震災復興に貢献し存在を示せ

2011年04月07日 10:51

2011年04月07日 10:51

東北地方太平洋沖地震の発生から約1カ月が経過した。未曾有の被害をもたらした今回の震災では、依然、多くの被災者が不自由な生活を余儀なくされ、福島第一原発の放射性物質漏れ事故の不安がつきまとうなど、状況が落ち着くまでには、まだ時間がかかりそうだ。すでに通販事業者も義援金の寄付や必要な物資の提供など、被災地の支援に取り組んでいるが、今後の被災地復興に向けた道筋を確実なものとしていくために、通販がどのように貢献していくかを考える必要もあろう。

 大規模な震災で、まず思い起こされるのは、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災だろう。この際にも建物の多くが倒壊し、多数の死者を出すなど、甚大な被害をもたらしたが、その中で、ろうそくの火を灯し営業を続けるコンビニエンスストアの姿が報じられた。自らも被災しながら、それでも営業を続けたのは、24時間年中無休の地域に密着した業態としての使命感にほかならない。物資の供給が滞り、満足な品ぞろえができる状態ではなかったが、この際に被災者のひとつの拠りどころとなり、存在感を印象付けた。

 今回の東北地方太平洋沖地震災では、予想をはるかに超える規模の津波が家屋を飲み込み多くの犠牲者を出すなど、阪神・淡路大震災とは状況は異なっている。その中で被災者の拠りどころとしての役割が期待されるのは、阪神・淡路大震災発生当時とは比べ物にならないほど進歩したインターネット等の通信技術だろう。実際、震災被害や計画停電の実施状況などの情報発信で既にネットが積極的に使われ、支援物資の供給でも、支援団体が被災者から必要としている物資を聞き取り、ネット上で公開する試みが行われている。被災地ではネットを利用できる環境がまだ整っていないようだが、まず被災者が必要とする情報や物資を得られるようにするためにも、水道や電気、ガスなどと同様にネット利用環境の復旧は急務だろう。

 また、今後の復興の過程を考えても、ネット利用環境の整備は重要になるのは明らかだ。経済産業省によると、時間の経過とともに被災者が必要とする物資が変わり、多岐にわたっており、支援物資の受け付けや避難所への割り振りを行う各県では、限られた人員の中で被災者のニーズに対応した物資の調達・供給が難しくなりつつあるという。

 今後、被災者に対する物資の供給を担うのは民間の事業者になっていくわけだが、箱物を必要とする有店舗の本格的な営業再開に相当の時間を要することが見込まれる。経産省でも次の復興のステップで被災者が必要な物資を入手できるようにするためには、通販やネット販売の活用が不可欠と見ているもようで、関係者によると一部のネット販売事業者に意見聴取を行っているという。つまり、行政側でもネット販売が果たす役割を重視しているわけだ。

 今回の震災の影響で経済の停滞も懸念されているが、被災地の復興や消費の活性化などの面で、通販が貢献できる場面は多分にある。通販各社も自らの特徴を活かし何ができるのかを考え、存在感を示していく必要があろう。

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