プラットフォームを味方につけろ!賢いEC活用のヒントを探る【第2回】
2019年 4月25日 00:00
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2024年10月 3日 13:14
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『中長期的な視点で顧客との接点をどう生かしていくか』
──こんにちは。岡田さん2回目もよろしくお願いします。
岡田 こちらこそ。さて、今回も引き続きLINEを取りあげてみたいと思います。前回お話しましたようにLINEの法人向けアカウントが新しい「LINE公式カウント」にすべて統合されます。既に代理店経由では新アカウントの開設が始まっており、従来のLINE@の移行は4月18日から順次移行の案内が始まります。この法人向けアカウント統合の一番の目的はLINEをフルファネルで使ってもらうということです。
──どういうことでしょう?
岡田 LINEと言うと、どうしてもメッセージ配信にフォーカスされがちですが、広告も充実してきています。例えば店舗向けの来店促進広告「LINEサンプリング」なども実施しており、これまでのウェブ広告に加えて実店舗向けのメニューも増えてきています。そしてこの実店舗向けの広告とコード決済サービス「LINE Pay」を結びつけていこうという狙いなのでしょう。結果、集客から決済までオンラインと実店舗どちらも一気通貫で提供できるようになります。
──ちなみに先ほどの「LINEサンプリング」はどのような広告メニューでしょうか。
岡田 店舗への集客から商品のサンプリングまでをワンストップで提供するメニューです。
具体的には広告面や公式アカウントからの告知から抽選ページへ遷移し、当選した場合は店舗で商品を受け取ります。サントリーやキリンといった飲料メーカーのほか、化粧品メーカー、コンビニなどが実施しているのは確認しました。新商品の認知拡大や来店促進などにつなげているようです。始まったばかりということもあり、ミニマム費用的にもエンタープライズ企業向けのメニューとなってます。
LINEの広告はこのようにメニューが充実しているだけでなく、広告出稿できる面も増えており集客で使う企業は増えています。大手だけでなく、中小企業もLINE Ads Platform(LAP)のようなLINEのタイムラインやニュースに露出される運用型広告に出稿するケースも多いです。
ミクロな視点に立つのではなく全体を見て
──ファネルという意味では、LINE内で「集客」から「購買」までをカバーするということですが、企業側が気をつけることはありますか。
岡田 まず集客面では広告メニューが充実しただけでなく、そもそもLINE内に大量のアクティブユーザーがいるので集客効果は間違いないと言えます。あとはユーザーがストレスなくコンバージョンまでたどりつけるかが大事です。
ですので、集めた後にLINEログインなどでユーザーと1to1の関係を築き、メッセージ配信で関係性を高めて、最終的にコンバージョンさせるというのが理想的な流れではないでしょうか。
──メッセージはあくまで手段の1つだと?
岡田 そうです。メッセージ配信をどう売り上げにつなげるかというミクロの視点に立つのではなく、マクロの視点でLINEを活用したユーザーの認知から集客、CVまで全体の費用対効果を考える必要があります。ユーザーがどの導線から流入し、どのようなモチベーションがあって、といった具合にカスタマージャーニーをきちんと考えてアプローチすることが求められます。
もちろんそのためにECサイトを部分的に改修したり、広告出稿プランを練るなどやや複雑な業務が増えますが、そこは企業のウェブマーケティング担当者が成功事例などを参考にして施策を自社に最適化していく必要があります。こうした取り組みは一定の予算も必要になるので、大手企業が中心に動くかもしれませんが、中小企業も予算がないからとあきらめるのではなく、予算内で成功事例を作っていくこが重要になると思います。
──LINEはポイント付与プログラムとしてオンラインでは「LINEショッピング」、オフラインでは「SHOPPING GO」とそれぞれサービスを提供していますが、こうしたものを利用するのも大事でしょうか。
岡田 そうですね。もちろんその企業の商材であったりターゲットによって合う・合わないはありますので、そこは事前に分析することが前提です。その上で顧客接点の入り口となる広告は選択肢がありますので、全体の費用対効果の中で判断してもらいたいです。
リターンがなくても失敗ではない
──集客して顧客と接点を持った後は、アカウントを通じてコミュニケーションを図ることになるのですね。
岡田 そうです。そこでメッセージ配信で顧客と関係を構築していきます。それと絡めて注意したい点として、広告を打ってそれに見合う売り上げのリターンがなかったとしても、一概に失敗と判断するのは得策ではないということです。というのも、たとえその時に売り上げにならなくても多くのフォロワーが獲得できたのであれば、今後につながるからです。
