ジップが関東拠点拡張で体制強化、個別対応で印刷コストも最適化

2025年11月13日 13:12

2025年11月13日 13:12

 DMや物流業務代行事業などを手がけているジップでは、2025年7月期の業績の売上高が前年比7.1%増の196億円と伸長した。中でも通販商品の発送代行業務の伸びが業績を下支えしている。2025年~2030年までの中期経営計画では、これら物流事業の更なる拡大を大きな目標に掲げており、中でも、市場ボリュームがあり、将来的な配送問題からも関東地方を拠点とした事業拡大が今後の鍵となっている。


1113131254_69155ac6f06b2.jpg 同事業でけん引役となるのは、埼玉県内に構えている3カ所の物流拠点で、その内、18年に開設した「川越芳野台センター」については、今年9月に増築工事が完了し、稼働を開始した。4階建ての常温倉庫で、今回は延べ床面積を以前の1.4倍となる約8530平方メートルまで拡張している。

 同センターでは大手通販企業の健康食品や化粧品、食品などを取り扱っている。前期についてはリピート通販系の新規荷主の案件を獲得することができ、順調な稼働が続いている。

 大きな強みとなるのが、同社で長年手掛けているベネッセのDM・教材の封入・封緘業務で培った個別対応のノウハウだ。「数百万人の会員に対して、その人に合った教材をいかに選択して発送するかという究極の個別対応を行ってきた。個別ニーズが高まるほど作業のハードルは上がるが、その分、他の物流会社と比べて順応力が高くなっている」(神﨑宏社長)とし、機械設備と人の手を融合したハイブリッド型の作業ラインによる個別作業品質の高さを強みとしている。

 機械導入は作業の効率化と省人化に寄与しており、検品や仕分け、梱包、封入、送り状の添付などの機械化をはじめ、自前で製造した「サンプル(試供品)投入機」も活用。荷物は全てバーコード検知を行い、作業品質を担保している。

1113131413_69155b15a1379.jpg 中でもオンデマンドプリンターによるDMや同梱チラシでの1to1対応は特徴的で、近年の印刷コスト上昇への対応策として、資材を減らすための仕組みも提案。一例としてクライアント企業の荷物に同梱する明細書の独自の仕様があり、A3を基本サイズとしながらも明細書部分を紙面の4分の1程度に収めることで、それ以外のスペースを広告や読み物、パズルなどのコンテンツに活用することで、閲読率を高めながら宣伝効果を引き上げることもサポートする。

 また、オンデマンドプリントであるため、必要部数にコントロールした印刷もできることから、クライアントにとっては不要な印刷物の在庫が生まれにくく、トータルでコストの効率化が図れるようになっている。「生産性の部分など、クライアントとの定例会を通じて、コスト構造をお互いが理解していくことで効率化が図れている」(神﨑社長)とした。

 そのほか、マーケティングオートメーションも使って、ABテストを繰り返しながら顧客分析することで、最適な顧客育成が図れるDMのシナリオ立案などもできるとした。

冷凍・冷蔵toC物流へ本格始動

 なお、物流事業については、11月から本社のある岡山県内の拠点においてBtoCにおける冷凍・冷蔵商品の本格的な取り扱いを開始している。パートナーである冷凍物流業者と連携するもので、約2000平方メートルの規模の賃借施設で実施。同社が得意とする健食や化粧品に次ぐカテゴリーでもある食品をメインターゲットにして、BtoC向けの保管、流通加工、発送などを行う。すでに大手食品メーカーの冷凍商材の業務が始まっており、今後は関東でも同様の形で冷凍・冷蔵の倉庫を構えることを視野に入れる。

 また、同じく岡山の拠点において、成長市場である医薬品通販向け物流の整備も進んでいる。

 現在、県内の3拠点で、薬剤師を採用してセンター内に医薬店を開設。出荷判定などに必須な薬剤師をセンターに常設配置することで、ニーズの高い医薬品物流への対応を行っている。

 近年は機能性表示食品だけでなく、医薬品の取り扱いを始めたことで出荷実績を大きく伸ばすことができた通販企業も少なくないことから、同分野での案件開拓を強化する。

 こちらも今後は関東で同様のセンターを確保していく考えで、東西で多様な案件に応えることができる多角的な物流体制を整えていくとした。

カテゴリ一覧