私はこの1年間、ずっと悩み続けています。2025年4月、GMOサイン(@GMO_Sign)は140投稿のうち40投稿が1000いいねを超えていました。BtoBアカウントとしては異例であり、企業アカウント全体で見てもトップクラスの水準です。それが5月には一気に124投稿のうち11投稿まで減少。投稿の内容は何も変えていないのに、数字だけが確実に落ちていったのです。2025年10月、イーロン・マスク氏はGrokによる完全AI主導への移行を発表し、同年11月にかけて実装が進んだとされます。ただしこれはあくまで発表ベースの情報です。実際にAIが組み込まれていると客観的に確認できるようになったのは、2026年1月と5月にXがアルゴリズムをオープンソース公開し、ロジックを直接追えるようになって以降のことです。ただ、数字の変化を振り返ると、イーロン・マスク氏が軽量版Grokの導入を示唆した2025年5月頃には、すでに何かが変わり始めていたと今でも思っています。審判からの説明は一切ないまま、試合のルールだけが変わっていた。この戦いは、すでに始まっていたのです。
ある日、戦っている競技が変わっていた
この戦いを例えるなら、「いいね」や「RT」の数で盤面をひっくり返せたオセロをしていたのに、いつの間にか数ではなく一手の質と読みで局面が決まる将棋にゲームが変わっていた。そんな感覚でした。数字は落ち続けているのに、X社からの説明は一切ない。何か対策を打ちたくても、唯一のヒントはイーロン・マスク氏による「XのレコメンデーションアルゴリズムはGrokの軽量版に置き換えられる」というX投稿だけでした。
手がかりは、AIに聞くしかなかった
当時のGrokはまだ日本語の精度が低く、そのまま使うには限界がありました。そこで私が取った方法が、AIを役割分担させるというものです。まずChatGPTに聞きたいことを投げ、Grokへの最適なプロンプトを作ってもらう。そのGrokの回答を今度はChatGPTに戻し、自分にわかりやすい言葉にまとめてもらう。つまり、GrokをXのアルゴリズムを探るための「目」として、指示や情報の整理といった「脳」の役割をChatGPTに担わせていたのです。答えのない問いに、複数のAIを組み合わせながら向き合い続けた日々でした。
しかし、ここで重要な前提があります。チャットAIとしての「Grok」と、Xのアルゴリズムをコントロールしている「Grok」は、同じ名前でも別物です。だからこそ、チャット版Grokの回答はあくまで公開ソースやWeb情報、一般的な推薦ロジックをもとにした“解釈”にすぎません。その回答に振り回され、結果的に相当な遠回りをしたと、今では思っています。ただ、当時のXはアルゴリズムが非公開で、そもそも「正解」が存在しませんでした。答え合わせのしようがない以上、不完全なチャット版Grokに頼ること自体は遠回りに見えても当時の最善手だったと考えています。
企業から集めた100のリプライが、5000impにしかならない理由
そんな葛藤の中、タイムラインを眺めていると、ある違和感を抱きました。朝の挨拶投稿で100近くのリプライを集めている複数の企業アカウントの投稿が、imp(表示回数)にして5000程度にとどまっていたのです。通常であれば、これだけのリプライが集まればimpはもっと大きく伸びるはず。本来なら1万を超えていてもおかしくありません。それがわずか5000程度。明らかに不自然でした。
何かが、その「伸びるはず」を打ち消していると考えるのが自然です。何かが拡散の拡張を止めていると考えるのが自然でした。実際にその投稿に集まるリプライを確認してみると、100のうち7〜9割が他の企業アカウントからのものだったのです。私はここに原因があるとにらみ、分析を深めていきました。
「誰が反応したか」を、AIは見ている
これまでのXでは、フォロワーに投稿が届き、そこで多くの反応が生まれれば、さらに広い層へ拡散されるという構造が中心でした。しかし今のXでは、単に「どれだけ反応されたか」ではなく、「誰が、どの文脈で反応したか」まで見られるようになり、AIが投稿の文脈や反応傾向をもとに、次に届けるべきユーザー層を予測・拡張していく仕組みへと変化しています。
つまり、普段から他の企業公式の投稿ばかりに反応し、企業アカウントからの反応ばかりを集めているA社が投稿に反応した場合、AIは「これは企業アカウントが好む投稿だ」と判断し、投稿をどんどん企業アカウントの方向へ配信していくのです。
この問題が根深いのは、例に挙げたA社のような企業だけの話ではないという点です。世間的に名の知られた著名な企業でさえ、企業同士の横のつながりを大切にし、相互の挨拶や交流を日常的に行っています。
