薬通販訴訟の控訴審判決急げ

2011年08月31日 16:29

2011年08月31日 16:29

一般用医薬品通販の規制見直しに向けた環境が徐々に整ってきた。この問題を巡っては、今年3月の規制仕分けで安全性の確保の具体的な要件の設定を前提にビタミン剤などの第3類以外も含めた医薬品通販の合理的な規制を検討すべきとの評価結果が出されており、7月22日には、政府が「規制・制度改革に係る追加方針」を閣議決定し、今年度中に医薬品通販の合理的な規制の在り方の検討に着手する方向となった。こうした状況を受け、医薬品通販の規制推進派だった日本チェーンドラッグストア協会が9月にも独自に検討会を立ち上げる意向を示すなど、規制に直しに伴う一般用医薬品通販のルール作りに向けた動きが活発化しつつある状況だ。

 医薬品通販規制の見直しについては早急に検討に着手することが望まれるが、その方向性を考える上で注目されるのは、医薬品ネット販売を行うケンコーコムとウェルネットが国を相手取って提起した行政訴訟の行方だろう。

 この行政訴訟は、ケンコーコムなどが第2類以上の医薬品ネット販売を禁止するのは違憲などとし、当該省令の無効・取り消しや医薬品ネット販売を行う権利確認などを求めているもので、1審は国側に都合のいいネット販売と対面販売の優劣論に終始し、原告側が全面敗訴となった。しかし、控訴審で東京高裁は、1審の論点を軌道修正し、立法事実に基づいた規制自体の合理性や妥当性を焦点とする方針を提示。これはケンコーコムなど控訴人側が当初から主張を展開しようとしていた論点であり、今後、医薬品通販のルール作りの検討を進める上でも少なからず影響することも考えられる。

 だが、東京高裁が目指していた夏休み前の判決は遅れているのが現状で、8月30日の段階でも判決期日は決まっていない。裁判所側からすると規制の違憲性を問う行政訴訟であるだけに、慎重に審理を進めているのかも知れない。無論、それは重要なことだが、理不尽な規制で消費者や、医薬品を扱う通販・ネット販売事業者が不利益を被り続けている現状を考えれば、東京高裁は司法の責任として、早期に国の誤った規制を正す判決を下すべきだろう。

 当初、今年5月末に期限切れとなるはずだった経過措置が2年間延長され、第2類医薬品の通販・ネット販売はかろうじて継続できている。だが、販売対象は継続利用者や離島居住者など極めて限定的で、この状況が続けば、消費者の利便性を損ねるだけではなく、通販に依存する伝統薬通販事業者、あるいはネット販売に活路を求める医薬品販売事業者の経営が悪化していくことにもなる。こうした状況を避けるためにも、早急に医薬品通販のルール作りの検討を始め、少なくとも現行の経過措置のうちに安全性を確保した制度を整えなければなるまい。

 行政訴訟については、控訴人、被控訴人とっていかなる控訴審判決が出ても最高裁で争われる可能性が高く、法的な決着がつくまでには時間を要すると見られるが、医薬品通販のルール作りの本格的な検討に向けたひとつの足掛かりとして、早期の控訴審判決が望まれる。

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