〈マクアケの菊地執行役員に聞くECモール出店の背景は?〉 一般販売支援を強化へ、楽天市場を軸に商品選定

2025年11月06日 09:48

2025年11月06日 09:48

 応援購入サービス「Makuake」を運営するマクアケは10月23日、「マクアケ」のプロジェクト実行者の一般販売を支援する目的で「楽天市場」と「ヤフー!ショッピング」「TikTok Shop」に「マクアケストア」を出店した(2013号で既報)。商品のデビューだけでなく一般販売のサポート強化を進める同社の菊地凌輔執行役員グロース本部本部長に、モール出店の理由や戦略を聞いた。


1106094900_690bf07ca0743.jpg ――ECモール出店の理由は。

 「私自身は『マクアケ』のプロジェクトを成功させるキュレーターを長く務めていたが、今年の1月にグロース本部を新たに立ち上げてその責任者に就いた。グロース本部では、『マクアケ』でデビューした後の一般販売など、事業者の成長フェーズをメインにサポートする。私自身も十数年にわたって新商品やサービスのデビューに向き合ってきたが、事業者と話をすると、『マクアケではうまくいったが、その後の販路を広げられていない』とか『事業化できていない』といった悲痛の声がたくさんあった」

 「企業にとって商品開発は非常にカロリーを消費する。一般販売で商品が売れ、投資余力が出ないと次の商品開発にはつながらない。当社は事業者のビジョン達成や事業成長にもコミットしていきたいと思っている。商品デビューの部分で協力させて頂いているからこそ、その後の一般販売の領域もスムーズに支援できるので、当社が『マクアケストア』の屋号でECモールに出店し、事業者の商品を販売することになった」

 ――これまで一般販売など「マクアケ」デビュー後のグロース領域の支援はしていたのか。

 「デビュー後のフォローを行う部署はあったが、どちらかと言うと外部企業とのアライアンスが中心だった。当社が責任を持って販路を広げていくというよりは、例えば自社ECの構築に長けているパートナー企業を事業者に紹介するなど、本質的な価値提供には至っていなかった。マクアケの経営的な目線で見ても、売り上げのポートフォリオ上、『マクアケ』のワンプロダクトではなく、マルチプロダクト化していく必要性を感じていた」

 ――ECモールへの出店はいつから準備をしていたのか。

 「5月から水面下で始めていた。延べ900以上の商品SKUを展開し、モールごとに売れる商品の傾向を見極めていた。『マクアケ』で売れた商品がモールでも売れるかというとユーザー層も異なるので、モール展開における商品セレクションが戦略上、一番努力しないといけない部分で、セレクションの軸を検証してきた」

 ――「マクアケ」を活用してきた事業者が手を挙げるのではなく、マクアケがセレクトした商品をモールで販売する。

 「その通りで、セクトショップのようなものだ。5月に出店して、セレクトの軸が定まってきたので、10月下旬に本格オープンした。現状は『マクアケ』としてのブランド力を大事にしながら自社でセクトした商品を販売する。ただ、事業者自らがECモールに出店して閲覧数やレビュー数を伸ばすのには時間と費用がかかるので、ゆくゆくは、『マクアケストア』が出品したい事業者を募り、セクションの軸が多少ズレたとしても、売れるショップを目指していく」

 ――パートナー企業と組んで「マクアケストア」を運営するのか。

 「ECショップの運営や物流・フルフィルメント業務に定評のある外部企業と組んだ。パートナーを選定するときに大事にしたのが、フロントとバックエンド業務の両方ができる企業で、連携先が増えてオペレーションが複雑化すると利益の確保が難しくなると判断した。パートナー企業はセール時のクリエイティブ変更や広告の入札単価をどうするかといった商品掲載後の日々のサイト運用に加え、カスタマー対応や商品管理、発送業務までを一気通貫で任せられる」

 ――事業者側の手数料などは。

 「委託販売のような形をとっていて、事業者には指定の倉庫に商品を預けてもらう。配送料の実費と倉庫保管料、販売手数料を頂戴するが、それ以外の手間や負担はない。日々の広告運用やセール時のポイント負担、レビュー時のサンキュークーポンなどの原資は当社が持つ」

 ――「マクアケストア」としての採算性も重視する。

 「もちろんだ。新規事業を展開する以上、ほかの事業とのシナジーが得られれば良いというのは違うと思うので、『マクアケストア』として黒字化を目指す。ただ、一番大切にしているのは、『マクアケ』デビュー後の事業者のペインを解消し、一般販売の領域でも責任を持ってサポートすることが、一般市場に出る前の『0次流通』を担う当社としての価値が高まる」

 ――各モールでの商品展開は。

 「展開する商品は3つのモールとも共通で、戦略としては『楽天市場』店を中心にどうハックするかを考えているので、『楽天市場』に合った商品セレクトになっている。現状は生活雑貨系のアイテム、商品単価は4000~5000円の商品が『楽天市場』では売れている」

 ――「マクアケストア」がECモールで成功するための打ち出し方などは。

 「初期のフェーズでは『楽天市場』のアルゴリズムをハックしていく必要があるので、レビュー数を初速で積み上げていくことが大事になる。ある程度のレビュー数や売れ筋商品がそろったタイミングで、『マクアケストア』としてのディスプレイ広告や、『マクアケストア』が『楽天市場』にもあるということを認知してもらうための露出を増やしていく」

 ――「TikTok Shop」に出店した理由は。

 「『TikTok Shop』は、日本では6月末にスタートしたばかりだが、ショッピング動画やライブ配信を通じてユーザーが商品に出会うという〝ディスカバリーコマース〟の仕掛けと、何か面白いものを求めて来店するユーザーの多い『マクアケ』との相性が良いと判断した」

 「日本におけるオンライン上の購買体験は目的来店型が多い中でAI活用が進むと、ECは『早い、安い、うまい』みたいな世界になってしまうが、一方で非効率な買い物体験への揺り戻しもあると思っている。『TikTok Shop』は海外ではすごいスピードで成長している。日本では各社が勝ち筋を見定めている段階で、このタイミングに出店することにも価値がある」

 ――「TikTok Shop」出店に当たっては、ガジェット系の動画クリエイターを採用した。

 「インフルエンサーとして活動をしている人を社員に採用し、そのスタッフを中心に自社で動画を制作している。動画やライブ配信でクロージングをするのが『TikTok Shop』で、動画を作るノウハウや作ったコンテンツ自体が資産化していくので、総合ECモールの商品ページ内や、インスタグラム、ユーチューブのショート動画などでも配信できる」

 ――目標値などは。

 「グロース本部として、『マクアケストア』のモール出店は一つのステップで、海外展開も見据えているし、オフライン企画なども検討している」

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