その結果、企業が集まる「企業クラスタ(同じ興味・属性を持つユーザーの集まり)」の中では、反応するのも企業アカウント、反応されるのも企業アカウント、という循環が生まれます。関係値が強すぎて、横のつながりが密になりすぎている。だからこそ、企業が反応すると投稿が企業へと向かう力が、あまりにも強く働いてしまうのです。
「都合のいい関係」が生み出す閉鎖
A社がB社の挨拶に返信をすると、B社からも返信が返ってくる。そして今度はB社の投稿に、A社も返信を投げに行く。こうした相互の強い関係が築かれ、日常的な光景となっているのです。この文化が定着したのは、担当者にとって何より「都合がよかった」からです。企業アカウントが一般ユーザーに話しかけるのはリスクがあります。返信が来ない可能性もあるし、そもそも話すきっかけを探すのが難しい。相手の反応も読めません。その点、相手が企業公式なら文脈が通じやすく、リプライを送れば高い確率でリプライが返ってくる。つまり、互いにエンゲージメントを稼ぎ合える関係なのです。朝に挨拶を投稿すれば仲間が反応してくれる。その返礼に、自分も相手の投稿へ反応しに行く。こうすれば、何もないところからでも安定して反応数を積み上げられます。社内に向けても「これだけエンゲージメントが取れています」と示しやすい。担当者にとって、これほど都合のいい仕組みはなかったのです。
ですが、投稿の文脈や反応の質を読み取る時代になった今、AIから見れば、これは同じ企業アカウントという閉じた世界の中で相互にやりとりしているだけの「なれ合い」と判断されてしまいます。相互で数字を支え合うため、いいねやリプライといった目に見える数字としては積み上がっていきます。ですが、その数字は企業クラスタというの中で回っているにすぎません。例えるなら、アリーナ会場で大きな拍手を浴びているつもりが、AIから見れば教室の一室での拍手にすぎなかった。そんな評価が下されているのです。
一度ハマれば沈み続ける企業クラスタのアリ地獄
企業SNS担当者同士の横のつながりを、否定したいわけではありません。担当者同士で協力し合ったり、運用の知見を共有したりすることは大切なことだとは思います。ですが、今のAI式のXアルゴリズムにおいて、自社を知らない新規層にimpを届けるというマーケティング視点で考えたとき、この企業公式界隈の古き慣習が、確実に足かせになってしまうのです。そして厄介なのは、この構造がアリ地獄によく似ているということです。企業同士で反応し合えば合うほど、AIは「これは企業アカウントが好む投稿だ」と学習し、配信先を企業アカウントに寄せていく。届く相手が企業アカウントばかりになれば、また企業からの反応が増える。そうやって、もがけばもがくほど、投稿は企業クラスタの底へと沈んでいくのです。今の数字の土台を守るために企業アカウントとの交流を続け、一般ユーザーに届く可能性を自ら狭めるのか。それとも、本来届けるべき層を再設定し、企業アカウントとの交流のあり方を見直すのか。今、企業SNS担当者にとって、これからの決断が問われる時代になっていると思います。
この戦いを例えるなら、「いいね」や「RT」の数で盤面をひっくり返せたオセロをしていたのに、いつの間にか数ではなく一手の質と読みで局面が決まる将棋にゲームが変わっていた。そんな感覚でした。数字は落ち続けているのに、X社からの説明は一切ない。何か対策を打ちたくても、唯一のヒントはイーロン・マスク氏による「XのレコメンデーションアルゴリズムはGrokの軽量版に置き換えられる」というX投稿だけでした。
手がかりは、AIに聞くしかなかった
当時のGrokはまだ日本語の精度が低く、そのまま使うには限界がありました。そこで私が取った方法が、AIを役割分担させるというものです。まずChatGPTに聞きたいことを投げ、Grokへの最適なプロンプトを作ってもらう。そのGrokの回答を今度はChatGPTに戻し、自分にわかりやすい言葉にまとめてもらう。つまり、GrokをXのアルゴリズムを探るための「目」として、指示や情報の整理といった「脳」の役割をChatGPTに担わせていたのです。答えのない問いに、複数のAIを組み合わせながら向き合い続けた日々でした。
しかし、ここで重要な前提があります。チャットAIとしての「Grok」と、Xのアルゴリズムをコントロールしている「Grok」は、同じ名前でも別物です。だからこそ、チャット版Grokの回答はあくまで公開ソースやWeb情報、一般的な推薦ロジックをもとにした“解釈”にすぎません。その回答に振り回され、結果的に相当な遠回りをしたと、今では思っています。ただ、当時のXはアルゴリズムが非公開で、そもそも「正解」が存在しませんでした。答え合わせのしようがない以上、不完全なチャット版Grokに頼ること自体は遠回りに見えても当時の最善手だったと考えています。
