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消費者庁が景表法で初判断 アフィリエイト規制に本腰、「聖域」崩壊で処分増加の可能性も

2021年 3月11日 12:45

 消費者庁は3月3日、「アフィリエイト広告」を対象に景品表示法の措置命令を下した。育毛剤通販を行うT.Sコーポレーションに対するもの。アフィリエイターによる作成を前提とする広告に対する国の執行の前例はない。これまで「聖域」とみなされ、不当表示も氾濫していた。今回、表示の企業責任を初めて認定。処分は、消費者庁の執行方針の転換を意味する。今後、「アフィリエイト広告」を対象にした執行が増える可能性が高い。
 









アフィリエイト「テレビと同じ」

 「広告手法は、テレビと同じ」。処分にあたり、消費者庁表示対策課の担当官はこう話す。「成果報酬型」という仕組みは新しいものの、代理店、孫請けと制作や放映を依頼するテレビCMと、ASPを介して再委託されるアフィリエイトの広告手法自体は同義というものだ。

 判断にある事業者は「衝撃を受けた」と話す。これまでアフィリエイト広告をテレビや新聞などと異なる”特殊な広告”と認識していたためだ。アフィリエイト広告は、あくまで第三者であるアフィリエイターによる制作物。企業の関与の度合いもケースで異なる。

 広告責任をめぐる専門家の見解も分かれる。「禁止事項を細かく指示するほど関与が深い、反対に不当表示でも一切ノータッチなら関与が薄いとみられるかもしれない」(景表法に詳しい弁護士)、「放置したらそれはそれで管理責任を問われるかもしれないが、全くの白紙委任で景表法上の責任を問えるかというと厳しい」(公取OB)などの見方があった。

 管理の難しさもある。中には、企業によるチェックの行き届かない夜中に表示を改変して成果発生を狙うアフィリエイターもいる。「掲載可能な媒体社、広告案件も膨大でチェックしきれない。企業側も確信犯、無知のケースに分かれ、積極的に関与していないと言い逃れできてしまう」(ウェブ広告の業界団体関係者)。このため、景表法上の責任を免れる「聖域」とみる企業も少なからずいた。

「修正できる立場」で表示関与認定

 過去に執行例もない。消費者庁は18年、ブレインハーツを景表法で処分。アフィリエイト広告に対する企業の関与にも言及した。「違反認定は可能だが、アフィリエイトサイトの数が多く、行政効率を考えた」(表示対策課)と取締りは否定していなかったが、あくまで違法認定の対象は、アフィリエイト広告からリンクしたランディングページ(LP)だった。

 だが、3月3日公表のT.Sコーポレーションに対する景表法処分の対象は、アフィリエイト広告そのもの。そこで示されたのが、冒頭の見解だ。

 同時期に公表した消費者安全法に基づく「アフィリエイト広告の注意喚起」でも、広告の表示責任を企業に求めている。対象は、Libeiro、シズカニューヨークが販売する2商品。「ASPへの委託、再委託を承知し、広告内容を把握していた。内容が虚偽・誇大なら修正できる権限を有していたが放置した」(消費者政策課財産被害対策室)として、「表示内容の決定に関与した」と景表法上の責任に言及している。

方針転換の背景に市場の成熟

 方針転換の背景には、アフィリエイト広告市場の成熟があるとみられる。当初、個人の副業的要素が強かったアフィリエイトは、徐々に構造が複雑化。有力アフィリエイターの法人化や代理店による囲い込み、自ら広告主となり、アフィリエイトサイトへの誘導を目的に広告出稿を行う者の台頭など、近年は、企業との連携、組織的な関与が強まっていた。昨年には、埼玉県が国に先行してアフィリエイト広告を対象にした景表法処分も行っている。

 今回の執行も消費者庁の強い問題意識の表れだろう。広告出稿は、ASPを介して企業が禁止事項などレギュレーションを提示。アフィリエイターが作成・申請した広告を承認する。成果の発生以前、以後に表示内容もチェックできる。そうであれば、表示主体者の判断における「自ら内容を決定できるにもかかわらず、他の事業者にその決定を委ねた者=修正できる権限を有する」ということだろう。

