早急に安全策の検討を始めよ
行政刷新会議は3月6、7日に開催した規制仕分けで、安全性確保策の設置を前提に医薬品通販の規制を見直し、その結論が出るまで、5月末で期限切れとなる経過措置を延長すべきとの評価結果をまとめた。これにより、6月以降、離島居住者や継続購入者が通販・ネット販売で第2類医薬品が購入できなくなるという最悪の事態が回避され、ネット販売継続の具体的な検討の芽も出てきそうだが、規制仕分けの議論の中で、平野達夫内閣府副大臣(規制改革担当)から、気になる発言が出された。ネット販売の台頭は、中小の薬局・薬店の経営に影響を及ぼすのではないかというものだ。
平野副大臣は、医薬品を購入する場合、個人的には安心感のある対面を選ぶとし、だからこそ対面での情報提供を徹底してもらいたいと厚労省側に指摘。その上で、全国の消費者を相手にするネット販売はツールとしてパワフル過ぎ、小さな地域を商圏とする薬局・薬店が経営していけなくなるのではないかとの見方を示した。
今回の規制仕分けでは、産業振興策的な角度から医薬品通販規制の是非を問うものではなく、薬局・薬店の経営に関する平野副大臣の発言は、いわば副次的なものとは言える。だが、敢えて産業振興策的な面から考えれば、ネット販売と薬局・薬店を対抗軸的に捉え、ネット販売の存在が薬局・薬店の経営の危機にさらすという見方は、一面的で早計だと言わざるを得まい。中小の薬局・薬店にとってもネットが新たな事業機会を創出するツールになり得るからだ。
実際、中小の薬局・薬店が地域に密着し、懇切丁寧な情報提供や相談応需で支持されているとするならば、その特長をネット販売でも活かせる場面は多分にある。それに消費者も自らの健康に関わる医薬品を購入するのなら、対応がより丁寧で安心して利用できるサイトを選ぶはずだ。評判の良いサイトであれば、くちコミが広がり、全国の消費者を相手にすることもできる。ネット販売が必ずしも薬局・薬店の経営を脅かすものでないことは明らかだろう。
規制仕分けの場で厚労省は、海外サイトで購入したダイエット食品に含まれた医薬品成分で健康被害が発生したなどの事例を挙げ、改めてネットでは安全性が確保できないと主張したが、そもそも議論の対象は「薬事法」で規定された一般用医薬品を正規の許可を得た薬局・薬店がネット販売を行う際、どうすれば安全性を確保できるかにある。この点については仕分け人も追及したが、"ネット性悪説"に立ち、悪戯にネットは危険と印象付けるようなことをするのは、中小の薬局・薬店にとっても、好ましいことではあるまい。
安全性確保策がしっかりと担保された多様な医薬品の購入手段を用意し、消費者が自らの状況に応じて選択できるようにすることは、厚労省が掲げる"安心で安全な薬を円滑に届ける"ことにもつながる。医薬品ネット販売の禁止で、医薬品の入手が困難になる消費者がいる現実、さらに今後の薬局・薬店の経営という産業政策的な視点から考えても、医薬品ネット販売の具体的な安全確保策の検討を早急に始めるべきだ。
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今回の規制仕分けでは、産業振興策的な角度から医薬品通販規制の是非を問うものではなく、薬局・薬店の経営に関する平野副大臣の発言は、いわば副次的なものとは言える。だが、敢えて産業振興策的な面から考えれば、ネット販売と薬局・薬店を対抗軸的に捉え、ネット販売の存在が薬局・薬店の経営の危機にさらすという見方は、一面的で早計だと言わざるを得まい。中小の薬局・薬店にとってもネットが新たな事業機会を創出するツールになり得るからだ。
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安全性確保策がしっかりと担保された多様な医薬品の購入手段を用意し、消費者が自らの状況に応じて選択できるようにすることは、厚労省が掲げる"安心で安全な薬を円滑に届ける"ことにもつながる。医薬品ネット販売の禁止で、医薬品の入手が困難になる消費者がいる現実、さらに今後の薬局・薬店の経営という産業政策的な視点から考えても、医薬品ネット販売の具体的な安全確保策の検討を早急に始めるべきだ。