成長企業の強さの本質を学べ
2014年10月02日 10:35
2014年10月02日 10:35
この数年の間、衣料品ネット販売専業が大手企業に買収されるケースが相次いだが、大手が持つ緻密なマーケティング手法などを学び、実践することで業績回復や再成長へのきっかけをつかむケースも出てきており、"良縁"であれば新たな一歩を踏み出す勇気も必要かもしれない。
衣料品のネット販売市場では、「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイが商品取扱高ベースで2014年3月期に1000億円を超えるなど他社を大きく引き離しているが、同じく上場組だったマガシークとスタイライフは再浮上へのきっかけをつかもうとしている。13年3月にNTTドコモのグループに入ったマガシークは、14年3月期の売上高が前年比18・2%増の112億円強となり、100億円の壁を初めて突破した。ドコモと共同で新しい通販サイト「dファッション」を13年10月にオープンし、ネット購入に慣れていない消費者やキャリア決済で買い物をしたいユーザーの獲得に成功。既存の「マガシーク」サイトでは少ない男性客も開拓できているようだ。
スタイライフは12年5月に楽天が筆頭株主となり、13年9月には同社の100%子会社となった。完全子会社化に伴いスタイライフは決算期を変更したが、変則9カ月の前期決算と今第1四半期の実績を合わせると前年比15%程度伸長した。同社は、「楽天市場」内のファッション専門サイト「楽天ブランドアベニュー(RBA)」に「スタイライフ」の屋号で出店しているが、「スタイライフ」本店で取り引きのあるブランドの95%が「RBA」にも参加。客層の異なる売り場で多くのブランドを販売できたことが成長の一因になった。また、「RBA」では各ブランドの世界観を崩さずに販売できる売り場ページを設けた結果、「スタイライフ」経由で販売したブランドよりも売り上げが3割程度伸びたとする。
マガシークとスタイライフの両社に共通するのは、親会社のマーケティング手法をしっかりと実践した点で、マガシークでは「科学的に数字を分析し、結果だけでなくプロセスを重視した」(井上直也社長)とし、スタイライフも「楽天流のドリルダウンした細かいKPI評価をマーケティングにとり入れた」(松山奨副社長)とする。両社の買収話が浮上した際、取引先ブランドの多くが資本力を背景にしたプロモーション強化などで「マガシーク」や「スタイライフ」の認知度が高まることを期待していた。ただ、蓋を開けると大型販促こそなかったものの、企業として着実に成長していくための土台作りやマーケティング手法の移植が優先されたからこそ、それらが顧客分析や商品政策などに結び付いたとも言えそうだ。
衣料品のネット販売市場は成長期から成熟期に移りつつある大事な局面を迎えており、このタイミングで売り場を増やして通販のライトユーザーや新しい客層を獲得することは戦略的にも大きな意味を持つと見られる。昨今は衣料品ネット販売以外の領域でも通販企業を狙い撃ちにしたアライアンスや買収案件が増えている。良縁ばかりではないだろうが、成長企業の強さの本質を知ることは企業経営のプラスになりそうだ。