──販促施策の成果を短期的に判断してはいけないということですね。
岡田 広く長い目で見ていくことが大事です。広く集客を図って継続的に関係を結ぶという意味では、これまではスタンプがその役割をしていました。ただ、単に集めるだけではそのユーザーが具体的に何に興味を持っているかは分かりません。そこでID連携してユーザーごとにデータを集める必要が出てきます。
──ユーザーが持つLINEのIDと当該企業のIDを紐付けるということですね。
岡田 はい。IDを連携し、ユーザー別に各キャンペーンのデータを集約するわけです。つまり「友だち」としてフォロワーになるのが大前提としてあり、そこから1対1の関係をどう築くかですね、大事なのは。
リアルでの購買状況を想像してほしいのですが、お客様が来店した際にいきなり店員さんが「これ買ってください」とは言いません。コミュニケーションを重ねてその客の好みや求めているものを探る作業があります。そうした手順を踏まえて「では、これはいかがでしょうか?」という提案に移ります。
これはウェブでも同じです。ただ、リアル店舗のように人が細かく対応できないので、オンライン上の過去のデータや導線を分析してその顧客のニーズを探るわけです。実際、大手企業は適切なアプローチをし始めています。
──大手企業は資本力がありシステム投資なども可能ですが、中小はなかなかそこまでやるのは難しいのではないでしょうか。
岡田 それは言えます。例えばLINE@が公式アカウントに統合されますが、一部の企業はメッセージ配信の通数課金だけで費用対効果を見ています。。例として購入完了・発送通知の配信しか行っておらず、そこだけの費用対効果で見た場合に、新アカウントで通数課金になるとコストが合わないという判断です。アカウントを終了すると、時間をかけて集めたフォロワーを失ってしまい非常にもったいないです。もちろんその企業の担当者もそれがもったいないということは分かっています。しかし、新たな戦略を練る時間が十分にないケースがあります。
──となると、中小企業がLINEを活用しまくるというのはなかなかハードルが高そうですね。
岡田 おそらく何らかのツールに頼るという方向になるとは思います。徐々にいろいろなツールが出てきており、費用も下がっています。その中で自分たちがやりたいことを実現でき、短期的・中長期的に効果の見込めるツールをいかに見つけるかでしょう。
担当者が自分でLINEを体験してみる
──お話を伺ってますと、LINEというプラットフォームを活用するにあたって集客や顧客接点の構築、クロージングに至るまでいろいろな選択肢が増えています。それに伴って企業としてどう舵取りをするかも難しくなりそうです。
岡田 その企業が独自に自社に合った手法を探って切り開くといったことも1つの方策でしょう。あるいはリスクを避けるという意味では、うまくいっている企業のやり方を真似るのも手だと思います。あとは担当者が自分でLINEを使いたおしてみて、「これいいな」と感じたものを自社にも取り込むということをしてみてもいいのではないでしょうか。
──カスタマージャーニーを実際に体験してみるということですね。
岡田 そうです。自分でいいなと納得できるかどうかも大事ですので。それと今後の舵取りという意味でもう1つ押さえておいてほしいのが“自社のデータ活用”です。LINEの広告にしろメッセージにしろ最適なタイミングで最適な人にコンテンツを配信する上で自社データの活用は欠かせません。これができるかどうかは、データの価値を理解しているかなど企業の体質にもよるのでなんとも難しいところです。ただ、目先の利益だけを求めて自転車操業のようなLINE運用をしていては疲弊(ひへい)してしまいます。
中長期的な視点に立って、顧客との大事な接点をどう生かしていくかを考えるべきでしょう。これからでも決して遅くありません。いろいろな施策を単発で終わらせているケースが多いので、ユーザー目線で実践していくこと心がけてLINEを活用してもらいたいと思います。
プラットフォームを味方につけろ!賢いEC活用のヒントを探る(週刊通販新聞姉妹紙の「月刊ネット販売」で連載中)
第1回目「LINEの使い方」はこちら
第3回目「Facebookの可能性」はこちら
岡田風早(おかだ・かざはや)
株式会社フィードフォース コーポレート本部長 兼広報・Bizdev チームマネージャー
ソーシャルログイン/ID連携サービス「ソーシャルPLUS」のカスタマーサクセスチームの立ち上げで2015年フィードフォースに入社。その後「ソーシャルPLUS」プロダクトマネージャーを経て現在の役職に至る。LINE社とLINEログインにおけるパートナー契約を中心になって進め、ビジネスコネクトパートナーや大手代理店と連携して、企業のLINEによるOne to Oneコミュニケーション実現の設計に数多く携わる。またメディアへの寄稿やイベント登壇など情報発信も積極的に行っている