高裁は国の過ちを是正させろ
第2類以上の医薬品ネット販売を禁止するのは違憲などとし、当該省令の無効・取り消しや医薬品ネット販売を行う権利確認などを求め、ケンコーコムとウェルネットが国を相手取り提起した行政訴訟の控訴審が4月28日に結審した。1審で東京地裁は、ネットは対面に優位に劣るとし、原告全面敗訴の判決を下したが、国の論点すり替えに翻弄され、国に都合の良い対面とネットの優劣論を盲目的に支持した1審判決はやはりおかしい。これに対し控訴審では、裁判所側が立法事実に基づいた規制の是非を論点とする方針を打ち出しているが、高裁には適切な司法判断を望みたい。
まず、今回の医薬品ネット販売規制で指摘しなければならないのは、あまりにも矛盾点や問題点が多いことだ。厚労省の検討会では、ネット販売事業者が蚊帳の外に置かれ続け、対面の原則を錦の御旗に掲げる薬業団体等の規制推進派の根拠のないネット危険論が横行し、ネット販売の安全確保策などの実態が十分に検証されることはなかった。
実際の販売制度を見ても、対面ではないネット販売は危険としておきながら、副作用リスクが高く店頭では専門家による対面での情報提供が義務付けられている第1類医薬品が代理人でも購入できるのは、対面の原則と矛盾する。また、店頭での実態を見ると、日本薬剤師会幹部が運営する薬局が代理人に対し第2類医薬品の通販を行っていた事例が報告され、厚労省が行った調査では、第1類医薬品販売時に情報提供を行っていた店舗が5割程度しかないなど、対応が徹底されていない実態もある。矛盾に満ち運用もままならないような医薬品販売制度は、"ざる"としか言いようがあるまい。
そもそも、それまで容認していた医薬品ネット販売を規制するのであれば、その理由、すなわち立法事実があってしかるべきだ。しかし、厚労省や規制推進派が指摘してきた問題は、海外通販サイトで購入した健康食品の健康被害や麻薬事件などで、議論の対象となる正規の医薬品販売許可を得たネット販売に起因する副作用事故の事例は皆無に等しい。
仮に予見的な見地で規制するにしても、根拠となるデータが必要なはずだが、先の規制仕分けで対面販売の方がネット販売よりも副作用の発生が少ないとする根拠を追求され、厚労省はデータがないと回答した。つまり、医薬品ネット販売を禁止する明確な理由がないわけだ。
これだけ見ても今回の医薬品ネット販売規制は、かなりの問題をはらんでいる。それにも関わらず、国の論点のすり替えに同調し、安易にネットが対面に劣るという判断を下した1審判決は、裁判所の思考停止による産物としか言いようがない。
控訴審で高裁は、医薬品ネット販売に対する規制前後の問題、情報伝達や副作用事故発生の実態などについて、ケンコーコム等と国に釈明を求めている。国側は依然、論点のすり替えを続け、中には全く答えていない釈明事項もあるようだが、そもそも裁判所が提示した論点にも答えられないような規制はおかしい。高裁は、司法の責任として国の過ちを是正させなければならない。
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まず、今回の医薬品ネット販売規制で指摘しなければならないのは、あまりにも矛盾点や問題点が多いことだ。厚労省の検討会では、ネット販売事業者が蚊帳の外に置かれ続け、対面の原則を錦の御旗に掲げる薬業団体等の規制推進派の根拠のないネット危険論が横行し、ネット販売の安全確保策などの実態が十分に検証されることはなかった。
実際の販売制度を見ても、対面ではないネット販売は危険としておきながら、副作用リスクが高く店頭では専門家による対面での情報提供が義務付けられている第1類医薬品が代理人でも購入できるのは、対面の原則と矛盾する。また、店頭での実態を見ると、日本薬剤師会幹部が運営する薬局が代理人に対し第2類医薬品の通販を行っていた事例が報告され、厚労省が行った調査では、第1類医薬品販売時に情報提供を行っていた店舗が5割程度しかないなど、対応が徹底されていない実態もある。矛盾に満ち運用もままならないような医薬品販売制度は、"ざる"としか言いようがあるまい。
そもそも、それまで容認していた医薬品ネット販売を規制するのであれば、その理由、すなわち立法事実があってしかるべきだ。しかし、厚労省や規制推進派が指摘してきた問題は、海外通販サイトで購入した健康食品の健康被害や麻薬事件などで、議論の対象となる正規の医薬品販売許可を得たネット販売に起因する副作用事故の事例は皆無に等しい。
仮に予見的な見地で規制するにしても、根拠となるデータが必要なはずだが、先の規制仕分けで対面販売の方がネット販売よりも副作用の発生が少ないとする根拠を追求され、厚労省はデータがないと回答した。つまり、医薬品ネット販売を禁止する明確な理由がないわけだ。
これだけ見ても今回の医薬品ネット販売規制は、かなりの問題をはらんでいる。それにも関わらず、国の論点のすり替えに同調し、安易にネットが対面に劣るという判断を下した1審判決は、裁判所の思考停止による産物としか言いようがない。
控訴審で高裁は、医薬品ネット販売に対する規制前後の問題、情報伝達や副作用事故発生の実態などについて、ケンコーコム等と国に釈明を求めている。国側は依然、論点のすり替えを続け、中には全く答えていない釈明事項もあるようだが、そもそも裁判所が提示した論点にも答えられないような規制はおかしい。高裁は、司法の責任として国の過ちを是正させなければならない。