国センは役割を見つめ直せ

2011年02月03日 18:56

2011年02月03日 18:56

 消費者の安全を守る、というお題目を掲げて、長らく活動し続けてきた国民生活センター(国セン)が今、窮地に立たされている。消費者庁からその存在意義について疑問視されはじめているためだ。消費者庁は昨年12月に「国民生活センターのあり方の見直しに係るタスクフォース」の第1回会合を開催。その中で国センの役割や存在意義について再検討をし始めた。現状のままの国センでは消費者の役に立たないことばかりか、事業者の足を引っ張るだけの無用の長物でしかない。存在意義に疑問を持つのが遅すぎるとも言えなくないが、とりあえずはしっかりと国センを見つめ直し、抜本的な改革を望みたい。

 これまでも特に国センが行う「商品テスト」の妥当性については、通販事業者を含む小売企業やメーカーなどから疑問の声が挙がっていた。商品テストを行う以上、結果はだいたいネガティブなものであり、行政機関である国センが商品テストを行えば、それは一般紙などで広く報道され、当該商品の信用や売れ行きに大きな影を落とす。本当に悪質で消費者を騙したり、健康を害するような商品は無論、テストをすべきであろうし、その結果を発表して、販売者や製造者は相応に糾弾されるべきであろう。

 ただし、問題なのは、テストをする商品の選定方法や調査方法があまりに不条理な場合が多すぎるということだ。ある商品をテストするか否かは消費者センターに寄せられた相談や苦情の件数から判断することが多いようだが、案件によっては特別、件数が多くない場合でもテストに踏み切ることがある。また、疑問を持たざるを得ないのがテストする商品が非常に通販に偏っていることだ。これも本当に通販商品に問題があるのであれば話は分かるが、どうも単に通販が調査しやすいという安易な考えが起因しているように映っても仕方ないことが多い。

 例えば、国センは昨年4月、家庭の浴槽に入れることで「湯が温泉となる」と標榜する石やセラミックボールの商品テストを実施して、結果を公表したが、当該商品に関する相談者の8割が訪問販売で購入しているにもかかわらず、国センは商品テストの際、「楽天市場」などの仮想モールでネット販売されている10銘柄を対象としている。実際に相談件数が多い商品を調査しなければ意味がないにもかかわらず、そうしないのは単に労を惜しんで、自らの存在をアピールするための「テストのためのテスト」をしているだけと見られても仕方ないだろう。

 消費者庁は1月28日には「国民生活センターのあり方の見直しに係るタスクフォース」の第2回会合を開催。ここでも商品テストの問題について、消費者庁側が国センに「できることを自前の施設でやっているが中途半端ではないか」と追及するなど突っ込んだ話し合いがもたれたようだ。もちろん、消費者トラブルのセンサーとして役割を果たす機関は必要だが、何も国センに執着する必要はないはずだ。消費者庁はもちろん、国セン自身もまた、自らの存在価値や役割を真剣に見つめ直す時期にさしかかっている。


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