BS局は二度と通販に頼るな

2011年08月25日 11:46

2011年08月25日 11:46

 BSの番組表から通販番組が少しずつ姿を消しつつある。無論、まだまだBSでの通販番組は多いが、昨年までの番組表と比較すると、減少傾向となっているkとが分かるだろう。今後もこうした流れは加速していくと見られる。これは放送法改正に伴い、今年から施行される総務省の省令に起因しているようだ。当該省令ではテレビ局各局に教養、報道、通販などの放送番組の種別ごとに放送時間を公表するよう義務付けており、まずは初回公表の10月を前に、特にBS各局は番組編成から「通販」を締め出そうと躍起のようだ。

 ただ、この省令自体は別段、通販を規制しようというものではない。単にテレビ局に現状の番組編成の番組の種別ごとの時間配分を公表せよ、というだけのものである。無論、放送法には各ジャンルの番組をバランスよく放送し調和を保つことを求める「番組調和原則」が規定されているが、特定の番組種別が多かったとしても罰則があるわけではない。

 つまり、この省令自体が通販を規制しているのではなく、BS局が自ら通販番組の総量規制を行うためのあくまで"きっかけ"に過ぎないと見る向きもある。BSは今でこそ広告媒体としても価値が高まりつつあるが、少し前までは視聴世帯数が伸びず、一般企業の広告がなかなか入らないといったBS局の厳しい経営を支えてきたのがBS枠を買い、テレビ通販を行ってきた通販企業であり必然、BSで通販番組が多く放送されることになったわけだ。

 今回の省令により、番組種別公表の際、「"通販依存の体質"について、消費者団体などから出るであろう『通販番組が多すぎる』との批判をかわしたい」というのが通販の総量規制を自主的に行っているBS局の主な言い分だが、省令はあくまで口実に過ぎず、「テレビが汚される"通販"を入れたくない」というテレビ局側の思惑がある、との声が一部から漏れ伝わってくる。

 要は媒体価値の高まりから一般企業の広告も入り始めた現状を踏まえ、この際、切りにくかった通販を排除すべく、省令を口実に一気に通販を締め出してしまおう、ということらしい。無論、BSの媒体価値が高まったこともあろうが、BSの通販枠代が今春に大幅に上昇、今秋からもさらに値上がりが続いているのもこれに関係するのは、と見る関係者もいる。ある通販企業の幹部は現状のBSを「尋常ならざる強気の単価」と評し「嫌なら買わなくて結構と言われているようだ」と話す。

 民間事業者であるBS局が自らの判断でどんな戦略を採り、何を放送しても誰からも何ら文句を言われる道理はない。苦しい時代にBS局を支えた通販はもう必要ない、とばかりに意図的に排除したとしてもだ。であればテレビ通販企業もまたBS依存から今こそ脱却すべきだ。「一定の視聴世帯数がいる割に枠代が安く費用対効果が良い」というBSで通販を行うメリットはすでになく、BSに固執する必要はあるまい。

 BS各局にはむしろ、多方面から批判を浴びぬよう通販に二度と依存しない収益体制を築いて欲しい。インターネットを始めとする新たな広告媒体の登場やテレビ離れなどで圧倒的な視聴世帯数を誇る地上波の在京キー局でさえも広告収入が目減りし苦戦する中、BS各局が通販を抜きにどう収益を安定させるか、お手並みを拝見したい。「またダメなら通販に」という虫のいい話ならごめん蒙りたい。

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