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【出版社の衣料品EC戦略】 目利きと企画力でF2層を開拓 

2021年 9月 9日 10:25

 出版社が運営するファッション通販サイトが存在感を高めている。巨大ECモールとの差別化を図るべくコンテンツ力を磨いたり、自社媒体との連携を図って販売につなげている。全方位的な品ぞろえを目指すECモールは委託販売形式が一般的だが、良質なコンテンツを強みに買い取り仕入れも行う。ファッションブランドが一目置く集英社の「ハッピープラスストア」とハースト婦人画報社が運営する「エル・ショップ」の戦略を見ていく。

 



企画力で定価販売を推進

集英社

 集英社は、ファッション商材などを扱う通販サイト「ハッピープラスストア」の利益改善が一段と進んでいるようだ。

 「ハッピープラスストア」ではこの2~3年、売上高の成長よりも利益面を重視してきた。同社は人気雑誌と連携したオリジナルブランドを展開しているが、F1層向けの独自ブランドを終了。F2層向けの「トゥエルブクローゼット」と「エムセブンデイズ」、大人女性向けの「イーバイエクラ」、雑誌に紐付かない通販ブランド「スアデオ」の4ブランドに経営資源を集中するなど、顧客層に合わせたMD展開を推し進めた。

 加えて、セール販売を抑制して定価販売を強化。その際、商品の魅力を伝え多彩なコンテンツと連動し、定価でも顧客に納得して買ってもらうことに注力してきた。

 2021年5月期のEC売上高は前年比横ばいの50億円強となったものの、売上高に占める定価販売の比率が上昇し、プロパー消化率も高まったことで利益面はさらに改善したという。

 前期も企画と連動した商品販売を強化。とくに、利益率の高い買い取り商品を独自のコンテンツで売るという最大の強みを磨いた。主要ターゲットであるF2層のニーズに応えるため、委託販売やデータ連携によって商品ラインアップを充実させる取り組みも行っているが、”企画に合致する商品は買い取る”というくらいの姿勢でMDにメリハリをつけ、縦積みして売り切る商品を増やしている。

 企画・コンテンツの好事例としては、3年ほど前から取り組んでいる「スタンダードブック」が好評だ。当該コンテンツは根強いニーズがある人気ブランドの定番商品を中心に企画しているが、定番品の中にも新しさを出すため、中身を入れ替えながらコンテンツとしてブラッシュアップを重ねている。

 年2回の企画として展開しており、冊子も発行。新規客の購入商品に同梱して届けることで2回目、3回目の購入につながるなど、新規客の定着化にも貢献している。

 既存顧客に飽きられないよう、事前にウェブ企画でテストを実施してヒットの芽を探り、雑誌との連動企画や「スタンダードブック」にも掲載することで販売点数をスケールさせる取り組みが機能し始めているという。
 同社では、「スタンダードブック」を”ハッピープラスストアのベスト版”と位置づけ、ベスト版が響くユーザーがファンになり得ると判断している。

実店舗も強化 四国に初出店

 前期はデジタルマーケティングにも注力した。従来からウェブ接客ツールやMAツールなどを導入しているが、ツールごとに担当者を配置して取り組んでも大きな成果が得られなかったという。

 そこで、チーム構成を刷新して「顧客体験改善プロジェクト」を立ち上げた。UI・UXやカスタマージャーニー領域などを統括するチームとして人員を集約し、目的に合わせて各種ツールを活用するようにした。

 また、MAツールで自動配信されるメールについても「ハッピープラスストア」にふさわしいクリエイティブや内容に見直したほか、レコメンドの枠を設けるなどした。

 同社はコンテンツ力を武器にしているものの、そのコンテンツに気づいてもらう部分にも力点を置き、メールを含めた顧客接点の強化を図っている。

 一方、リアル店舗についてはECと連動した新しい店舗運営に向けた取り組みを進めている。

 これまでに渋谷スクランブルスクエア店などクローズした店舗もあるが、今年は3月に伊勢丹浦和店と大丸札幌店に相次いで出店したほか、9月2日には四国で初となる店舗を松山三越にオープンし、大丸東京店と西武池袋本店、そごう横浜店、そごう千葉店、ジェイアール京都伊勢丹、福岡三越と合わせて9店舗体制とした。

 集英社では企画・コンテンツを強化して買い取り商品を増やしているが、実店舗は買い取りリスクを分散できるチャネルになっており、とくに定価で販売するチャネルとして百貨店との相性がいいようだ。

 リアル店舗ではEC在庫を引き当てて販売したり、先行予約会を開催し、サンプル商品を試着してもらってEC購入につなげる取り組みなど、独自路線を推し進める。

 「ハッピープラスストア」では、この数年は利益改善にフォーカスしてきたが、今期からは同時にトップラインも追求し、早期に60億円の売上高を目指すという。そのためにも買い取りを強化し、売り切るために企画の精度を高める。加えて、追加発注の利く商材も開拓していく。

 また、アラフォー世代向けの雑誌「マリソル」をECに特化したコマースメディアに刷新することになった。6月22日付けで新設した、「ハッピープラスストア」の本丸とも言えるブランドビジネス部コマースメディア室に「マリソル」の編集チームが加わり、”モノが買いたくなるメディア”としてリニューアルする。

