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三菱食品子会社のフーザ、売り上げ順調も中身に課題、コンテンツ拡充で対応へ

2013年 4月 4日 10:17

大手食品卸の三菱食品(本社・東京都大田区、井上彪社長)とデジタルガレージ(同・東京都渋谷区、林郁CEO)の合弁会社フーザ(同・東京都大田区、山本泰生社長)が運営する食品通販サイト「FOOZA(フーザ)」の開設から約2カ月が経過した。初年度で5億円を目指す同サイトの売り上げは、堅調な推移を辿っているようだが、山本社長は、「5億円の中身が重要」と強調。"幸せな食卓"のイメージを喚起するような提案での主婦層の取り込みに課題があると見る。

食への感度が高い40代主婦層に照準

 食品通販サイト「フーザ」の開設は、今年1月31日。食に関する情報・提案力や商品調達力を持つ三菱食品とネットマーケティングの知見を持つデジタルガレージ双方の機能を組み合わせ、情報発信や提案力を基盤にした独自の食品ネット販売の展開を目指す。

 販売する商品は、加工食品や調味料、菓子、飲料、酒類などで、現在の取扱商品数は約7000アイテム。当面の目標として、1万6000アイテムにまで商品を広げる計画だ。

 「フーザ」では、自ら豊富な食経験を持ち、週末には家族のために少し洒落た食事を作るという、食への感度の高い40代の主婦層をターゲットに「"晴れ"とまではいかないが"小晴れ"の食卓」(山本社長)をイメージした商品提案を推進。

 また、集客のための情報発信には、ツイッターやフェイスブックなど、デジタルガレージが得意とするSNSを積極的に活用する。

女性メーン想定も男性客が半数以上

 スタートからこれまでの「フーザ」の売り上げ動向について、山本社長は「ほぼ計画通り」とする。だが、その中身については、"問題あり"と見ているようだ。

 現状、「フーザ」の商品購入客層は30~50代。ターゲットの40代主婦層に対し、より幅広い年代層が利用している形だが、問題は男女の比率。当初女性7、男性3の割合を見込んでいたのに対し、実際には男性客の比率が女性客を若干上回っている状況だ。

 この背景にあるのはワイン。もともと三菱食品では、子会社のe・ショッピング・ワイン(esワイン)を通じワインのネット販売を展開していたが、「フーザ」の開設に伴い、昨年11月にesワインの通販サイトを閉鎖。ワインのネット販売を「フーザ」に集約している。

 すでにネット販売のノウハウを持つワインは「フーザ」のマグネット商材のひとつになるわけだが、これまでの展開では、ターゲットとする女性よりも男性が反応しており、「50代の場合、男性顧客がワインを買うケースが多い」(山本社長)という。

 ワインの売れ筋は高単価のセット商品で、リピート購入も多い。売り上げを考えれば、ワインに男性顧客が反応しているのは、決して悪いことではない。だが、「フーザ」のコンセプトやターゲット層を勘案すると、「食品系で納得してもらう」(同)ことが本来の姿。これは「フーザ」を開設した目的にも関係する。

販売情報収集狙いネット販売に着手

 もともと三菱食品が子会社のフーザを通じ、B〓Cの食品ネット販売に乗り出した理由は、取引先に対する提案力の強化にある。

 同社はネット販売の拡大を見越し、食品卸の中でも早い段階からネット専門の営業部隊を設置。アマゾンやケンコーコムなど有力ネット販売事業者とも古くから取引をしている。昨今では食品のネット購入が広がり、GMSなどリアルの小売業でも取り組みを強化しており、独自性のある提案が求められている。

 食品卸の機能として求められるのは、まず商品の品ぞろえと情報になるが、この部分だけで他の食品卸と明確な差別化を図ることは難しい。そこで三菱食品が着目したのが、以前から得意としてきた消費者のライフスタイルに対応した商品提案になる。

 これは、価格競争を回避するための付加価値の創造を狙ったものだが、課題となったのが提案を行うために必要な商品販売情報の収集。POS(販売時点管理)システムを導入するコンビニやGMSなどリアルの有力小売事業者の場合、POSデータを開示しているため、それをもとに商品や売場の提案を行うことができる。

 だが、ネット販売事業者は商品の販売情報を開示していないため、「インターネットでのものの売れ方の知見はネット販売事業者にしかなかった」(山本社長)という。

 開示されない情報は自分たちで収集するしかない。そのため三菱食品は、「フーザ」を通じたBtoC食品ネット販売で、必要な商品販売情報の収集と提案手法の構築を行うことにしたわけだ。

女性に評価されるコンテンツ拡充へ

 三菱食品では、将来的に「フーザ」での成功事例をリアルの小売事業者や他のネット販売事業者などの取引先にフィードバックすることを構想しており、現在、力点を置いているのがサイト上で展開するコンテンツやメルマガなどを通じたメニュー提案、食に関する情報提供などを通じた集客。すでにワインでは、男性顧客の利用で一定の成果を出しているが、食品については「もう少し女性に評価されるコンテンツを増やしていかなければならない」(同)とする。

 現在、サイト上では、企画もののコンテンツを月に5~10本、読み物のコンテンツを同2~3本程度展開しているが、さらにコンテンツの拡充を推進。また、「"幸せな食卓の"イメージを伝える重要なツール」(同)とするSNSについても、一層の情報拡散につながる展開手法を検討していく構えだ。

 これまで「フーザ」では、ワインの動きが目立つ形となっていたが、夏場はワインの消費が落ちる時期。山本社長は、「もっと食品が頑張っていかなければならない」とする。

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