仕分け人は薬通販規制の矛盾突け

2011年02月10日 10:21

2011年02月10日 10:21

内閣府行政刷新会議の規制・制度改革に関する分科会(分科会)が「第2次報告書」案をとりまとめ、約250の規制改革提案項目の中に、通販で扱える一般用医薬品をビタミン剤などの第3類医薬品に制限する医薬品通販規制問題を盛り込んだ。各規制改革項目を所管する省庁と協議を行い、2月下旬に開催される行政刷新会議で「規制仕分け」の対象項目を決める段取りだが、対面の原則を盾にネット販売を危険視するこれまでの厚生労働省の対応を見る限り、医薬品通販規制の問題が「規制仕分け」の場に持ち込まれる可能性は高そうだ。

 分科会は報告書案の中で医薬品ネット販売規制について、特に問題のなかった通販・ネット販売の規制は、消費者の利便性を損ね、事業者間の公平性を阻害しているほか、対面販売の現場でも必要な情報提供が徹底されていないなど制度が定着していないと指摘。規制改革案として、販売履歴の管理や購入量の制限など安全性を確保しながらネット等で医薬品を販売できるルールを制定すべきとしている。これらは医薬品を扱うネット販売事業者などがかねてから主張してきたことで、正当な意見と言えるだろう。

 医薬品通販規制については、これまでにもネット販売事業者や厚労省担当者、規制賛成派の薬業団体関係者などを交えた公開討論などが行われているが、マスメディアや国民の関心が高い「規制仕分け」の場で議論されることのインパクトは強いと言える。分科会事務局側でも、過去に購買履歴のある顧客などへ暫定的に第2類医薬品のネット販売等が行える経過措置が今年5月に期限切れになることを踏まえ、厚労省側に規制緩和を強く求めていく構えを見せている。国民の生活に直結する問題という点からも、医薬品ネット販売規制の問題は「規制仕分け」の目玉になるはずだ。

 厚労省側では、対面でなければ副作用リスクを伴う医薬品の販売で安全性を担保できないという立場で医薬品通販を規制したわけだが、実際には規制根拠が曖昧で、対面で情報提供が徹底されていないという実態もある。また、医薬品通販規制を巡る一連の議論では、確信犯的な悪質事業者と医薬品販売免許を持つ薬局・薬店の混同など様々な矛盾点があり、いたずらにネットを危険視するだけで、医薬品ネット販売事業者が行っている安全性確保策が検証された形跡さえないのが実情だ。

 検討の過程から実際の運用に至るまで問題を抱えたまま、消費者の利便性を損ね、医薬品通販を行う事業者の経営に打撃を与えるような規制は早急に見直す必要があろう。

 仮に、医薬品通販規制が「規制仕分け」の対象項目となった場合、より多くのマスコミ、国民が注目する仕分け作業の場で厚労省がこうした矛盾をはらんだままの医薬品ネット販売規制を無理に正当化しようとすれば、その反響は大きなものになるはず。「規制仕分け」自体、政府・民主党のパフォーマンスと見る向きもあるが、仕分け人には、医薬品通販規制の矛盾点を徹底的に追求し、国民的な議論につながる流れを作り出すことを求めたい。


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