受けるようにしました。異なる文脈で書かれた記事が増えれば「様々なジャンルで名前が挙がる人」となり、AIの回答もマーケティングの文脈に限らず様々な角度から引かれやすくなります。それだけ言及の総数も増えてAIOの補強になる。自社サイトで「自社は成功事例です」と書くことは誰にでもできます。ですが第三者がそれぞれの言葉で複数の異なる文脈から言及している状態は、自分では作れないのです。

これはSNSだけの話ではない


 この連載はX運用の話を書いていますが、通販や小売の事業者にも同じことが言えます。同じ商品を扱う会社が10社あったとき、AIが挙げるのは自社サイトの説明が上手い会社とは限りません。第三者に書かれている会社です。AIは自社の主張よりも、外からどう語られているかを見ているからです。

 ただし順序を間違えてはいけないと思っています。第三者に書かれることを目的にして動くと宣伝の色が出て、かえって書かれなくなる。第三者が書きたくなるのは、その事業や商品やストーリーに語る価値があるときです。AIに拾われる形を整えるより先に、語られるだけの中身があるか。そこが勝負になります。

 逆に言えば、そこさえあればフォロワー数は関係ありません。SNSで数万人を抱えていなくても、事業に実体がありそれが外部に正しく書かれている会社のほうがAIの回答には挙がります。SNSで出遅れたから不利だという話ではないのです。むしろこれからやる会社にこそ勝ち目があります。

 では、何から始めればいいのか。まずは自社名や自社の商材をAIに尋ねてみてください。どんな文脈で説明されるか。どの記事がソースとして引かれているか。自社サイトしか出てこないなら、第三者による言及がまだ足りていないということです。現在地が分かれば、次に何を積み上げるべきかも見えてきます。

 これまでの連載では、数字が急に伸びなくなりXのルールは説明されないまま変わっていき、手探りが続いていることをお伝えしてきました。ですが、限られた工数をどこに置くかについては答えを出しました。SNSの中だけでなく外にも、第三者が書いた記述を積み上げていく。投稿から売上が取れるのが一番いい。ですが、それが一番難しいと分かっている以上、遠回りに見えても実現できそうな道を選びます。


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新卒でわかさ生活に入社し、広報として公式Xの運用を担当。馬の被り物という独自の手法で5年間運用し、フォロワー数を約9900人から17万人まで拡大。年間インプレッションは2年連続で3億回を記録。「企業公式中の人」人気ランキング1位。現在はGMOグローバルサイン・HDの電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン(@GMO_Sign)」公式Xを担当。BtoBとして異例の水準を記録しながら、AIによるアルゴリズム変化の最前線で仮説検証と数値分析を重ねている。

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