 同誌は11月号の発刊後に新体制に全面移行。年に2~4回のプリント版を発行する計画で、同誌に紐付くオリジナルブランド「エムセブンデイズ」の展開強化にも拍車がかかりそうだ。



MDやコンテンツで差別化

ハースト婦人画報社

 ハースト婦人画報社は、運営するファッション通販サイト「エル・ショップ」がコロナ禍でも好調を維持しているようだ。

 2009年にスタートした「エル・ショップ」は雑誌「エル」のエディターがプロデュースするオンラインセレクトショップで、ファッション感度の高い30代~50代女性が中心顧客層だ。

 MD面は「エル」の世界観を重視するため、サイト開設当初からブランド数を広げ過ぎず、常時約200ブランドを展開。「エル」の読者など顧客ニーズを踏まえ、ブランドを入れ替えながら厳選して商品提案することを徹底してきた。

 近年は取引先ブランドとの別注アイテムに力を入れており、「エル・ショップ」ならではの商品企画に重点を置く。

 また、今年からは顧客層との親和性が高いカテゴリーとしてインテリアや雑貨などのライフスタイルグッズとコスメの品ぞろえを拡充。ファッション商材に軸足を置きながらセレクトショップとしての良質なMD展開で差別化を図っている。

 サイト面ではコンテンツを重視。週1回、メインの特集企画を更新しているほか、最旬のコーディネートを提案する「ホットスタイル」や、エディターのスタイリングを発信する「エディターズクローゼット」などのコンテンツにも注力し、ユーザーから支持されている。また、「エル」らしく海外のスナップ写真を紹介して写真のコーディネートを「エル・ショップ」の取り扱いアイテムからおすすめする「スタイルプラス」のコンテンツも人気という。

 ECであってもコンテンツを重視することで、サイト訪問者が偶然にお気に入りの商品を発見するというセレンディピティの創出を大事にしている。

 自社媒体との連携については昨年から加速している。これまでも「エル」本誌に「エル・ショップ」のコンテンツをブック・イン・ブック形式で展開しているが、昨年からは「エルデジタル」や「ヴァンサンカン・デジタル」など自社のウェブメディアとの連携を深めている。

 例えば、「ヴァンサンカン・デジタル」では海外セレブの着こなし術を紹介し、彼女たちになりきることができるアイテムを「エル・ショップ」に誘導して見てもらったり、EC側でも「ヴァンサンカン・デジタル」の記事を紹介して導線を設けるなど、相互送客できる機会を増やしている。また、そうしたコンテンツは「エル・ショップ」のメルマガでも紹介し、サイト訪問につなげている。

 ブック・イン・ブックは年3回、切り口を変えて展開しており、掲載商品の売れ行きにも影響するという。8月下旬に発刊した最新号(20ページ=画像㊦)では「エル・ショップ」初登場となるブランドの紹介や旬アイテムの着こなしレッスン、知っておきたいサステナブルトピックスなどを発信する。

インスタライブなどにも挑戦

 初回購入の動機付けとしては、「エル・ショップ」ならではの品ぞろえや限定品の販売がフックになっているほか、雑誌「エル」の公式通販サイトという信頼感も大きいようだ。そのため、同社は引き続きMD面で差別化を図りながら、自社メディアとの連携やウェブ広告、SEO対策、SNSの活用などで新客を開拓する考え。

 既存顧客の定着化に向けては、上質なコンテンツを発信し続けることでサイト訪問頻度を高める。メルマガの充実化にも注力しており、ECのコンテンツを集約したメルマガや、注目のブランドを深掘りする読みごたえのあるメルマガなども支持されているという。

 また、iPhoneアプリの刷新に続き、今年はアンドロイド版アプリをリニューアル。UI・UXも改善してLTVの高いアプリ利用者を増やしていく。

 「エル・ショップ」の売上高は毎年順調に伸びており、とくに昨年は実店舗の休業を余儀なくされたファッションブランドが多く、店頭在庫を「エル・ショップ」に振り分けてもらったことも奏功し、2020年12月期は前年実績を大きく上回った。消費者のEC利用拡大も追い風に、新客開拓と既存顧客の購入率の両面で成果があったという。

 一方、これまでは顧客を招いて人気ブランドの受注会やトークショーといったリアルのイベントを年2回開催していたが、コロナ禍で顧客接点の場がオンライン上に限定された。そのため、タッチポイントの強化は課題で、昨年からはインスタライブもスタート。編集部やECのスタッフが登場して新作やブランドとのコラボ商品などを紹介し、EC送客を図っている。

 「エル・ショップ」は今期(21年12月期)もプラス成長を目指しており、ウェブ広告への投資を強化中だ。加えて、「サードパーティクッキー規制の観点からもメルマガやSNS、アプリ、ECコンテンツを活用したお客様とのコミュニケーション強化はより重要になる」(ハースト・デジタル・ジャパン渡邊真帆B2C事業本部フルフィルメント部プロモーション課課長)としている。

 なお、同社は今秋、「エルデジタル」が25周年を迎えるのを機に、さまざまな連動企画を計画。コロナ禍でもワクワクする買い物体験の提供に向けて、9月25日に「エル」の世界観を発信するバーチャルショップを立ち上げて限定品などを販売するという。
 
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