企業から集めた100のリプライが、5000impにしかならない理由
何かが、その「伸びるはず」を打ち消していると考えるのが自然です。何かが拡散の拡張を止めていると考えるのが自然でした。実際にその投稿に集まるリプライを確認してみると、100のうち7〜9割が他の企業アカウントからのものだったのです。私はここに原因があるとにらみ、分析を深めていきました。
「誰が反応したか」を、AIは見ている
これまでのXでは、フォロワーに投稿が届き、そこで多くの反応が生まれれば、さらに広い層へ拡散されるという構造が中心でした。しかし今のXでは、単に「どれだけ反応されたか」ではなく、「誰が、どの文脈で反応したか」まで見られるようになり、AIが投稿の文脈や反応傾向をもとに、次に届けるべきユーザー層を予測・拡張していく仕組みへと変化しています。
つまり、普段から他の企業公式の投稿ばかりに反応し、企業アカウントからの反応ばかりを集めているA社が投稿に反応した場合、AIは「これは企業アカウントが好む投稿だ」と判断し、投稿をどんどん企業アカウントの方向へ配信していくのです。
この問題が根深いのは、例に挙げたA社のような企業だけの話ではないという点です。世間的に名の知られた著名な企業でさえ、企業同士の横のつながりを大切にし、相互の挨拶や交流を日常的に行っています。
その結果、企業が集まる「企業クラスタ(同じ興味・属性を持つユーザーの集まり)」の中では、反応するのも企業アカウント、反応されるのも企業アカウント、という循環が生まれます。関係値が強すぎて、横のつながりが密になりすぎている。だからこそ、企業が反応すると投稿が企業へと向かう力が、あまりにも強く働いてしまうのです。
「都合のいい関係」が生み出す閉鎖
A社がB社の挨拶に返信をすると、B社からも返信が返ってくる。そして今度はB社の投稿に、A社も返信を投げに行く。こうした相互の強い関係が築かれ、日常的な光景となっているのです。この文化が定着したのは、担当者にとって何より「都合がよかった」からです。企業アカウントが一般ユーザーに話しかけるのはリスクがあります。返信が来ない可能性もあるし、そもそも話すきっかけを探すのが難しい。相手の反応も読めません。その点、相手が企業公式なら文脈が通じやすく、リプライを送れば高い確率でリプライが返ってくる。つまり、互いにエンゲージメントを稼ぎ合える関係なのです。朝に挨拶を投稿すれば仲間が反応してくれる。その返礼に、自分も相手の投稿へ反応しに行く。こうすれば、何もないところからでも安定して反応数を積み上げられます。社内に向けても「これだけエンゲージメントが取れています」と示しやすい。担当者にとって、これほど都合のいい仕組みはなかったのです。
ですが、投稿の文脈や反応の質を読み取る時代になった今、AIから見れば、これは同じ企業アカウントという閉じた世界の中で相互にやりとりしているだけの「なれ合い」と判断されてしまいます。相互で数字を支え合うため、いいねやリプライといった目に見える数字としては積み上がっていきます。ですが、その数字は企業クラスタというの中で回っているにすぎません。例えるなら、アリーナ会場で大きな拍手を浴びているつもりが、AIから見れば教室の一室での拍手にすぎなかった。そんな評価が下されているのです。
一度ハマれば沈み続ける企業クラスタのアリ地獄
企業SNS担当者同士の横のつながりを、否定したいわけではありません。担当者同士で協力し合ったり、運用の知見を共有したりすることは大切なことだとは思います。ですが、今のAI式のXアルゴリズムにおいて、自社を知らない新規層にimpを届けるというマーケティング視点で考えたとき、この企業公式界隈の古き慣習が、確実に足かせになってしまうのです。そして厄介なのは、この構造がアリ地獄によく似ているということです。企業同士で反応し合えば合うほど、AIは「これは企業アカウントが好む投稿だ」と学習し、配信先を企業アカウントに寄せていく。届く相手が企業アカウントばかりになれば、また企業からの反応が増える。そうやって、もがけばもがくほど、投稿は企業クラスタの底へと沈んでいくのです。今の数字の土台を守るために企業アカウントとの交流を続け、一般ユーザーに届く可能性を自ら狭めるのか。それとも、本来届けるべき層を再設定し、企業アカウントとの交流のあり方を見直すのか。今、企業SNS担当者にとって、これからの決断が問われる時代になっていると思います。