 T.Sコーポレーションの場合、自ら表示への関与を認め、アフィリエイターに広告素材も提供。「決定を委ねた者というより、他者と共同で積極的に内容を決定した」(表示対策課)と、関与の度合いはより強い。埼玉県も当時の処分に「認定の手法は色々だが一般的に事業者が認めた場合が一番堅い」(消費生活課)と話す。

禁止事項提示免罪符にならず

 処分を受け、企業は「禁止事項の提示も免罪符にならない。アフィリエイトは減るのでは」、「管理しきれない。やるなら安全なところにしか頼めない」と、慎重姿勢に傾く。

 ASP業界は、「不正を検知できるサービスの提供など対応策も行っている。知識の習得など実施のハードルは上がっているが、広告案件は増えている」(ASP運営者)、「健全でない広告の公表自体は賛同。広告主、アフィリエイターの減少にはつながらない。健全化が進み広告は増える」(日本アフィリエイト・サービス協会)、「業界にはプラス。適正化に向けどんどんやってほしい」(別の団体関係者)と歓迎の声があがる。

                                                                                                                                              ◇

 消費者庁の伊藤明子長官は、執行を受けた3月3日の定例会見で、「法律違反の表示には厳正に対処する」と執行方針を示す。

 注目されるのは、消安法における公表でアフィリエイト広告への関与を指摘された2社への対応だ。シズカニューヨークは「広告はアフィリエイターが独自の判断で実施したもの。広告に関与して内容を指示したり、事後的に承認したものではない」と、関与を否定。「関与した」とする消費者庁と見解が分かれる。Libeiroからは本紙掲載までにコメントは得られていない。

 アフィリエイト広告は規制が先行している状況。消費者庁は実態調査に乗り出しており、今夏に報告をまとめ、ルールを明確化する。

 また8月には、新たに課徴金を導入した改正薬機法の施行も控えている。「何人規制」の薬機法は、広告主だけでなく、代理店、アフィリエイターも対象になる。アフィリエイト広告をめぐる規制環境は厳しくなっている。



広告作成「積極的に関与」、企業は「独特な手法と誤解」

<アフィリエイト違反認定の背景>

 アフィリエイト広告を対象にした初の景品表示法処分について、消費者庁表示対策課の田中誠ヘルスケア表示指導室長に聞いた。

 ――表示への関与はどう判断した。

 「企業も表示内容を承知していた。アフィリエイト広告における商品の特性も、当然、広告主から提供されないと作成できない」

 ――広告素材の提供もあった。

 「それもある。広告出稿の仕組みも承知していた」

 ――広告の制作は、第三者であるアフィリエイターが行った。

 「業界では、アフィリエイト広告というと、アフィリエイターが行っているもので内容を知らない、独特な手法かのように誤解している。ビジネスとして成果報酬は新しいが、広告手法自体は従来と変わらない。広告主が代理店に委託してテレビCMを制作して放映した場合、その責任は広告主にある。同様に代理店への委託がASPに変わっただけ。処分を通じたメッセージは、アフィリエイト広告でも広告主の表示とみなされるおそれがあるということ」

 ――白紙委任の場合でも表示責任を問われるのか。

 「表示主体者の判断では、内容の決定を委ねている時点で、関与したと判断する。成果報酬も払っており、今回は、より積極的に関与しているという従来の認定と同じ」

 ――処分対象の広告は2年前のもの。なぜ時間を要したのか。

 「調査に関わるので答えていない」

 ――なぜこれまで執行例がなかったのか。

 「成果報酬型のビジネスが出てきたのは最近のこと。ただ、『健食留意事項』では、従前からアフィリエイト広告に対する広告責任に触れている。それを体現したということ。ASPを通じた再委託など構造として複雑な面はあり、調査に時間を要するということはあるかもしれない」

 ――現在、消費者庁ではアフィリエイト広告の実態調査を始めている。

 「今夏をめどにまとめる。調査報告書としてまとめるか、検討会を行うかは今後検討していく。これを受けて、『健食留意事項』も補完する」

 ――アフィリエイト広告への執行方針は。

 「長官会見でもアフィリエイターは報酬を目当てに虚偽・誇大な広告を作成するインセンティブが働きやすいと説明している。そこは遵法精神がないと被害が出るし、厳しくしなければ真っ当な商品が売れず、誰も幸せにならない」


 
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